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THE MARIONETTE  作者: イチバ
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第8話 ボルトゥルノ線

<地雷だ!踏むなよ!>


橋にはあちこちにトラップが仕掛けられていた。対戦車地雷の設置、有刺鉄線、ワイヤートラップ。絶対に通らせまいと機関銃まで放っていた。


「マックスを前に出して!」

<切り刻まれたくなかったら邪魔するなよ>


今作戦ではマックス曹長のシャーマンに改造が施された機体を使用する。シャーマン・クラブと呼ばれる派生型であり、胸部から伸ばされた鉄柱に幾つもの鎖を付け回転させ地雷を先に爆破させる地雷撤去システムを搭載している。僕らが援護射撃をしつつ、マックス曹長に突破口を開いてもらうということだ。

回転する鎖に叩かれ地雷は消えていく。

ついに有刺鉄線とチェコの針鼠を超え反対側に到着。歩兵が傾れ込む。


「焼き殺せ!」


火炎放射兵がトーチカと見張塔の中をグリルのようにSSを焼き殺していく。悲鳴が聞こえながらも炎の弾幕は止まることはない。


「Wir kapitulieren!」

「何て言ってるんだ?」

「知らねぇよ。撃っちまえ」


トリガーを引きアメリカ兵がグリースガンを腹に撃ち込む。

これを見たイーサンは絶句した。


「…これは…戦争犯罪だ…」

<イーサン。ナチの金歯を貰うなら今だぞ>

「サムなんてことを!同じ人間とは思えないぞ」

<イーサン。戦争をしてる俺らはもうおかしくなっちまったんだ。狂わなきゃ生きてけないんだよ。レコン隊長はもうやってるぜ>

「レコンが…?」


メインカメラを覗いた先には、ドイツ兵の遺体を漁るレコンの姿があった。サバイバルナイフで口内を穿っている。

戦時中、各国家の兵士内では稼ぐために金歯や腕時計を遺体から奪る行為が多発していた。有名な事例として、太平洋戦線では日本兵の軍刀や骸骨を自国に持ち帰ることがアメリカ兵で行われていた。


「レコン…」

<あいつは金目の欲しさじゃねぇ。根っからナチスを怨んでる>

「私怨だ。あのドイツ人も戦うことを拒んだはず」

<諦めろ。この戦争中に平和は無い>

<移動するぞ。また俺が先頭だ>


日に日に残虐性は双方過激になった。降伏すれば銃殺や拷問、または燃やされる。俺はこの戦争が始まるまで治安維持活動の戦者兵だった。こんな惨状は疎い性格だった。


しばらく前進しては攻撃を繰り返し、ある程度の場所までは入れるようになってきた。前哨基地にて休憩を入れることになる。


「アレックス准尉の部隊か!」

「あぁ…さ、サー!」

「久しいな。北アフリカ以来か。トーマス中尉だ」

「イーサン曹長であります!」

「そう硬くならないでくれ。イタリア戦線から付いたのか?」

「はい。それまではアメリカに」

「そうか…アレックス准尉はいるかね?借りがあるんだが」


俺はどう答えればいいか分からなかった。あんな死に方、誇り高く言えるものではないかもしれない。


「戦死しました」

「レコン軍曹…いや、今は曹長に昇級したのか。祝福をさせてくれ」

「ありがとうございます」

「そうか…アレックス准尉は戦死したか…もう一度、話をしたかったんだがな」


その言葉を聞いた時、俺らは暗い表情をしたのだろう。トーマス中尉は煙草を分けてくれたのだ。ずいぶんと高級な煙草だ。だが、俺だけは理解できた。あの煙草は民家から盗んできたものだろう。その煙草に火をつけ吹いた時、複雑な気持ちになった。


「来やがったぞ海兵隊め!」

「遅刻だぞ!父ちゃんに殴られちまうかもな!」

「ナチ共をぶっ飛ばせ!」


M3ハーフトラックに乗っかった海兵隊の部隊とP-51 マスタングが野次の中を過ぎ去って行く。先に向かうのだ。


「今日は寝ていけ。怪我人も多いようだしな」


随伴していた歩兵はボロボロ。担架に運ばれているのは片腕を失っていたジョーンズ中尉だった。砲撃では生き残っていたようだが、あの橋で負傷していたか。


「トーマス中尉、1つお伺いしたいことが」

「何かね?」

「…この戦争は、いつ終わるとお考えですか?」


トーマス中尉は少し黙り込み、こう答えた。


「悪の枢軸が滅びるまでだ」


第二次世界大戦。それは絶滅戦争とも呼ばれる。どちらかが滅されるまで戦い続ける。今大戦が生み出した狂気の思考だ。



サイレンの音で目を覚ました。


「空襲!空襲!」

「起きろ野朗共!死にたくなきゃ戦え!」


ドイツ軍の空襲だ。先の航空隊が敗れたのか!


「シャーマンが!」


既に爆撃で俺らのシャーマンは破壊されていた。M1ガーランドを手に取り戦闘機に向けて撃つ。しかし、こんなもの豆鉄砲と同等だ。当たるはずがない。


「レコン来るぞ!」


ダダダダダダダと地面が吹き上がりレコンに襲いかかる。


「突っ立ってるんじゃねぇぞ!」


20ミリがイーサンに命中し、木っ端微塵に肉塊へと変貌してしまった。基地のライトでその姿ははっきりと見えていた。


「イーサン!」


もう返事は返ってこない。

マスタングの増援でドイツ軍機が去っていく。基地は半壊状態で補給部隊を待つしかなかった。

僕はイーサンだったものの前でドッグタグを回収した。


朝になり、補給トラックが到着する。僕らには新しいシャーマンが配備された。


「主砲が長くなってる…」

「M4A2 76ミリ砲搭載型らしいぜ。タイガーの正面なら、ある程度は貫けるんだとさ」

「おい俺のクラブは新品じゃねぇのかよ!?」

「鎖で十分だろ」


これなら…ナチスの戦者なんぞ鉄の塊だ!


再び僕らは前進した。天候は雨。視界の悪い中の前進は渋ったが、あの惨状を喰らう前に早く動いた方が見のためだ。

ズドンと、マズルフラッシュと同時にマックスのクラブが誘爆した。


「敵だ!2時方向!」

<草むらの中だ!撃ちまくれ!>


しかしビッグガンは防がれた。盾持ちのⅢ号突撃砲だ。しかも3機も隠れていたようで、僕らは一時撤退を余儀なくされた。


「マックス曹長は!」

<無理だ。誘爆すればコクピットごと燃えちまう>

「…盾持ちが厄介だ。主砲で対応する」

<俺が囮になろう。俺が先に出てスモークを焚く。煙の中からちょっかい出すから、隊長が76ミリでぶっ潰す>

「分かった」

<早く昇級してやるからしっかり見とけよ!>

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