表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界兵器開発録  作者: タスムート
序章 魔術の存在する世界
PR
6/12

憎悪

どれほど眠っていたのだろうか。私は喉の渇きと空腹で目が覚めた。目の前には、昨夜置かれたパンとスープ、コップ1杯の水かあった。


冷えたスープにパンを浸し、口に運ぶ。不味い。というか、味がない。


飲み込むと、食道に微かな痛みを感じた。嘔吐した際に、食道に小さい裂傷でも生じたのであろう。


ぬるくなった水を飲み、部屋から出る。


昨夜の、大剣を持った男はいなかった。


外に出てみると、軍服らしきものを着た男たちが、無言でぞろぞろと列を成して歩いている。

彼らをよく見ると、背中に杖とも銃とも言えない何かを担いでいた。


空はどんよりと曇っており、今にも雨が降りそうである。


私は母親を探すため、いくつかのテントを訪れた。


3時間ほど探してみたものの、どのテントにも母親の名前はなかった。まだ医療テントにいるのだろうか。胸に緊張が走る。


母親に会いたい、でも、現実を見たくない。


万が一のことを考えてしまい、徐々に大きくなる心音。


不安で吐きそうになりながらも、医療テントへ向かった。


「あら、どうしたの?」


昨日の看護師が声をかける。


「…リーベン・シュタイナーという名前の女性はいますか…?」


震える声で聞いた。看護師は、躊躇いながらも答えた。


「リーベンは…まだ見つかってないの…」


少しの沈黙が流れたのち、看護師は続けて言った。


「軍の方が行方不明者の捜索をしているのだけど、瓦礫の下にもいないって。もしかしたら、拉致されているんじゃないかって…」


「拉致…ですか…」


最悪だ。拉致となると、どのような扱いを受けるか分からない。凌辱され、交渉材料にされ、もしかしたら、肉体すら還ってこないかもしれない。


「君、リーベンの息子さんよね。私、リーベンの友達だったの。最近会えていなかったから、今度お邪魔しようとしていた矢先に…こんなことになってしまって…」


驚いた。看護師の女は母親の友人だったのだ。


「でも、絶対に軍人さんが見つけ出してくれるから、不安になる必要はないわ。先ずは、君の怪我を治すことが優先よ。」


彼女には申し訳ないが、不安になるなと言われても、そんなこと不可能だ。


私は俯きながら医療テントを出た。


この日から私は、自室に閉じ籠もるようになった。


どうしてこうなったのか。

私はただ、楽しく暮らしていただけなのに。

何か悪いことをしたのだろうか。

友人は焼き殺され、母は行方不明となり、一瞬で日常が奪い去られた。


私の、敵国に対する憎しみの感情は日に日に募っていた。しかし、何もできない。


無力で非力な私。全てを奪われても、何もできない私。絶望とやるせなさ。それにより増幅される憎悪。


何日も何日も、ベッドの上で、敵国、そして、自分の弱さを憎んだ。


3週間ほど経った頃、私はふと、外に出た。何故だか分からないが、身体が勝手に動いたのだ。


外には簡易の掲示板が敷設されてあった。


そこには、死者と行方不明者の名前が記されている紙や、配給日時、難民キャンプの地図が貼ってある。


行方不明者の中に、リーベンの文字はあった。未だに見つかっていないらしい。それを見ても、私は何とも思わなかった。私の心には、敵国に対する憎しみだけがあった。


自室へ戻ろうとしたとき、制服を着た軍人がこちらへ歩いてきた。彼は張り紙を掲示板に張り、何も言わずに去っていった。



『魔術軍人候補生募集。年齢不問。魔術技・医官、魔術軍人求む。』


彼の貼った張り紙には、ただそれだけが書いてあった。


ただの軍人の募集。


そう思ったはずなのに、気づけば私は、その一枚から目を離せなくなっていた。


翌週、私は候補生として、候補生学校の門を叩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ