隣人との交流⑥
「……どうしたの? お前その恰好」
一言で言えば、奴は全身を野球のユニフォームで覆っていたのだ。上半身には密着するタイプのアンダーシャツ一枚を纏っているだけだったが、下半身に関しては、真っ白なゲームパンツ、ストッキング、さらにはスパイクという風に、いつでも試合に臨めそうな状態が整っていた。
……いったいどういうことだ? 何が起きようとしている?
尋ねたいことが次から次へと溢出してくる中にうずもれ、息も絶え絶えの私とは対照的に、当のタカハシは冷静そのものだった。
「は? わからないんすか? 勝負服すよ」
「ショウブ……?」
「まあよい、とにかく黙ってついてこい」
そう言って先に立って歩き出す。後ろを振り返るなど、こちらの様子を確かめる素振りもない。
私はもう一度ため息をつき、後を追った。うつむき気味の目線の先でやけに大げさに揺れる尻と、それに伴って形を変えるユニフォームパンツの皺が見えている。
……何が「わからないんすか? 勝負服すよ」だよ、わかるわけねえだろ……。
しかしタカハシの「わからなさ」には、そこからさらに拍車がかかることになる。
タカハシがまず向かったのは歩いて五分ぐらいのところにあるコンビニだった。
そこで缶ビールを三本購入し、脇にある小さな児童公園へと入っていった。雲梯と滑り台、ブランコが備え付けられているぐらいの、こじんまりとした空間で、さすがに夜の10時近い時刻のためなのか、それともあまりに暑すぎるせいなのか、人の姿を見て取ることはできなかった。
タカハシは迷いなく一つのベンチに陣取ると、さも当然であり、何らおかしなことではないかのように、ビールの缶を開けて中身を喉に流し込み始めた。早速一本を空にする。すごい飲みっぷりだ。
既にそこまでの間で、私の頭が疑問符で満たされて破裂寸前の状態に陥っていたのは言うまでもない。
タカハシの先の口ぶりによれば、奴は何やら重大な事情(「どうしても外せない用事」)があって、それでこの場所までやってきたはずだった。わざわざ「勝負服」とやらに身を包むことまでして……。
だがそのある種の「一大事」の感と、「酒を嗜む」こととの間には、明らかに大きな齟齬があった。
また、「児童公園」で敢えて酒を飲むという振る舞いも、悪い意味で明らかに「規格外」だった。「『児童』公園」の定義を破壊しかねない、非常に革命的な試みである。
私はせめてもの抵抗として、横に腰掛けることを拒み、うまそうに酒を飲むタカハシの様子を立ったままぼんやりと眺めていた。




