20 カトレアの誕生会 3
とうとうカトレアの誕生会当日となった。
ここまで準備万端だ。かなり忙しかったけどね。というのも、人材が揃うまで私は経理のようなこともさせられていた。まあ、会社でやっていることだから、慣れてはいるけど・・・
準備万端でも私は最後の最後まで気は抜かない。それがプロというものだ。
今日は念入りに主人公や攻略対象たちをチェックする。少しの変化も見逃さないようにね。
カトレアはというと、昨日から休んでいる。誕生会の開催準備のためだという。
現代日本人の感覚からすると、「そんなことで休むなよ」と思うが、こちらはそういうのが当たり前の世界だ。
そんな中、無事に授業が終了した。
マリアがカイン王子や攻略対象で騎士団長の息子であるゴードン、同じく攻略対象の宰相の息子であるクレバスに声を掛けていた。
「ゴードンさん、クレバスさん。今日は本当にありがとうございます。お二人にボランティアに来てもらえると思うと心強いです」
「気にするな、マリア嬢。ガキどもに訓練をつけてやるだけだしな。よかったら自警団の訓練もしてやるぞ」
「私もこういった活動は賛成ですからね。何なら魔法適性のある子に魔法を指導してもいいですよ」
カイン王子も会話に入ってくる。
「マリア、すまないな。俺はカトレアの誕生会に出席しなければならないから、またの機会に行くことにするよ」
「ありがとうございます、カイン王子。カイン王子には、もう大切なものをいただいていますからね」
カイン王子はちゃんとカトレアの誕生会に行くと言っているし、ボランティアで貧民街にゴードンとクレバスが行くことはラッキーだ。攻略対象なだけあって、この二人は戦闘力はそれなりに高いからね。
ただ、カイン王子を見るマリアが恋する乙女のような目をしているのは、少し気になったけどね。これまでのイベントで、マリアがカイン王子を好きになりそうなイベントはなかったように思うけど・・・
まあ、気の所為だろう。
エフェリートとヘルローダにも貧民街に配置してもらっているし、多分問題はない。
★★★
それから私とアベル王子はマクダーモット侯爵家の王都別邸に移動する。
移動は何とチャーターした馬車だ。どうしても間近でカトレアの誕生会を見たいと言い出したアベル王子が、招待客に紛れて潜入することにしたからだ。
無駄にスペックが高く、財力も伝手もあるアベル王子は招待状の偽造までしていたけどね。
移動中、アベル王子が何度も私に話し掛けてくる。
「何度も言うようだが、俺はマクダーモット侯爵家の寄り子であるバーンズ子爵家の二男として出席する。そしてお前は・・・」
「お付きのメイドですね?」
「そうだ。くれぐれもカトレアに迷惑を掛けるなよ」
「は、はい・・・」
なので、私はメイド服を着ている。
もし知り合いにこんな格好をしているところを見られたらと思うと恥ずかしくなったけど、冷静に考えてみると、この世界に知り合いはいないと気づき、落ち着きを取り戻した。
私たちの馬車の前を走るのは、カイン王子の馬車だ。
これも作戦だ。もし万が一、貧民街にカイン王子が向かおうとしても阻止しようと考えてのことだ。無理やり阻止しようとすれば問題になるから、馬車の故障を装って道を塞ぐ予定だ。まあ、そんなことは起こらないだろうけどね。
しばらくして、馬車は貧民街へとつながる道を通り過ぎた。
ここまで来れば、もう貧民街に行くとことはない。私はカトレアの誕生会に想いを馳せていた。
とりあえず、会場では「隠密」と「認識阻害」のスキルをフル活用して、たらふく料理を食べよう。そして、のんびりとカトレアとカイン王子の観察だね。ただ、お酒はあまり飲まないようにしないとね。
そんなことを思っていたら、突然、前を走るカイン王子の馬車が停車した。
どうやら大急ぎで走って来た商人たちが、カイン王子の馬車を止めたようだ。
商人たちが必死でカイン王子の護衛騎士に叫ぶ。
「どこの貴族様かは存じませんが、助けていただきたいのです。商業地区に突然魔物が現れて・・・どうか、お助けください!!家族が・・・」
商業地区に魔物!?
そんなイベントはゲームには無かったはずだ。まさか、貧民街を強化しすぎてしまって、その魔物が商業地区に流れたのか?
頼む!!カイン王子、断ってくれ!!
しかし、私の願いは届かなかった。
護衛騎士がカイン王子に状況を説明したところ、カイン王子は言った。
「安心しろ。私は第一王子のカインだ。我が必ず助けてやる。近衛隊!!我に続け!!」
アンタが行くことはないだろ!?
救援なら、私とアベル王子で何とかするし!!
でも王子の命令は絶対だ。近衛隊もこれには従うしかなかった。
馬車を下りたカイン王子は近衛隊と共に走って、商業地区に向かってしまった。
アベル王子が言う。
「おい、カイン!!カトレアの誕生会はどうするんだ!?このままでは、カトレアが恥を掻いてしまう・・・おい、留学生。何とかしろ!!」
「何とかしろと言われましても・・・」
流石にこれは困った。
私は頭をフル回転させるのだった。
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