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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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9 カトレア親衛隊

 こちらの世界に来て、二週間が経過した。

 正直辛い・・・


 ストーカー、否、カトレア親衛隊の活動は早朝から始まる。

 起床後すぐにマクダーモット侯爵家の王都別邸に移動してカトレアの健康状態を把握、その後通学路のチェックに向かう。


 あの一件があってから、アベル王子は通学路のチェックが入念になった。

 少しでも変わったところがあるとすぐに調べ、声掛けも積極的に行うようになった。2日前なんか、市場に向かう老婆が商品を取り落とし、必死で拾っているのを見たアベル王子が「行商の老婆を装った暗殺者かもしれん」とか言って、その老婆に詰問を始めた。


「おい、そこの老婆。怪しいな。何をしているんだ?」

「見て分からないのかい?商品を落しちまって拾ってるんだよ」

「つまり、その落した商品が回収できたら、ここに用はないんだな?おい、留学生。拾うぞ」


 私とアベル王子は老婆を手伝い、商品を拾ってあげる。


「最近では珍しい出来た学生さんだね。お礼をしたいんだけど・・・」

「そんなものはいらん!!さっさと立ち去れ」


 流石にもめ事になりそうなので間に入る。


「ちょっと恥ずかしがり屋なんです。お気になさらずに」

「そうかい?じゃあこのリンゴだけでも持っていっておくれ。美味しいよ」

「ありがとうございます。それではお気をつけて」


 一事が万事こんな感じだ。

 昨日なんかは、通学路の脇に車輪が壊れて動かなくなった馬車に出くわした。例のごとく「故障した馬車を利用した襲撃犯かもしれない」と言い出して、またまた御者に詰問を始めた。


「おい怪しい奴。すぐにこの馬車をどけろ!!」

「どけろと言われても、どう見ても無理だろ?車輪が壊れてんだからな」

「車輪が直れば移動できるんだな?おい留学生、スペアの車輪を出せ」


 アベル王子に言われてスペアの車輪をマジックバックから取り出す。アベル王子がへルローダに言って、すぐに私のマジックバックを用意してくれたので、私もマジックバックを手に入れている。

 それにしても、馬車の車輪のスぺアを用意させられるなんて本当に予想外だった。これも「カトレアの馬車が壊れた時に対処するために必要だ」という理由らしいけど・・・


 この国の馬車は規格が統一されているので、大抵の馬車の車輪は同じサイズだ。

 車輪は大型用、中型用、小型用の三種類あり、カトレアは主に中型の馬車で通学している。これも「カトレアは小型や大型の馬車に乗ることがあるかもしれない」とのことで、用意がいいことに三種類とも用意している。


 私がマジックバックからスペアの車輪を出すと、アベル王子は大急ぎで作業に入る。

 アベル王子は「工作員」のジョブの恩恵からか、こういったことも得意のようで、あっという間にスペアの車輪は取り付けられた。


「あ、ありがとうございます。本当に助かりました。車輪代はお支払いいたしますし、商会に報告後、正式にお礼に伺います」

「うるさい!!直ったなら、さっさと動かせ。警備兵に突き出すぞ」


 当然、私が間に入る。


「口ではこう言ってますけど、貴方に気を遣わせないために言っておられます。お礼は必要ありません。お気をつけて」

「本当にありがとうございます」


 御者は何度も頭を下げて立ち去った。


「ヤバいぞ、留学生。時間がない」

「はい・・・」


 こうしてトラブルがあると、点呼に間に合わせるため全力ダッシュで帰還する。最近は少し慣れたけどね・・・



 ★★★


 カトレアを校門で出迎えた後も気が休まらない。

 私としては、のんびり主人公や攻略対象たちを観察したいのだけど、そうもいかない。アベル王子と共に「隠密」のスキルを使って授業にも参加し、しっかりとノートを取らされる。カトレアが定期試験で困らないようにとのことらしい。


「それにもし、カトレアが欠席したら授業に遅れてしまう。そうなった時はその日の授業のポイントをまとめて、カトレアに渡すんだ」

「それは分かりましたが、私がノートを取る必要がどこにあるんですか?」

「もしカトレアに危険が迫れば、俺は対処しなくてはならない。その時、ノートが取れなくなるだろ?」

「そ、そうですね・・・」


 どう考えても、私がイメージした異世界転移とは違う。

 これじゃまるで、ブラック企業に就職してヤバい上司に指導を受けている感じだ。幸い私の職場はかなりホワイトだ。同級生との飲み会で聞いたパワハラとはこのことかもしれない。


「ウチの上司は本当に理不尽なのよ」

「分かるわ。意味不明に怒るし、言ってることが無茶苦茶なのよ」

「私なんて、深夜や早朝に電話があるのよ。電話に出ないと滅茶苦茶怒られるしね」


 その時は遠い異国の出来事のように思ったけどね・・・

 私は社会人3年目にして、異世界でブラック企業体験をしているのかもしれない。


 幸いこの学園の授業はそこまでレベルは高くない。小学校高学年から中学校レベルの内容ばかりだ。

 なので、ある程度のことは分かる。でも魔法学だけはさっぱり分からない。今も必死でノートを取っているけどね。


 ふとアベル王子を見ると、少しウトウトしていた。

 腹が立った私はアベル王子を肘でつついて言う。


「ちょっとアベル王子。人にノートを取らせて、自分は居眠りするなんて、流石に酷いと思いますけどね」

「うん?カトレアは天才魔法使いだ。この授業だけはどんなに休んでも、カトレアが困ることはない。カトレアを見てみろ。真面目に授業を受けてはいるが、少しつまらなさそうだろ?そういえば、言ってなかったか?」

「聞いてません」



 授業が終わると、今度はまた通学路のチェックに向かう。

 4日前には、ひったくり犯を捕まえている。ただ被害者の貴婦人にアベル王子は「もっと気をつけろ!!それに一人で歩くな」と罵倒していたけどね・・・


 これが私の日常だ。

 早朝からストーカー行為を行い、学生に交じって授業を受ける。

 一体、私は異世界まで来て何をしているんだろうか?

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