14 ケットシーのパトロール
事件後の話をする。まず私たちの存在は公にされることはなかった。
これはベファーナが手を回してくれて、すべてカトレアの指揮を受けたマクダーモット侯爵家の私兵がセラの依頼を受けて一連の事件を捜査して解決したということになった。これは政治的な事情でそうなったとのことだった。
その影響で10日間、シャイターン学園は休校になった。犯罪組織「蛇の尻尾」は貴族社会にも深く関わっていた。特に関係が深い貴族は処罰の対象にされるという。その煽りを受け、ひっそりとシャイターン学園を去る学生も少なくない。なので当面の混乱を避けるため、シャイターン学園は休校となった。
ただ、私たち特別クラスは通常通りだった。
まあ、授業はないし、朝の点呼にさえ間に合えばそれでいいから、大した影響はないけどね。
そしてケットシーたちはというと、何とカトレア親衛隊に入隊することになった。
ケットシーたちは、どうしてもお礼がしたいという意向だったのだけど、アベル王子は例の如く「お前たちに興味はない。さっさと立ち去れ」と繰り返すばかりだった。なので、仕方なく私が間に入った。
「アベル王子。どうせなら私たちカトレア親衛隊の活動を手伝ってもらうのはどうでしょうか?ケットシーは魔法も得意ですし、通学路の見回りなんかは持って来いだと思いますよ」
「なるほど・・・カトレアのことを思えば、いい判断だ。おい、ケットシーども。しっかりとカトレアを守るように」
『分かったわ。だったら私はなるべくカトレアの側に居るわね。あの娘はああ見えて優しいし、気遣いもできるからね』
「ほう・・・お前は分かっているな。命を懸けてカトレアを守れよ」
こうして救出された子ケットシー10匹、後にやって来たその両親4匹、そしてセラの15匹がカトレア親衛隊に入隊することとなった。セラが言うには、子ケットシーたちの罰の意味もあるそうだ。
私がこの提案をしたのは、隊員が増えれば、カトレア親衛隊の活動が楽になると思ったからだ。
ただ、これは少し失敗に終わる。通学路のパトロールに当たる子ケットシーに「何か変わった事があれば、すぐに報告するように」と漠然とした指示を出していたので、トラブル解決のための出動が増えた。
大体が「用水路が詰まった」や「ゴミが不法投棄されている」など、どこの地域でもある困りごとだ。
それって私たちが対処しなければならないことか?と思ったけど、アベル王子が例の如く「カトレアを狙う暗殺者が仕掛けた罠かもしれない」と言い出して対処してしまう。アベル王子は無駄にスペックが高いから完璧に対処できてしまうのがまた厄介だった。
それに子ケットシーたちも本来の「カトレアの危険を排除する」から「町の困りごとを解決する」ことに目的が変わってしまっている。
パトロール中、子ケットシーたちが住民に『困ったことがあったら言ってね。何とかしてあげるから』と言っているのを聞いた時は、膝から崩れ落ちそうになった。
仕事を増やしてどうするんだよ!?
そう言いたかったが、最近では子ケットシーたちが朝夕にパトロールする光景は、通学路の風物詩となり、住民も喜んでいるし、何といっても子ケットシーたちが嬉しそうに誇らしげにしている姿を見ると何も言えなくなった。
極め付きは、マリアが生まれ育った孤児院の経営危機を解決することも請け負ってしまった。
これについても、アベル王子が
「孤児院が潰れ、路頭に迷った孤児たちが犯罪組織に身を落し、暗殺者となって・・・これはヤバい。カトレアの危機だ」
と言い出した。
最近では私が何も言わなくても、勝手に被害妄想を膨らませてしまう。流石にここまでになるとは、思いも寄らなかった。
「おい、留学生。すぐに孤児院へ向かうぞ」
「は、はい・・・」
孤児院に着くと、すぐに孤児院を運営している聖母教会の司祭さんが応対してくれた。
「ところで、どういったご用件で?」
「とにかくこれで何とか孤児院を維持しろ!!絶対に孤児たちを犯罪組織に売るような真似はするな!!この金で孤児院の経営を立て直せ!!」
そう言うとアベル王子は、大量に金貨が入った小袋を司祭さんに投げつけた。
多分、日本円に換算すると1千万相当だと思われる。
「こ、こんなにも・・・流石に受け取れません・・・」
「うるさい!!やれと言ったらやれ!!俺は忙しいんだ!!」
「わ、分かりました。心からお礼を・・・それでお名前だけでもお教え願えますか?」
司祭さんを無視し、アベル王子は孤児院を立ち去る。
仕方なく、私がフォローする。
「私たちは身分を明かせない立場の者です。聖母様の思召しと思ってください」
「そ、そうなのですね!?ありがとうございます」
「では失礼します。皆様に幸多からんことを」
孤児院を出るとアベル王子が怒鳴ってくる。
「留学生、すぐに現場に向かうぞ!!」
「どうされたんですか?」
「現在、子ケットシーたちが痴漢を追いかけている。すぐに捕縛に向かう」
「は、はあ・・・」
私はアベル王子に連れられて、ダッシュで現場に向かった。
一体、私は何をしているんだろうか?
決して悪い事をしているわけじゃないから、アベル王子に強くは言えないしね。
もうカトレアなんて、関係が無くなってきていると思う今日この頃だ。
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