23 カトレアの誕生会 6
どういうわけか、アベル王子とリチャードが模擬戦をすることになってしまった。出席者全員で、中庭に出る。
アベル王子は状況がよく分からないようで、「最近の誕生会は模擬戦をするんだな?」と言っていた。
落ち着きを取り戻したカトレアが、出席者に説明して場を取り繕っている。
「我がマクダーモット侯爵領では、こういった催しで模擬戦をすることがよくあります。今日は我が婚約者であるカイン王子殿下とA級冒険者でもあるリチャード叔父様が模擬戦を行います。楽しんでご覧ください」
カトレアがリチャードに言う。
「叔父様、絶対に殿下に怪我をさせてはいけませんよ。問題になります」
「心配するな。骨の一本くらいで勘弁してやる。それなら回復魔法ですぐに治せるだろ?」
「叔父様!!」
一方のアベル王子だが、マジックバッグから物騒な物を色々と取り出そうとしていた。
流石に止める。
「殿下、それは駄目ですよ。空気を読んで、これぞ王族という戦い方をしないと、カトレア様が恥を掻きます」
「言っておくが、これでも俺は王族だ。俺の戦い方が王族の戦い方だと思うが?」
「それはそうですが・・・だったら、相手に合わせてください。相手は剣を使いますから剣のみで戦ってください。相手はかなり強いようですから、頃合いを見て降参するのも手かもしれません」
「とりあえず、相手に合わせて戦うことにする」
私は内心、アベル王子が痛い目を見ればいいのにと思っていた。
アベル王子はその生い立ちから、叱ってくれる人がいない。なので、あんな性格になったのだと思う。一度、痛い目を見るのもアベル王子のためだ。
模擬戦は木剣で行うから、死にはしないだろうしね。
模擬戦は唐突に始まった。
リチャードがいきなりアベル王子に斬り掛かった。それをギリギリ、アベル王子が躱す。
「なかなかやるな。冒険者は騎士様のように上品な戦いはしないんだ。相手をする魔物たちが礼儀正しく戦うわけないしな」
カトレアが頭を抱える。
「叔父様のいつものパターンです。以前、私に言い寄ってきた貴族の令息をあんな感じで痛めつけたこともありました。相手に何もさせずボコボコにするのが叔父様のやり方なのです」
リチャードもヤバい奴だな・・・
それからは予想に反して、見応えのある攻防が続いた。ほぼ互角の戦いが繰り広げられ、模擬戦を見ていた出席者も歓声を上げている。剣術でもアベル王子の無駄に高いスペックが発揮されていた。
一進一退の攻防がしばらく続き、何度目かのつばぜり合いの際、いきなり至近距離からリチャードが口から火を噴いた。アベル王子は間一髪、後方に転がって炎を回避したが、リチャードに木剣を叩き落とされた。
「騎士様の試合ならこれで終わりだろうが、まだ終わらせないぜ。一発くらい喰らわせてやらないと気が済まないからな」
リチャードが、起き上がろうとしているアベル王子に追撃を開始したその時、突然、リチャードの下半身が泥の中に沈んだ。
それは最近、ヘルローダが開発した泥トラップだった。貧民街の整備で死ぬほど仕掛けたやつだ。余談だけど、そのお陰で私は「罠設置」のスキルを身につけてしまったんだけどね。
「何でもありで、上品に戦わないのが冒険者の流儀なのだろ?だから、こっちも合わせてやったぞ」
「やりやがったな!!ぶっ殺してやる!!」
するとリチャードは泥に埋まった態勢のまま、爆弾のような物をアベル王子に投げつけた。これもアベル王子は間一髪、躱した。その隙にリチャードは泥から這い出て、槍を取り出した。これに反応し、アベル王子も鎖鎌を取り出した。
おいおい!!もう模擬戦の域を越えてるじゃないか!!
その時、カトレアが二人の間に入り、二人に魔法で出したを水をぶっかけた。
「その辺にしてくださいまし!!あくまでもこれはパーティーの余興の模擬戦です。そんな物騒な物を使ってまですることではありません!!この屋敷の主として、この模擬戦は引き分けと致します。異論は認めません」
それに合わせたようにリチャードの部下たちが、リチャードを止めに入る。
「叔父貴!!その辺にしときましょうや」
「そうですぜ。それに叔父貴とここまでやり合えるなんて、なかなかのものですぜ」
「今までの奴より大分、骨があります。この辺で・・・」
「分かったよ!!ちょっと遊んでやるつもりが、大人げなかった」
「それはいつものことですぜ・・・」
一方のアベル王子はというと・・・
「カトレア、すまなかった。王族としての振る舞いができなかった・・・」
「気にしないでください。あれこそ、王族としての対応です。自信を持ってください」
「そうか!!これからも、あのような戦いをするぞ」
変に自信を持ってしまった・・・
最近、私のやることなすこと、すべて逆効果になっているような気がする。
★★★
それからの話をすると、カイン王子の偽物(アベル王子)はリチャードやその部下たちとも打ち解けていた。お酒を勧められ、一緒に飲んでいる。
私はというと、リチャードの部下たちに優しくされていた。
「しっかり食べろよ。大きくなるんだぞ」
「今度から俺らに言ったら取ってやるからな」
「ケーキもあるぞ。遠慮するな」
まさにお子様扱いだった。ちょっと職場や故郷を思い出してしまった。
カトレアも嬉しそうにしている。
「何だかんだありましたが、まあ成功と言っていいでしょう。ただ、この後の処理が大変でしょうがね」
「申し訳ありません」
「いえいえ、貴方たちには感謝しているのですよ。こんなに楽しい誕生会は初めてです」
カトレアに喜んでもらえて本当によかった。
そんな和気あいあいとした雰囲気の中、急に武装したマクダーモット侯爵家の私兵が会場に駆け込んできた。
「お嬢様!!魔物の襲撃です!!すぐにお逃げください」
貴族街にも、魔物の襲撃!?
そんなことはゲームでは一切なかった。もうゲームのシナリオとは別の話になっているのか?
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