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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第二章 カトレアの誕生会

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17 カトレアの誕生会

 最近はこちらの生活にも慣れてきた。

 カトレアもマリアも他の攻略対象たちも、大きな問題を起こすことなく学園生活を送っている。これはアベル王子が余計なことをしなかったためだと考えている。


 私はというと、ゲームに登場するキャラを観察しながら、のんびりと学園生活を過ごしている。

 それでも緊急出動は偶にある。まあ、最近はボランティア活動の一環だと思っている。少しくらいは、私もいいことをしないとね。


 そんな順調な学園生活だが、そろそろあのイベントが起きる頃だ。それはカトレアの誕生会だ。

 ゲームではカトレアの誕生会と同じ日に王都の貧民街に多数の魔物が押し寄せる。ゲームではカトレアの誕生会に婚約者であるカイン王子も出席する予定だったのだが、主人公のマリアと他の攻略対象と一緒に貧民街の対応に当たってしまい、カトレアの誕生会をすっぽかした格好になってしまう。

 その後、カトレアはマリアがカイン王子と行動を共にしていたことを知って激怒する。この事件をきっかけにカトレアはマリアを今まで以上に敵視するようになる。


 そしてカイン王子もカトレアに対して不信感を持つようになってしまう。

 カトレアに苦言を呈されたカイン王子は、カトレアにこう言い放つ。


「民の命と自分の誕生会と、どっちが大切か考えろ!!君のことは見損なった」


 この後、カイン王子はカトレアを遠ざけるようになり、マリアと関係を深めていくのだった。

 カトレアの立場に立つと誕生会を婚約者にすっぽかされ、恥をかかされたのだから文句の一つも言いたくなる。一方、カイン王子も目の前の困っている人たちを助けたのだから、文句を言われる筋合いはないと思っても仕方がない。

 本当に運が悪かったとしか思えないイベントだ。


 対応策はいくつかある。一つは魔物に襲われる住民を無視して、カイン王子をカトレアの誕生会に出席させることだ。

 アベル王子なら「平民に何があろうが知った事ではない。カトレアの誕生会のほうが大事だ」と言うだろうけど、私はそんなことはしたくない。なので、この案は却下だ。


 もう一つは、予め魔物の襲撃を受ける貧民街の対策をしておくことだ。

 ゲームで襲撃を受けるのは、マリアが暮らす孤児院がある貧民街だ。貧民街には警備兵も碌に配置されていないし、防壁もないから魔物の襲撃を受ければ甚大な被害を受けてしまう。なので、予め防壁を作ったり、罠を設置したり、警備兵を多めに配置するようにすれば、主人公のマリアたちが戦闘をしなくてもよくなるのではないかと考えた。


 この作戦のデメリットは、私の仕事が増えるということだ。

 ただでさえ、通学路の警戒という名の困りごと解決活動をしているのに、貧民街まで範囲を広げるとなるとゾッとする。

 しかし、他にいい案も思い浮かばないので、この案を採用することにした。

 少しくらいは我慢しよう。


 早速、アベル王子に貧民街の整備を進言する。


「貧民街の整備?そんなことをする意味が分からない」

「例えばですが、将来王妃となったカトレア様に対して、貧民たちが逆恨みして・・・」

「そ、それは大変だ!!だったら、貧民たちを皆殺しにしよう」


 どうして、そこまで発想が飛躍するのだろうか?


「そ、それではカトレア様の評判が落ちてしまいますし、お優しいカトレア様は心を痛めるでしょう。ですから貧民街の整備を致しましょう。ちょっとした盗賊や魔物の襲撃に対処できればいいわけですからね」

「うむ・・・将来のカトレアのためなのだな?留学生、感謝する」


 説得は上手くいったが、先が思いやられる。



 ★★★


 早速、貧民街の整備に取り掛かる。

 有難いことにエルフのエフェリートとドワーフの少女ヘルローダも手伝ってくれることになった。エフェリートは私たちがケットシーの女王のセラを助けたことのお礼として、ヘルローダは単純に自分が開発した魔道具のテストのためだ。

 更にこの二人は当日も貧民街の警戒に当たってくれることにもなっている。


 ただ誤算だったことがある。それはアベル王子だ。

 当初はあまり乗り気ではなかったアベル王子だが、計画が始まると誰よりもやる気を出し始めた。こうなると、結果は想像のとおりだ。


「強固な防壁は築けないから、防護柵を設置するとして・・・待てよ・・・もし防護柵を突破されたら・・・カトレアの危機だ!!籠城できる施設を構築しなければならん」


 どうして、そういう発想になるのだろうか?


 ということで、私たちは貧民街の教会にやってきた。

 アベル王子が言うには、教会と教会に併設されている孤児院が一番籠城に適しているとのことだった。実はこういった戦術眼もアベル王子は持ち合わせている。早速、代表の司祭さんと面会する。


「先日は多額の寄付をしていただき、本当にありがとうございました。お礼のしようもありませ・・・」


 司祭さんが言い掛けたところで、アベル王子が遮る。


「そんなことはどうでもいい!!危機が迫っているのだ。すぐに籠城できる準備を整えろ」

「そ、そう言われましても・・・流石に資金も物資も・・・」

「金ならある。それに備蓄食料もこちらで用意する」

「分かりました。しかし、そのようなことをしていると・・・」


 司祭さんが言うには、貧民街は犯罪組織の抗争が頻発し、非常に治安が悪いとのことだった。というのも貧民街を牛耳っていた犯罪組織「蛇の尻尾(スネークテイル)」が壊滅したことで、次の支配者の座を巡って各組織が動き出しているそうだ。

 まあ、「蛇の尻尾(スネークテイル)」を壊滅させたのは私たちだから、責任の一端は私たちにもあるんだけどね・・・


「・・・ですから、あまり目立った行動をすると、ここも目を付けられ、厄介事に巻き込まれるのです。神に仕える身としましては、この現状を何とかしたいとは思っています。しかしながら、ここには幼い子供たちも多く居ますし、なるべくなら穏便に・・・」

「その馬鹿な組織を潰せばいいんだな?よし、留学生。やるぞ」


 どうして、そうなるの?


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