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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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5 アベルの事情

 ~アベル・シャイターン視点~


 俺はアベル・シャイターン。シャイターン王国の王子だ。否、王子だったというべきだろうか?


 15年前、俺は双子の兄カインと共にシャイター王国の王子として生まれ落ちた。

 この国には双子は不吉な存在であるという迷信が存在している。極秘の古い記録によれば、生まれ落ちたその瞬間にその場で殺された王子もいたようだが、父上と母上が猛反対し、そんなことにはならなかった。それについては、父上と母上に感謝しかない。幼少期は父上と母上の愛情をカインと共に一身に受けて育った。


 しかし10歳の時に受けたジョブ鑑定で状況が一変する。

 兄のカインが「勇者」という伝説のジョブなのに対して、俺は「工作員」という王族にはあるまじきジョブを授かってしまう。


 俺の「工作員」というジョブは「暗殺者」や「盗賊」と同じく、忌み嫌われるジョブの一つだ。

 斥候系と呼ばれるジョブと同じような能力が身に付くようで、国としては「暗殺者」や「盗賊」と同じく、極秘に危険ジョブに指定している。

 そのようなジョブを持っているからといって、その者が必ず犯罪者になるわけではない。だから、国としては早めにそのような子供を保護し、専門の教育を受けさせて暗部や諜報員に育てるのが通例だ。

 ただ、俺が王子ということが問題になった。俺が普通の庶民であれば何の問題もなかっただろう。王子がそんなジョブだとは公表できないからな。


 ジョブが判明してからは、俺は重病に罹ったということにされ、隔離して育てられることになった。当然、父上と母上は大反対した。しかし、これは止められなかった。話の分かる宰相でさえ、「世論のことを考えると仕方ないでしょう。最善とは言えませんが、必要な措置かと・・・」と言って、俺が隔離されることを容認したようだ。

 その当時は自分の運命を呪ったものだ。しかし、そんな俺にも光が与えられた。それはカインの婚約者であるカトレア・マクダーモット侯爵令嬢だ。


 カトレアは俺がそんな立場に置かれても、今までと変わらず交流を持ってくれ、温かい言葉も掛けてくれた。


「ジョブだけでそのような扱いを受けるなど、私は許せませんわ。ただ、今の私に殿下をお救いする力はありません。王妃となりましたら、必ず殿下を正当な地位に戻してみせますわ」


 多くの上級貴族の子弟たちが、俺から離れて行く中、カトレアは稀有な存在だった。

 優しく聡明で、分け隔てがなく、気品も身につけている。将来の王妃に相応しい女性だ。

 これが恋なのかどうかは分からない。ただ、俺はカトレアを誰よりも大切に思っている。当然、婚約者のカインよりもだ。


 そんな俺も15歳になり、貴族の子弟が通うシャイターン学園に入学が認められた。これは父上と母上の強い希望による。

 当然、俺は表には出せない人物だから特別クラス、通称「隔離クラス」に振り分けられた。特別クラスはそもそも厄介者を隔離しておくクラスだから授業なんてない。そこで俺は陰ながらカトレアを見守ることにした。


 幸い俺には「隠密」のスキルがあるから、誰にも気づかれずに学園内を移動することができる。流石に職員室のような防犯対策がなされている場所は無理だがな。

 最初は本当に神に感謝した。何たって間近でカトレアを見守ることができるからな。朝の点呼終了後にすぐに校門に移動して、カトレアの到着を待つ。

 余談だが、カトレアの登校を校門で待つために担当教官のベファーナに1時間点呼の時間を早めてもらった。へルローダなんかは文句を言っていたがな。


 そんな活動を続けてきた俺の前に、カトレアを悲しませる許せない存在が姿を現した。

 マリア・アローカ。金髪で青目、整った顔をしているが平民で孤児院出身だ。それだけなら別にどうでもいい存在なのだが、この馬鹿女は何かにつけてカインと接点を持つようになっていく。

 度々カトレアが、「立場を弁えなさい」と注意をするが、全く聞かない。逆に「カイン王子はもっと自由に学生生活を送るべきです」と言い返す始末だ。


 カインもカインだ。

 カトレアという美しく聡明な婚約者がいながら、こんな馬鹿な平民女に現《うつつ》を抜かすなんてな・・・


 この時、俺はこのマリアを排除することに決めた。

 流石に殺しはしない。ちょっとした嫌がらせをしたり、噂を流したり、シャイターン学園に居づらくさせ、自主退学に追い込む。

 マリアは光魔法の使い手で特待生として入学した経緯があるから、問題を起こしたり、本人が退学すると言い出さないかぎり、まず退学にはできない。


 だからこそ俺の出番だ。陰ながら、カトレアに仇なす存在を排除するのだ。

 手始めに教科書や私物を隠してやったり、「マリアの母親は売春婦でマリアの父親は誰か分からない」といった噂を流してやった。

 俺のジョブ「工作員」は「噂の流布」というスキルがあり、噂が広まるのも早かった。マリアはすぐにクラスでも浮いた存在になった。計画通りだ。このまま追いつめていけば、マリアは早々に学園を去ることになるだろう。


 しかし今日、俺の計画は狂わされた。よく分からない異国の留学生に・・・

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