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乙女ゲームの世界に転移したOLが、陰ながら悪役令嬢を救う話  作者: 楊楊
第一章 プロローグ

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11 ケットシー再び

 慣れとは恐いものだ。

 辛かった活動も最近ではルーティーンのようになり、特に苦もなくなった。主人公や攻略対象を観察して楽しむ余裕すら出てくる。


 これはアベル王子の扱いに慣れたことも大きいだろう。

 アベル王子はスペックは高いけど、常識知らずで直情的だから騙しやすい。上手く誘導すれば、ある程度こちらの思うように誘導できる。まあ、あくまでもあ(・)る(・)程(・)度(・)だけどね。


 そんなある日、点呼の後に白く美しい猫、マリアが介抱していたケットシーのセラが訪ねてきた。


『すっかり遅くなっちゃったわ。ここは結界が張ってあるから入るのに苦労したのよ』

「お久しぶりね。無理して来なくてもよかったのに」

『ケットシーは気まぐれな種族だけど、受けた恩はきっちり返すのよ。それとね。ちょっと貴方たちに相談があってね・・・』


 そんな話をしていると、いつもの怒号が響く。


「おい、留学生!!早くしないと魔法実習に遅れるぞ。カトレアの雄姿をこの目に焼きつけなくてはならんからな」

『相変わらず口が悪いわね。ちょっとでいいから私の話も聞いてくれない?』

「うるさい!!礼もいらんし、相談も受けん。俺はそれどころじゃないんだ」

『そう・・・』


 セラは落ち込んでしまう。

 そこへ私に無関心なエルフのエフェリートが走ってきて、セラに跪いた。


「お久しぶりでございます、セラフィーネ様。エルフ王国第二王子のエフェリートです」

『あら?貴方もここにいたのね。ちょっと私のお願いを聞いてくれないかしら?』

「もちろんお伺いします。私で良ければ何なりと」


 エフェリートがエルフ王国の第二王子だったことは驚きだ。

 エルフ王国の第二王子がこの特別クラスにいるということは、彼も訳アリなんだろう。


『実はね。生まれて間もないケットシーたちが、悪い組織の奴らに捕まってしまってね。救出を手伝ってほしいのよ。私はこう見えても強いから一人で何とかなると思っていたけど、多勢に無勢でね。恥ずかしい話、返り討ちに遭って大怪我をしてしまったのよ。そこをこの二人に助けられたの』

「なんと!!アベル王子、そして人間の女・・・もとい、マコ殿、エルフを代表して心から礼を言う」


 私が恐縮していると、アベル王子がいつも通りの返答をする。


「ケットシーがどうなろうと、俺には関係がない。さっさと失せろ」


 また、始まったよ・・・

 いつも通り、間に入る。


「アベル王子、こうは考えられませんか?例えば今はケットシーを捕獲しいるだけですが、それがカトレア様に向けられたら・・・」

「それは大変だ。詳しく話せケットシー。捕まったケットシーを救い出し、その組織を潰してやる。だが、魔法実習が・・・」

「それは大丈夫ですよ。もう工作も必要ありませんし、どうしても見たければ映像の魔道具で後で見ればいいのでは?」

「そうだな、そうしよう」


 魔法実習の工作というのは、カトレアが魔法を放った時に他の学生に紛れて、あからさまに歓声を上げたり、「凄いです、カトレア様」と言ったりして、カトレア凄いぞアピールをすることだ。この提案は諸手を挙げてアベル王子に賛成された。「噂の流布」のスキルを使って、誰よりも声を上げていたしね。

 元々カトレアは魔法の才能があり、特に氷結魔法が得意なことは有名だから、すぐに工作の効果は表れた。最近では、工作なんてしなくても自然と歓声が上がり、カトレアを称賛する声が聞こえてくる。


 閑話休題。


 私がこう提案したのには訳がある。

 ゲームではセラのお願いを主人公マリアが聞くことになり、カイン王子を筆頭にした攻略対象たちと共に救出に向かう。

 私たちが話の流れを変えてしまったから、セラはマリアに頼まず、私たちに助けを求めたのだろう。

 だから私たちにも責任がある。私はアベル王子と違って、カトレアが幸せになれば、他はどうでもいいとは思わないからね。


 セラから詳しい話を聞く。

 1ヶ月程前、やんちゃ盛りの子ケットシー10匹が勝手に冒険と称して、ケットシーの里を出たそうだ。すぐに捜索を行ったところ、犯罪組織「蛇の尻尾(スネークテイル)」の王都のアジトに監禁されていることが判明した。


『あの子たちはまだ魔法も碌に使えないし、世間知らずだから騙されたんだと思うわ。ケットシーは魔力が高い種族だから、私たちを魔道具なんかの素材にする人間は今でも多いのよ』


 エフェリートが続く。


「我がエルフの盟友ケットシーに卑劣なことをした者たちを許すことはできない。皆殺しだ」

「そうだ!!カトレアに仇なす者は皆殺しだ」

「初めて意見が一致したな、アベル王子」

「カトレアのためだからな」


 馬鹿王子たちは物騒なことを言っている。微妙に会話は噛み合っていないけどね・・・


 今にも出撃しそうな勢いだったので、私は彼らを落ち着かせる意味も込めて提案する。


「担当教官のベファーナ様に相談してはどうでしょうか?相手にするのは大きな組織ですから、その後の処理とかも大変になるでしょう。流石に私たちだけでは・・・」


 実際、ゲームでは主人公や攻略対象たちが好き勝手に暴れた後、王宮の近衛隊がやってきて「後は我々にお任せください」と現場を引き継いでいた。

 戦力的に考えて、ゲーム序盤に起こるイベントなので相手をボコボコにすることは難しくない。なので、問題は後の処理なんだけどね。


 何度も言うけど、私はカトレアだけを救えたら後はどうなってもいいとは思わないからね。

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