第4戦 緊急
1列の隊列を組み進軍する僕らは、いつどこから撃たれるかわからない恐怖で強張っていた。普段は吸わない煙草を今日だけは咥えていた。換気口から煙が出ているのが見える。
<敵の攻撃がない。というより、爆撃でかなりやられてるな>
辺りにあるのは放棄、または破壊された戦者ばかりだった。
<後方、敵戦者。何か引きずってる>
仲間の報告で後方を確認。巨大な図体に厚い装甲。そして忘れもしない四角形。
「タイガー!戦闘用意!」
<歩兵は散らばれ!巻き込まれたくないのならな!>
<タイガーのようだが、武装が確認できない。退避させているのかもしれない>
「だったら捕獲するまで」
僕らはある程度までタイガーに近づくことにした。しかし、こんな場所で一体何を…?
味方がコクピットを開き双眼鏡で確認。共有された情報は戦場の過酷さを表していた。
<主砲がない!ビッグガンすら持ってないぞ>
「武装していない?」
<副武装の機関銃だけのようだ。主砲代わりにクレーンがある。戦者を回収している>
「捕獲しよう。色々吐かせる」
ギアをさらにあげ、エンジンがさらに加速させる。
突如、草むらからロケット弾が放たれ味方のシャーマンのコクピットに貫通。そのまま倒れてしまった。
「伏兵!」
<対戦車火器を持っているぞ!>
一斉攻撃だった。あのティーガーは囮兼回収係。まんまと僕らは罠に乗っかってしまったというわけだ。
ビッグガンとM2の掃射で近辺の周辺は肉塊へと変わり果てる中、未だ伏兵の攻撃が続いていた。
「かなりの数だ…いくら殺しても減っていないように見える」
<隊長。通信兵からですが、どうやら後方隊が激しい攻撃に遭い交戦中だそうです>
「…しまった…どこかの大規模な部隊がここに合流したのか。今、僕らは包囲された上に敵陣の密集地帯に入り込んでしまった!」
<引き返しましょう!このままではやられるばかりです!>
「撤退したいのはわかるけど…」
<包囲されている限り、無理でしょう>
直線の撤退は不可能だ。今来た道はあの伏兵たちに阻害され、飛び込むことは自殺と同じ…。
「通信兵に航空支援要請を」
<了解>
激しく銃弾が飛び交い、通信兵が受話器を取る。
「航空支援を要請!応答せよ!応答せよ!」
しかし無線からは返答がないのである。既に無線パックが銃弾を浴び穴が開いていた。
「修理できないぞ…」
「航空支援は無理だ!」
ついには通信兵が頭に弾丸を喰らってしまう。
撤退もできず、支援もなし。敵は増えるばかりで後方隊は追いつけず、撃たれるばかり。補給が済んでいたとはいえ弾も燃料も無制限ではない。完全な絶体絶命だった。
しかし、この窮地からレコンは必死に策略を考えるため脳を回転させる。跳ね返る砲弾が機体を揺らしながら。
レコンは思いつく。
「この場所は起伏が激しい。逃げることはできる。全部隊に告ぐ。機体を捨て東方面に移動。敵部隊を迂回し後方隊と合流する」
<本気ですか!?敵がどこに潜んでいるかわからないのに、わざわざ森の方に>
「時間がない。少しでも助かる可能性があるならやろう」
<隊長の言う通りだ。そうしよう>
<…クソ…!>
僕らはトンプソンを持ち戦者から降車し、随伴歩兵に続くこととなる。
「聞いたな!全員頭を下げながら、敵に見つからずにここを離れる。包囲されているとはいえ戦っているのは南の奴らだけだ。気づかれないうちに東に入るぞ」
ジョーンズ中尉が再度確認し、歩兵を連れる。駆け足でここを離れる中、僕のFUCKING NAZI OF PREDATOR(ナチ野朗の天敵)と書かれていたシャーマンがダミーになっていた。シャーマンは僕らが逃げるために犠牲になってくれた。ありがとう、僕の相棒。
「Kommandant, der Feind ist aus dem Panzer ausgestiegen!」(指揮官、敵が戦者から降りました!)
「Geh weiter. Prüfen Sie, ob noch Feinde übrig sind.」(進め。敵が残っていないか確認するのだ)
「Nach Kommandant!」(了解!)
「Los Los Los! Vernichtet den Feind!」(行け行け行け!敵を殲滅しろ!)
ドイツ軍が突撃を敢行しシャーマンが佇む場にグレネードを投擲し突入するが、そこにはアメリカ兵の死体が数人あっただけで、大部分が移動していたことに気づいた。足跡は東に残っている。
ドイツ軍の指揮官は残ったシャーマンを見つめ、煙草に火をつけた。
連合国軍前哨基地
同 野戦病院
「戦者兵が脚を怪我するとは、かなり痛いだろうな」
「命があるだけ良かったが…仲間達が心配でならない」
「骨折はしたが軽度だ。9週間ぐらいで治る」
「9週間!?」
「そりゃあ、あくまで骨折だからな」
医者の診断を聞いた俺は目が飛び出そうになった。9週間もあればローマまで行ける。それどころかイタリア戦線に終止符がついちまう。
「戦者に復帰する。代わりのシャーマンを」
「無茶言うな。もしかすれば名誉除隊できるかもしれない。こんな機会滅多にないぞ」
「ふざけるな。俺は戦者兵だ。戦場が居場所だ」
クソ…こんなことになるんだったらあんな降り方するんじゃなかった!
この診断結果を受け、アレックスは最終的にとんでもない判断をすることになる。
夜中のことである。人気のない前哨基地で、野戦病院から1人の兵士が這いながらどこかへ進む。何を言おうか、この男はアレックスである。
たどり着いた先は戦者が横たわる所で、1機のシャーマンに乗り込んだのだ。
コクピットハッチを開け、中に滑り込む。
始動装置を押しエンジンを起動。
[ALC]
[SYSTEM STANDBY]
[M4A2 SHAMAN]
[76MM 71]
[M2 600]
[M3BIGGUN 180]
[READY]
エンジンが温まりついに起き上がる。外ではMPとクルーが必死に止めようとしているのがメインカメラを通じてわかる。
「すまないが、貸してもらうぞ」




