第5話 結果
「イタ者だ!」
2連装のビッグガンが僕らを襲った。
「Voi calpesterò!」(お前らを踏み潰してやる!)
森に突入し進軍していた僕らは既に敵に発見されていた。おそらく後ろからはドイツ軍が迫っている。またしてもピンチだった。
2連装のビッグガンは弾切れが早いが火力は申し分ない。たった1機だというのに。
「周辺にこいつ以外いないのか?」
このM14/41は1機のみ。本来戦者の運用は多数の戦者と随伴歩兵で成り立つもの。この機体は関節部からオイルが漏れている上に頭部が回らないようで、コクピットのスコープから覗いている。メインカメラも壊れているのだ。だが、まだ戦える限り脅威だ。
「バズーカもないとなれば、こいつを原始的な罠で止める他ない」
「原始的?」
ジョーンズ中尉の奇抜な戦略は、果たして有効なのかは分からなかった。木を切り倒しあの戦者にぶつけるというのだ。それは完璧なタイミングと腕が必要。メンバーを選抜し、誘導班、伐採班、指揮班に分かれる。
「爆薬の設置を急げ。見つかればおしまいだぞ」
「早く導線を繋げろ!」
工兵がせかせかとTNTの設置を急ぐ中、誘導班は遠回りをしつつ戦者を引き寄せていた。しかし、死人は次々出ていた。
「爆薬設置!」
「離れろ!」
工兵からの合図が送られ、ちょうどよく戦者が目標位置に足を踏み入れたのだ。ジョーンズ中尉をそれを見逃さず手を振り上げた。
工兵がレバーを押しTNTに電気が伝導。爆発し太く重い木の根本を破壊した。その木は戦者にのしかかり身動きをとれなくさせた。倒れた轟音が地面に伝わり響き渡る。
「コクピットを開けろ!」
「Non sparate!」(撃たないでくれ!)
「マヌケなヘタリア兵め。さっさと出ろ!」
僕らはこの戦者を乗っ取ることに成功した。操縦するのは僕。だが、内部はシャーマンより窮屈でメインカメラは壊れている。おまけに片脚は故障寸前という、欠点だらけの機体だった。装甲も紙のように薄い。
「こりゃあ…苦労するなぁ…」
ドイツ第三帝国
OKW
同 会議室
「「「ハイル!」」」
ヒトラーが敬礼で返し、会議が始まる。
「現在、アメリカ、イギリスを含む連合国軍はイタリア南部を北上。ローマへ進軍しており…イタリア軍及びドイツ軍は劣勢であります…」
「…やはりイタリア軍は当てにならんな。士気も低く驚愕的な弱さが目立つ。アフリカでも散々だった。東部戦線はどうなっておる?」
「ハッ。現在、赤軍はドイツ軍を押し返しています。よって、スモレンスク、ドニエプルで大規模な戦闘が発生。現在も交戦中です。また、フィンランドではカレリア郊外に進駐する共産主義者たちを押し返しています。しかし、ペトロザヴォーツクにて足止めをされています」
東部戦線。すなわち独ソ戦では、この時点で世界最大の戦者戦と呼ばれるクルスクの戦いで敗退をドイツ軍は味わい、さらに7ヶ月前には既にスターリングラードの戦いで敗北、撤退した。ドイツは後退を余儀なくされ、押し返すことができていないのである。ソ連の戦法でもある量と冬将軍を活かした猛攻撃と突撃。補給が届かず武器も体も凍結し動けないドイツ軍は不利すぎたのだ。
フィンランドでは1941年から継続戦争と呼ばれる戦線を展開。フィンランド軍とドイツ軍による攻撃でソ連は徐々に押し返されていた。だが、ペトロザヴォーツクには大量の赤軍が罠を配置し待ち構えており、進軍は停滞してしまっていた。おまけにドイツ本土と傀儡のフランスにはイギリス軍による空襲に見舞われており、工場の破壊も発生。ついには北アフリカ戦線を失っているためイタリア方面からも連合国軍が迫っていた。第三帝国の寿命が縮み始めていたのは明白だった。
この状況下、さらに最悪の事態が起きる。
「見ろ。ナチスが撤退している」
部隊の残存兵だろう。後方隊は撃滅に成功したようだった。しかし、あまりにも人数が少ない。包囲していたのならより多くの枢軸兵がいるはず。
ついには後方隊に合流し、アメリカ人と出会えた。この安心感は久しく感じる。しかし、同じ空間には大量のイタリア兵が混ざっていた。
「こいつら捕虜ですか?」
「イタリアが降伏したんだ。ナチスからはまだ反撃が続いているが、イタリアは次々白旗掲げて出てきたんだよ」
「ローマのパルチザンも攻撃をしているらしい。イタリア半島は俺らの勝利だな!」
イタリアが降伏。ドイツ軍が攻撃を続ける中であった。だが、イタリア戦線は終わりを告げることはなかった。ここから新たなにイタリア内戦と呼ばれる状態へ突入する。
降伏したイタリアだが、それは半分という奇妙な戦況である。イタリアのローマ含む北部はローマのパルチザンによる抵抗を始め、連合国と戦争を続ける。北部はイタリア社会共和国、南部はイタリア王国として事実上は内戦だった。社会共和国はフランス同様のドイツの傀儡で、親衛隊などによる強い統治が実施されていた。
「レコン曹長。ご同行願おう」
現れたのは憲兵隊だった。どうもただらぬ事が起きた気がする。
憲兵に連行され、上官から聞かされたが、隊長であるアレックス准尉がシャーマンを盗み脱走したのだという。脱走兵扱いらしく、そこら中を探し回っているそうだ。
「君らの隊長は捕まり次第、厳しい処罰を受けるだろう。敵前逃亡として銃殺刑にもなりかねない」
「どうにかならないのでありますか?」
「彼が何を考えるか、何を仕出かすかにかかっている」
正直、こんなことになるとは思わなかった。隊長が何を考えているか、いつも予想できなかったが、今はさらに予想できない。
「話は変わるが、これから我々は北部に移動する。おそらく、ドイツの戦者隊が待ち構えているだろう。そこで君らの援護が欲しい。新品のシャーマンも揃った上、君らが鹵獲したイタリア戦者も使用する。歩兵にとっては脅威極まりないだろう」
「了解であります」




