3 特別クラス
特別クラスの校舎に入る。
すぐにピンクの髪をした10歳くらいの幼女が出迎えてくれた。
私はすぐに丁寧な挨拶をした。
「初めまして、私は佐藤マコです。ご指導よろしくお願いします」
「ほう・・・妾が誰か分かっておるようじゃな?」
「それはくらいは分かりますよ。溢れ出るオーラと気品は隠せませんからね。高名な魔導士様とお見受けします」
「うむ。マコとやら、気に入ったぞ」
私がこの幼女に丁寧な挨拶をしたのには訳がある。
この幼女もゲームに登場するキャラだ。名前はベファーナ、幼女の姿をしているが推定年齢300歳の大魔法使いだ。
ゲームでは彼女はお助けキャラとして登場し、様々なアイテムや素材、魔法薬なんかを気前よく渡してくれたり、魔力を上げる訓練をつけてくれたりする。但し、彼女を幼女扱いするとキレてしまって、アイテムをくれるどころか、ステータスを下げる呪いを掛けられたりもする。
つまり、扱いを間違えてはならない人物なのだ。
「申し遅れたが、妾はベファーナじゃ。貴殿の担当教官でもある」
「よろしくお願いします」
なるほど・・・ゲームで神出鬼没だったのは、特別クラスで勤務していたからだったのか。
「まずはジョブ鑑定を行う。ついて参れ」
「はい」
この世界にはジョブが存在する。
ジョブによっては様々なスキルが使えたり、魔法が使えたりする。私も折角だから魔法なんかを使ってみたい。
ワクワクしながらジョブ鑑定を受ける。
しばらくして、ベファーナの顔が曇る。
あれ?なんかヤバいジョブなのか?
「流石の妾でも「忍者」なんていうジョブは見たことがない」
忍者!!
このジョブはゲームでも、まだ実装されていないジョブだ。
「暗殺者」と「盗賊」を合わせた上級職でステータスも高く、「暗殺者」と「盗賊」両方のスキルが使える。そして何を隠そう私が発案し、掲示板に書き込んだジョブなのだ。評判も良く、製作者さんからは「次回のアップデートで実装しますね」との返信メッセージも届いていた。
「えっと・・・私の国では比較的ポピュラーなジョブですよ」
「ほう・・・それでどんなジョブなのじゃ?」
「斥候系のジョブですね」
「斥候か・・・まあよい。危険性はないようじゃしな」
本当は結構危険なジョブなんだけどね。それは言わないほうがいいと判断し、言葉を濁した。
「ではクラスメイトを紹介しよう」
私は教室に案内された。
私のクラスは私以外は3名。エルフの男、ドワーフの少女、そして・・・
「カイン王子?」
「カイン王子ではない。双子の弟君であらせられるアベル王子じゃ。髪の色が違うであろう?」
言われてみれば、攻略対象のカイン王子が金髪なのに対して、アベル王子は銀髪だ。でも同じ端正な顔立ちをしている。
「色々と事情があるから詳しくは聞くな。それと他の者も色々と事情を抱えておる。くれぐれもトラブルは起こさぬようにな。因みに貴殿は異国からの留学生ということになっておる」
「分かりました」
教室に入るとすぐに自己紹介を行う。
「アベルだ」
「ヘルローダというッス」
「エフェリートだ。忠告しておくが、今後は俺に話し掛けるな」
3人共反応は薄く、エルフのエフェリートにあっては、かなりの塩対応だ。
「今日も全員揃っておるな。ではまた明日に会おう」
ベファーナはそう言うと教室から出て行ってしまった。
慌てて私はベファーナを追いかけた。
「すみません。ところで授業とかはどんな感じなのでしょうか?」
「授業?そんなものはこのクラスにはないぞ」
「授業がない?」
「そうじゃ。明日の朝に点呼を行うから、それまでは自由じゃ。問題を起こさなければ何をしても構わんぞ」
「仰っている意味が分からないのですが・・・」
詳しくベファーナに聞いたところ、衝撃の事実が判明する。
私の所属するクラスは特別クラスだが、通称「隔離クラス」と呼ばれているらしい。というのも扱いに困る学生を集めているからだ。
「貴殿の事情は聞いておる。シャイターン王国としては当然の措置じゃな。普通なら死罪となってもおかしくはなかったしのう」
確かに私は国王暗殺の嫌疑が掛けられているし、出身国もこの世界の住人には分からない。
このクラスに隔離しておけば実質拘禁刑だし、もし仮に私の親が乗り込んで来たとしても「学園に通わせて保護していた」と言い訳ができるというのがその理由だ。
「貴殿の話が本当であれば、同情すべきじゃろうが、こちらの事情も分かってくれ」
「寛大な処置、感謝致します」
「うむ。ではここの施設は自由に使ってよいからのう。もしかしたら文献を調べるなどすれば、貴殿の国に帰還する方法が見つかるやもしれん」
「ありがとうございます」
私は疑問に思ったことを口にする。
「ところでシャイターン学園の本校舎への立入は許可されているのでしょうか?」
「あまり立ち入ってほしくないというのが本音じゃが・・・まあ、図書館で調べものをするなど、あまり他の生徒と接触しなければ許可しよう。但し、問題は起こすなよ」
「はい」
これは考えようによっては、ラッキーかもしれない。
試験も授業もないようだし、これならゆっくりとゲームの主人公たちを観察できるしね。
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