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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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13/26

13 救出作戦 2

 救出したケットシーたちを引き連れて、「蛇の尻尾(スネークテイル)」のボスの部屋に向かう。

 この世界では初めて来るけど、ゲームでは何十回と来たことがあるので迷うことはなかった。付近に近づくとセラが警告をしてくれた。


『組織のボスであるイゴールはアンチマジックの魔道具を身につけているから、魔法攻撃が全く効かないのよ。それで私もやられちゃったんだけどね』

「分かったわ」


 それもよく知っている。ゲームで経験しているからね。

 魔法攻撃がメインのケットシーにとっては厳しい相手だろうけど、今の私たちにはどうとでもなる。特に「不意打ち」のスキルはかなり有効だ。ヘルローダが開発したスタンガン擬きと併用すれば、初見では無双できる。それにアベル王子も何だかんだ言っても強いからね。


「よし、突入するぞ」

「ちょっと待ってください。まずは中を確認しなければなりませんよ」

「そ、そうか・・・」


 大したことはない相手でも、油断はいけない。

 私はヘルローダが開発したファイバースコープ擬きを取り出し、ドアの隙間に差し入れる。すぐに中の状況が確認できた。


 映像を確認すると、部屋の中にはイゴールを含めて5人。会議をしているようだった。


「ボス、カチコミがあったらしいですね?」

「放っておけ、どこかの酔っ払いか何かだろう」

「そうですね。我ら「蛇の尻尾(スネークテイル)」のアジトと知って、殴り込んでくる馬鹿はいませんからね」

「それはそうとボス。クスリの件で・・・」


 あれ?

 なぜか、ゲームのストーリーの後半で登場する「蛇の尻尾(スネークテイル)」の幹部が一堂に会している。この幹部たちはボスのイゴールよりも戦闘力は高い。それが勢揃いしているとなると・・・


「中には5匹か・・・突入だ。ケットシーども、耳と目を塞いでおけ。行くぞ、留学生」

「えっ!?ちょっと、お待ちを・・・」


 アベル王子はドアを蹴破り、閃光弾を投げ入れた。

 私は慌てて、イヤーマフとゴーグルを着用する。これらもヘルローダが開発したもので、装備だけなら特殊部隊顔負けだ。


 すぐに轟音が響き渡り、眩い光がほとばしる。

 私と同じくイヤーマフとゴーグルを装備したアベル王子が突入し、瞬く間に制圧してイゴールと幹部たちを拘束した。

 あまりにも呆気ない展開に私も思考が追いつかない。ゲームの中ボスクラス5人を一遍に制圧するなんて、アベル王子のポテンシャルが高すぎる。


 そこからは地獄絵図だった。アベル王子による尋問という名の拷問が始まる。


「カトレア?そんなの知らないぞ。俺はケットシーを捕獲して貴族に高く売ろうとしただけで・・・」

「私は禁止薬物を少々・・・カトレア様ですか?まったく存じ上げません」

「お、俺は人身売買組織を仕切っているが、好き好んで上級貴族のご令嬢を狙うわけがないだろ!?」


「まだ正直に話す気はないようだな?地獄を見せてやろう」


 もちろん「蛇の尻尾(スネークテイル)」の幹部たちがカトレアのことを知っているはずはない。

 カトレアを「蛇の尻尾(スネークテイル)」がつけ狙っているというのは、アベル王子の妄想でしかない。そういう風に誘導したのは私だけどね。


 ケットシーたちを見るとドン引きしている。


『み、みんな・・・人間は恐ろしいのよ。分かったでしょ?』

『『『はい!!』』』


 外を見ると相変わらずエフェリートとヘルローダの乗るゴーレムが大暴れしており、野次馬も集まってきた。そろそろ潮時と思い、私はベファーナに渡された三尺玉をマジックバックから取り出した。

 三尺玉に取り付けられた説明書きを再度確認する。


「すべてが終ったら導火線に火をつけて、空に放り投げるのじゃ」


 まさかの人力だった。

 最近、私は「忍者」の固有スキルである「投擲」のスキルを身につけたので、何とかなるだろう。それに学生時代はソフトボール部だったから投げるのは得意だ。

 私は説明書きのとおりに夜空に三尺玉を投げ上げた。


 パーン!!という音と共に夜空に花火が上がった。現代日本の花火と違う点は、すぐに消えず、しばらくの間、光が空中に留まったことだ。


 それからすぐに騎士団のような集団が屋敷に乱入してきた。

 驚いたことに騎士団を率いていたのはカトレアで、その隣にはベファーナがいた。私はアベル王子とケットシーと共に「隠密」のスキルで付近に潜み、様子を見ることにした。

 するとベファーナだけは、私たちに気づいているようで、わざとらしくセリフじみた言葉を発する。


「ここは「蛇の尻尾(スネークテイル)」のアジトなのじゃな?親切な誰かが、幹部たちを拘束したのであろうな。ここに監禁されていたケットシーでもいて、証言をしてくれれば、この馬鹿どもを処罰できるのじゃが・・・」


 ベファーナの意図を汲んだセラが反応し、ケットシーたちは一斉に「隠密」のスキルを解除した。


『ありがとう。助かったわ。私はケットシーの女王セラフィーネ。詳しい事情を説明すると・・・』


 最初は驚いていたカトレアだったが、ベファーナが上手い具合に話の合間合間で補足説明を入れたこともあり、状況を理解したようだった。


「申し遅れました、私はカトレア・マクダーモット。マクダーモット侯爵家の長女でございます。私はこの付近の別邸に住んでおり、騒ぎを聞きつけたので、貴族の義務として私兵を引き連れて現場を確認に参ったのです。事情はよく分かりました。今回の件は私がマクダーモット侯爵家の威信に懸けて適切に処理致します。それで女王陛下には、正式な場で証言をしていただきたいのですが・・・」

『もちろんするわよ。それに貴方にも感謝を。お礼は必ず、するわ』


 その後、カトレアは私兵にテキパキと指示をして、「蛇の尻尾(スネークテイル)」の幹部たちは連行された。

 しばらくして、ベファーナが独り言のようにつぶやく。


「カトレア嬢に急遽お茶会を開かせ、無理を言ってマクダーモット侯爵家の私兵の訓練が見たいと言った甲斐があったのじゃ。偶然とは恐ろしいのう・・・」


 ここまで手際がよかったのは、ベファーナが事前に手を回していたからだったのか・・・

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