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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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15 マリアとカトレア

 本日から休校が明け、授業が再開されるのだが、シャイターン学園は異様な緊張感に包まれていた。

 校門付近では、近衛隊がフル装備で警備に当たっている。


 これには理由がある。

 あの事件で多くの貴族、騎士団員、文官、その関係者が処罰された。表向き、すべてを解決に導いたのが悪役令嬢のカトレアということになっていて、カトレアは国王陛下から直々に勲章を授与されている。

 アベル王子は大喜びしていたけど、カトレアに対して恨みを抱く者がいても不思議ではない。そういった事情から厳戒態勢が敷かれている。


 私は欠伸を噛み殺して、校門でカトレアの到着を待っていた。

 だって、テンションの上がったアベル王子に朝の4時に叩き起こされ、通学路の警備に当たっていたからね。


 しばらくして、カトレアを乗せた馬車が校門に到着した。

 カトレアがいつも通り、優雅に馬車から降りてくる。ただいつもと違っているのはケットシーのセラを肩に乗せているところだ。

 カトレアのいつもの挨拶に続いて、セラが念話を飛ばした。


『私はセラフィーネ。ケットシーの女王よ。私たちケットシーはカトレアを友と認めたわ。カトレアを傷つけるような奴は地獄に落ちることになるわよ!!』


 セラの念話に合わせて、一斉にケットシーたちがカトレアの周りに集合した。

 生徒たちが口々に言う。


「ケットシーって、実在したんだ・・・」

「ケットシーの女王が友と認めるなんて、カトレア様って凄いわ」

「今からカトレア様の派閥に入れてもらえないだろうか・・・」


 ほとんどの学生がカトレアを尊敬の眼差しで見つめていた。


 少し時間を置いて、カイン王子を乗せた馬車が到着した。

 カトレアが代表して、挨拶をする。


「おはようございます、殿下。私のために警備を強化してくださり、感謝を申し上げます」

「礼には及ばない。当たり前のことをしたまでだ」


 見た感じ、カトレアとカイン王子との仲は悪くないようだ。

 そんな話をしているところへ、マリアが駆け込んできた。


「よかったあ・・・間に合った・・・」


 カトレアがマリアに言う。


「間に合っていませんわ!!何時だと思っているのですか?」

「間に合ってますよ。ギリギリ・・・」

「殿下をお迎えするのが臣下の務めですのに、それに間に合わないなんて・・・どうせ夜更かしでも、してたんでしょ?」

「だって、昨日は孤児院の子が熱を出しちゃて、その看病で・・・」


 そんな二人のやり取りを微笑ましく見ていたカイン王子が声を掛ける。


「二人は仲がいいな。私は何も気にしてないからカトレア、その辺で許してやれ」

「分かりました。殿下が仰られるなら」

「うむ。カトレア、マリア、教室へ行こう」

「「はい」」


 カイン王子の後ろを歩くマリアがカトレアに声を掛ける。


「ありがとう、カトレアさん。あの場で叱ってくれて・・・」

「当たり前のことをしたまでですわ」

「あっ!!殿下の真似してる・・・」

「ちょっとマリアさん。本当に怒りますわよ」


 カトレアとマリアが軽口を叩き合っている。

 こんなことはゲームでは絶対になかった。常にカトレアはマリアを敵視し、冷たい言葉を投げかけていた。

 しかし今は、ゲームと同じように苦言を呈していても、それはマリアのためを思ってのことだった。あの場でカトレアが注意することで、他の学生の溜飲を下げさせる意味があった。それを分かっているマリアがお礼を言ったのだと思われる。それくらい二人の関係は良好だということだ。


 二人の関係が目に見えて改善されたのは、丁度セラを助けた日だった。

 ゲームであれば、セラと一緒にカイン王子の馬車で登校したマリアをカトレアが叱責し、一気に関係が冷え込んだのだけど、この世界では逆に関係が改善された。


 セラの治療で制服が汚れたマリアにカトレアは声を掛け、事情を聞いた。


「事情は分かりました。すぐに制服を着替えなさい。私の予備の制服の貸してあげます」

「本当にいいの?」

「もちろんです。汚れた制服で殿下の側にいるほうが無礼ですからね」



 このことがきっかけで、マリアはカトレアを信頼し、慕うようになる。

 天真爛漫で平民の孤児でもあるマリアは、知らず知らずのうちに学園や貴族のマナー違反をしてしまう。そこをカトレアがすかさず苦言を呈する。

 ゲームではこのようなことが徐々に積み重なって、悪い方向に進むのだけど、この世界では逆に二人は仲良くなっていく。


 ここまでカトレアを観察してきて、絶対にゲームに描かれていたような性格の悪い冷徹な悪役令嬢とは思えない。

 実際は真面目で優しく、誰にでも分け隔てのない公平なご令嬢だ。彼女が将来の王妃ならシャイターン王国の未来は明るいと思う。


 そんなことを思いながら、「今日もカトレアは奇麗だ」と本日二回目のセリフをつぶやくアベル王子を見る。


 この馬鹿王子が何もしなければ、カトレアは幸せになったのではないのだろうか?

 となると、この馬鹿王子が暴走しないようにしないとね。


 まあ、これからもやることは変わらないだろうけど・・・

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