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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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16 幕間 マリアの学園生活

 ~マリア・アローカ視点~


 私の両親は冒険者で、私を産んですぐにスタンピード鎮圧作戦に志願し、そこで二人とも帰らぬ人になったそうだ。なので私は孤児となり、王都の孤児院で育った。


 そんな私だが、名門貴族の子弟が通うシャイターン学園に入学することになった。

 私は幼い頃から光魔法が使えた。光魔法は大変珍しい魔法で、攻撃魔法も回復魔法も解呪もできる。まだ、全然使いこなせていないけどね。


 ジョブ鑑定をしてもらったところ、「鑑定不能」という結果が出た。

 お世話になっている司祭様が言うには、「一部の上級職は一般の鑑定魔道具では鑑定できないことがある」とのことだった。聖母教会の総本山に行けば分かるかもしれないと言われたけど、そうまでしてジョブ鑑定をしてもらいたいとは思わないし、そんなお金もない。


 そんな私は一部の研究者の興味を引き、研究に協力するという条件で授業料免除の特待生として、シャイターン学園に入学することになってしまった。

 入学当初は貴族の作法なんて全く分からない私は、気安くカイン王子に声を掛けてしまい、学生の不評を買ってしまう。

 それからは教科書や持ち物を隠されたり、陰口を言われたりと陰湿ないじめのようなことが続いた。


 そんなある日、通学中に血塗れの猫を発見した。

 今にも息絶えそうで、私は必死で回復魔法を掛けた。しかし傷が深く、なかなか回復しなかった。そんな時、銀色の髪をした学生風の男が声を掛けてきた。


「おい、お前。何をしているんだ?怪しい奴だな。名を名乗れ」


 声を掛けてきた男は貴族っぽかったけど、腹が立った私は言い返した。


「見て分からないんですか?この猫ちゃんが大変なんです。今はそれどころじゃありません」

「何だと!?もういい。警備隊に突き出してやる」

「えっ!?」


 猫を介抱しているだけで、警備隊に突き出されるの!?


 呆気に取られている私に、男のお付きの黒髪の女性が間に入ってくれた。

 その女性が言うには、二人はある高貴な方の護衛をしているらしく、警備上の理由から猫を介抱している私に声を掛けてきたとのことだった。そしてその女性は、男に進言してくれた。


「この猫ちゃんは重症のようです。すぐに治療院まで搬送し、回復術師に診てもらってはどうでしょうか?」

「こっちも時間がないんだ。とりあえず、これでも飲ませておけ」


 驚いたことにその男が手渡してきたのは、上級回復薬だった。


「こ、こんな高価な物はいただけません!!」

「つべこべ言うな!!これを飲ませて、さっさとここから失せろ」

「は、はい・・・」


 上級回復薬を猫に飲ませると、その猫は体が光り輝き、あっという間に傷が塞がっていく。


 凄すぎる・・・


 その後の話をすると、その猫は実は猫ではなくケットシーという種族の女王様だったんだけどね・・・


 私はその男に興味を持った。

 口は悪いし、私のことを平民と見下している。でもやっていることは凄く優しい。こんな私のために上級回復薬まで渡してくれたしね・・・

 ただ、どんなに顔を思い出そうとしても、上手く思い出せなかった。どこかで見たような顔と雰囲気だったんだけどな・・・



 ★★★


 不思議なことにその日を境に私の学園生活は180度変わった。

 教科書や所持品を隠されることはなくなり、クラスメイトとも関係がよくなった。特にカトレアさんとは親友と呼べるくらいに仲良くなった。

 彼女は侯爵令嬢でカイン王子の婚約者でもある。私とは住む世界の違う人だ。でもセラの介抱で制服が汚れていた私に自分の替えの制服を貸してくれた。


 その時に思った。

 いつも口うるさく私を注意していたのは、私のためを思ってのことで、決して私が憎いわけではなかったのだと。


 彼女は誰に対しても態度を変えない。

 たとえそれがカイン王子でも注意する時は注意する。口はうるさいけど、根は優しい人だと私には分かる。


 私はそんな人をもう一人、知っている。

 ケットシーのセラを助けてくれたあの人だ。あの人も口は悪いけど、優しい人だと思う。



 良いことは続くもので、孤児院の経営状態も改善した。

 司祭様が言うには、謎の男女二人がやって来て多額の寄付をしてくれたそうだ。その男の方は、かなり口が悪かったそうだ。


「私は彼らが神の御使い様かもしれないと思うのですよ。彼らの顔を思い出そうとしても、顔が思い出せないのです。それから考えても・・・」


 間違いなくあの人だ。


「それに他の方からの寄付も増えているんですよ。皆さん、信じられない話をされているのですが・・・」


 内容は大体同じだった。

 落とした商品を拾うのを手伝ってもらったと言う近所のおばあさん、壊れた馬車を直してもらったと言う商人さん、ひったくりの被害を防いでくれたという商家の奥さんなどが口を揃えて、口の悪い男とその従者の女性に助けられたとのことだった。

 その人たちも「神様の御使い様かもしれない」と思って、お礼に寄付をしにきたそうだ。


「凄いですね・・・本当にありがたい」

「私もそう思います。こんなことは教会の古い記録にもありませんよ」


 そんな話を司祭様としていると、不意に孤児院のドアが開いた。

 入って来たのは強欲な金貸しとして有名なレンダーという初老の男だった。この男はあくどい奴で、この孤児院にも多額の貸し付けをしている。それもかなりの金利で・・・


「レンダーさん、本日はどういったご用件でしょうか?今月分の支払いは済ませましたが・・・」

「い、いや・・・ちょっと寄付でもしてやろうと思ってな」

「どういうことでしょうか?」

「それがな・・・」


 レンダーが言うには、心臓発作で倒れたところを男女二人に助けられたそうだ。


「儂は神なんて信じてなかった。祈ったり寄付をしたところで、それが何になるんだと思っていた。だが、儂は気づいた。神は存在するとな。まあ、阿漕な商売をしているが、それでも借りだけは返すことにしておる。だから借りを返しに来た」


 レンダーは多額の寄付と同時に利子を下げることも確約した。


「司祭様。もし、その御使い様とやらに会うことがあったらお礼を言っておいてくれ。それと、これからは、人に迷惑を掛けないような生き方をするよ。儂を助けてくれたのも、これまでの人生を振り返り、悔い改めよということだろうしな・・・」


 そう言って、レンダーは去って行った。


「奇跡とはこのとですね、マリアさん」

「そう思います。思ったんですけど、優しい人は口が悪いのかもしれませんね」

「そんな記録はありませんが、案外そうかもしれませんね」


 カトレアさんもあの人も・・・

 私はそう信じたい。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

次回から新章となります。

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