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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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8 王子と一緒にストーカー 3

 アベル王子が血塗れのケットシーの介抱をしているマリアに声を掛けた。


「おい、お前。何をしているんだ?怪しい奴だな。名を名乗れ」

「見て分からないんですか?この猫ちゃんが大変なんです。今はそれどころじゃありません」

「何だと!?もういい。警備隊に突き出してやる」

「えっ!?」


 こりゃ駄目だ・・・アベル王子はコミュ障だな・・・

 常識も通じないしね。


 仕方なく、私が間に入る。


「申し遅れましたが、私たちはある高貴なお方を陰ながら護衛している者です。なので普段と違うことがあれば、調査しているんです。それで貴方は、その猫ちゃんを助けるために回復魔法を掛けられているのですね?」

「そうですよ。でも、なかなか回復してくれなくて・・・」


 私はアベル王子に進言する。


「この猫ちゃんは重症のようです。すぐに治療院まで搬送し、回復術師に診てもらってはどうでしょうか?」

「こっちも時間がないんだ。とりあえず、これでも飲ませておけ」


 アベル王子がマリアに差し出したのは、上級回復薬だった。


「こ、こんな高価な物はいただけません!!」

「つべこべ言うな!!これを飲ませて、さっさとここから失せろ」

「は、はい・・・」


 すぐにマリアはケットシーに上級回復薬を飲ませた。するとケットシーの体が光り輝き、あっという間に傷が塞がっていく。


「す、凄い・・・本当にありがとうございます」


 マリアがお礼を言ってきたところで、急に頭の中に声がした。


『ありがとう・・・助かったわ。この恩は必ず返すからね。びっくりしているようだけど、私は普通の猫じゃないのよ。人間たちは私たちのことをケットシーと呼ぶわ。私はセラフィーネ。気軽にセラって呼んでいいわ』


 これが念話ってやつか?


 マリアは驚きのあまり、言葉を失っている。


『それはそうと、かなりお腹が空いたわ。何か食べ物を持ってないかしら?』


 マリアも何とか状況を理解したようで、セラの念話に応える。


「食べ物?ごめん・・・今、持ってないの・・・」


 するとアベル王子が怒鳴った。


「おい、ケットシー。干し肉とハードタックをやるから、すぐにここから立ち去れ。俺たちには時間が無いんだ」

『口は悪いけど、優しいのね』

「無駄口を叩くな。とっとと失せろ」

『はいはい』


 セラはペコリと一礼をして、ハードタックと干し肉を咥えて去って行く。乾パンはこちらの世界ではハードタックと言うらしい。

 去り際にセラはマリアにも声を掛ける。


『貴方もありがとう。何れお礼をするわね』

「元気になったのならよかったわ。気をつけてね」


 セラを見送ると、マリアは私たちに向き直った。


「本当にありがとうございます。私はシャイターン学園に通う学生でマリア・アローカと言います・・・」


 マリアが言い掛けたところで、アベル王子が遮る。


「平民に興味はない。それよりも留学生、急ぐぞ」

「は、はい・・・」


 私はアベル王子に手を引かれ、その場を後にする。

 アベル王子は全速力だ。ジョブの補正があるといっても、流石にこれはきつい。


「もっとスピードを上げろ。点呼まで本当に時間がないぞ」

「は、はい・・・」


 必死でアベル王子に食らいついていく。

 それにしても、なぜ朝っぱらからこんなことをしなくちゃいけないんだろうか?



 ★★★


 何とか点呼には間に合った。

 点呼の後にベファーナに釘を刺された。


「マコよ。点呼に遅れるということは命が無いものと思えよ。それに自分の置かれた立場も考えよ」

「すみません。以後、気をつけます」

「うむ」


 ゲームでベファーナのことを知っているだけにこれは脅しではないと思う。


 それからほっと一息とはならず、すぐにアベル王子と共に本校舎の校門に移動する。

 登校するカトレアを待ち受けるためだ。まあ、待ち受けるといっても、特にこれといってすることはないけどね。


 カトレアを待っている間、アベル王子に気になったことを質問する。


「アベル王子は準備がいいんですね?回復薬や食料も常時持ち歩いているみたいですしね」

「当たり前だろ?カトレアに何かあったら、すぐに対処できるようにしなければならないからな」

「それにしても、アベル王子はどこから回復薬や食料を出しているんですか?大荷物を持っているようには見えませんし・・・」

「それはこのマジックバックだ。これもへルローダに作ってもらったものだ」

「私も欲しいですね」

「だったら、俺から頼んでやろう」

「ありがとうございます」


 そんな会話をしているところにマリアが登校してきた。

 少し制服が汚れている以外は特に変わったところはない。アベル王子はというと、マリアについては全く無視だ。

 そして、すぐにカトレアを乗せた馬車が校門に到着する。颯爽とカトレアが降りてくる。


「皆様、ごきげんよう」

「「「おはようございます。カトレア様」」」


 待ち構えていたカトレアの取り巻きの学生たちが一斉に挨拶を返した。


「今日もカトレアは奇麗だ」


 それって今日二度目だろうが!!


 そう思ったけど、流石に言えなかった。


 その後のことを話すと、カトレアも他の学生と一緒に列に並び、カイン王子を出迎える。

 当然、マリアがカイン王子の馬車に乗っているわけもなく、カトレアがマリアを罵倒するイベントは起きなかった。


 これで少しはカトレアの破滅フラグを解除できたのではないだろうか?

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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