21 カトレアの誕生会 4
私は頭をフル回転させて考えた。
今ある戦力は、ゲームの知識を持っている駆出し「忍者」の私と、無駄にスペックの高い「工作員」のアベル王子しかない。
しかもこの状況では、ゲームの知識は役に立たない。となると・・・
私はあることを思いついた。でも、これは一か八かの賭けになる。
でも「早く、何とかしろ」と言ってくるアベル王子のプレッシャーに負け、とりあえず言ってしまった。
「なるほど・・・その案を採用する」
提案した私が言うのもアレだけど・・・正気か!?
「時間がない。とりあえずやるぞ」
そう言うとアベル王子の行動は早かった。
チャーターした馬車を降り、その馬車を帰らせた。御者が驚いて言う。
「本当にいいんですね?返金はできませんよ」
「そんなものはいらん。早く帰れ」
「分かりました。またのご利用をお待ちしております」
そして、今度は髪の色を銀髪から金髪に変え、カイン王子が乗って来た馬車に乗り込んだ。
御者の男が驚愕している。
「か、カイン王子!!どうされたのですか?商業地区に向かわれたのでは?」
「うるさい!!さっさとマクダーモット侯爵家の別邸まで向かえ!!」
「ぎょ、御意!!」
「それと、到着したらすぐにここまで戻ってきて待機しろ。分かったな?」
「御意!!」
開いた口が塞がらない。
軽い気持ちで、アベル王子がカイン王子になりすまして、誕生会に出席すればいいと提案したけど、本当にやるとは思わなかった。
この国の法律は詳しく知らないけど、バレたら確実に死刑だろう。私はまだ完全に国王暗殺の嫌疑が晴れたわけではないしね。ただ、共犯者がアベル王子だから、もしかしたら死刑は免れるかもしれない。
そんな私の思いに関係なく、馬車は進んで行った。
★★★
道中、御者にバレることはなかった。そして、マクダーモット侯爵家の王都別邸に到着した。
カトレアを筆頭に盛大に出迎えてくれた。
「本日はお忙しい中、出席して下さり、感謝を申し上げます」
「うむ。今日もカトレアは奇麗だ。そのドレスもよく似合っている。いや、そのドレスもカトレアの美しさには霞んでしまうな」
「ありがとうございます。お世辞でも嬉しいですわ」
「お世辞ではない。本心からだ」
「それでは殿下。会が始まるまで貴賓室でお待ちください。ご案内致します」
私たちはカトレアの案内で、貴賓室に通された。
部屋に入るとカトレアの表情が一変する。
「これはどういうことでしょうか、アベル王子殿下?」
ば、バレてる!?
「違う。俺はカインだ。アベルじゃない」
「私にそんな嘘は通用しません。それにカイン王子は、私に歯の浮くような甘い言葉を掛けませんわ。掛けてほしいとは思いますが・・・」
「なぜだ!?カインはカトレアの美しさが分からないのか?あっ!!」
もう自供してしまっている・・・
仕方なく、私が間に入る。何たって、こっちは命が懸かっているからね。
「カトレア様、よろしいでしょうか?」
「貴方は・・・噂の留学生ですわね?」
「そうです。ご存じなのですか?」
「はい。私もあの場にいましたからね」
「それでは私のほうから、事情を説明させていただきます」
私は正直に事の詳細をカトレアに話した。
商業地区に魔物被害が発生し、カイン王子がその対応で現場に向かってしまったことや、カトレアを思って、アベル王子が独断で勝手にカイン王子の代役をすると決めたことを説明した。特に私は何度も止めたけど、無理やりこの作戦に参加させられたことを強調して話した。
「貴方も大変でしたね。それにアベル王子は相変わらずですね。カイン王子もカイン王子で昔から変わりませんわね。そこがいい所でもあるのですが・・・」
こちらの世界のカイン王子はよく知らないけど、ゲームでは真っすぐで民を大切に思っている王子様として描かれていた。余談だが、攻略対象の人気投票では断トツの一位だ。
「事情は分かりました。しかし、これからどうしましょうか・・・」
私は腹を決めた。
「もうこうなったら、やりきりましょう。カトレア様に恥を掻かせてはいけませんしね。最悪、バレたとしても、カトレア様が知らぬ存ぜぬで通せば、何とかなるかもしれませんし・・・」
「そうだ、カトレア。最悪、他国のスパイの工作活動ということにすれば何とかなる。だから君は、いつもの素晴らしいカトレアでいてくれ」
「フフフ・・・分かりました。乗り掛かった船です。やりましょう。それに私の誕生会は、私だけのためにあるのではありません。マクダーモット侯爵家の威信も懸かっていますからね」
こうして、カトレアも共犯者となり、誕生会がスタートすることとなった。
まあ、不安でしかないけどね・・・
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