6 王子と一緒にストーカー
拘束したアベル王子を特別クラスまで連行する。
このまま担当教官であるベファーナに事情を説明し、引き渡そうと思ったけど、とりあえずアベル王子から事情を聞くことにしたのだが・・・
ヤバい!ヤバい!ヤバいぞ!!
これってアレだ。ガチのストーカーだ。
それにゲームでは主人公のマリアが度々嫌がらせを受けていたけど、すべてこの馬鹿王子の仕業じゃないか!!
「再度確認するんですが、カトレア様の指示ではないんですよね?」
「当たり前だろ!!カトレアがこのような卑劣な真似をするはずがない!!」
偉そうなことを言っているけど、それをやったのはアンタだけどね。
流石にツッコミは入れられなかった。
落ち着いて考えてみると、私にこの国の信用は全くない。
運がいいことが重なって、シャイターン学園に入学させてもらったけど、アベル王子の証言と私の証言では比べ物にならないだろう。そうなると例えばアベル王子が「この留学生の言っていることは、すべて出鱈目だ」とか言ったら、処罰されるのは私になる。
ただ、このまま放置するわけにはいかない。
原因のすべてではないけど、悪役令嬢のカトレアが不幸な人生を歩むことになるのは、アベル王子の行動が大きいと思う。本人はカトレアのためになると思ってやっているのは分かるけど・・・
私だって、できればカトレアに幸せな人生を送ってもらいたい。ゲームの掲示板で考察を書くくらいだからね。だったらどうするか?
上手くアベル王子を誘導して、主人公マリアへの嫌がらせをやめさせればいいのでは?
そのためにはどうすればいいんだ?
私は大学の心理学の講義で習ったことを思い出した。
こういったストーカーのような相手には、頭ごなしに否定するのは得策ではないと習った。第一段階では相手の気持ちに寄り添い、信頼関係を築くことが重要だとも習った記憶がある。
なので、ダメモトで実践することにした。
「アベル王子のカトレア様に対する気持ちには感動しました。私も何か手伝えることがあれば、手伝いたいと思います」
「おお!!お前は分かってくれるのか?」
「お気持ちは分かります。ただ、それがカトレア様のためになっているかどうかは、少し疑問です」
「どういうことだ?」
「それは・・・」
私はなるべくアベル王子を刺激しないように注意しながら、それとなく今までの行動が間違っていることを伝えた。
「いくらカトレア様のためを思った行動であっても、カトレア様のためにならないこともあるということです。例えばですが、このままのアベル王子が行ってきたことを続けたとして、真っ先に疑われるのは誰でしょうか?」
「そ、それは・・・」
「日頃からマリア嬢を諫め、苦言を呈されているカトレア様だと思いませんか?それがカイン王子の耳に入れば、誤解が生まれますよね?」
「だったら俺にどうしろというんだ?」
ここまで話をしてきて、多少は私の話を聞いてくれるようにはなっている。
「マリア嬢を貶めるのではなく、カトレア様の評判が上がるようにすればいいのですよ。カトレア様の良い噂を流すとか、授業や実習などでカトレア様が活躍できるようにするなど、やれることはたくさんありますよ」
「それは盲点だったな。カトレアの素晴らしさは皆が知っていると思っていたからな・・・」
アベル王子はその生い立ちが原因で、あまり常識がない。
それに周囲に助言してくれる者もいないようで、カトレアへの思いが強すぎた結果、こうなってしまったのだろう。
それなら、こっちもまだやりようがある。
「今後は私もアベル王子に同行させていただき、気づいた点がありましたら助言させていただきます」
「分かった。お前もすぐにカトレアの素晴らしさに気づくことになるだろう。それと・・・とりあえず、この拘束を解いてくれないか?」
「分かりました」
こうして、ひょんなことから私はアベル王子と行動を共にすることになったのだが、私は非常に後悔することになる。
私としては、軽い気持ちで提案したのだけど、そんな軽い気持ちで出来る活動ではなかったからだ。でも、もう後の祭りだ。辛くてもやるしかない。卒業までの3年間、やれることはやってやる。
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