第3戦 レコン
-イタリア戦線-
イタリア王国
南部
「上陸!」
「走れ走れ走れ!」
イタリア軍の激しい反撃が続く中、長靴と称されるイタリア南部から上陸作戦を実行。上陸に成功し進撃を続けることになる。
「点検よし!進め進め!」
前回の激戦で、ドイツ軍陣地へ勇敢に突撃し部隊を率いた上、破壊したことから昇級。先任曹長から准尉となった。
「敵のトーチカを破壊してくれ!歩兵が前に出れない」
「聞いたな。全機トーチカに照準を合わせろ。AP弾強制再装填。次弾WP。俺の合図で一斉発射」
砲閉鎖装置から装填済みのAP弾をアームが掴み、緊急脱出用の天井ハッチを開き、AP弾を捨てる。歯車が回りアームが移動。弾薬室のWPを運び装填する。この間約10秒。
「撃て!」
WPはただの白煙ではない。空気に触れると自然燃焼するリンと呼ばれるものを含む。人が吸い込めば火傷などを負うのだ。
「弾を無駄にするなよ!トーチカを掘り上げろ!」
<芋掘りの時間だぜ!>
シャーマンの巨大な手がトーチカを持ち上げ、そのまま投げてしまう。コンクリートの塊が空を飛ぶというのは、敵にとって恐怖そのものだ。
<敵戦者が来たぞ>
「…盾なんて持ってるやがる」
現れたのはⅢ号とイタリア製のM15/42。しかし、Ⅲ号は今回とかなり違うものに変わっていた。
巨大な薬莢が地面に捨てられ、弾頭は鋼に防がれる。ビッグガンはあの盾で無力化されてしまった。体のほとんどを隠せる盾と頭部側面に搭載されていた盾は今まで以上に厄介な存在へと変貌させた。砲身回りには追加装甲も貼られているようで、相手のビッグガンは効く一方、こっちは意味がないのだ。
<アレックス後ろだ!>
「しまった!」
クローラーソードを持ち切り刻んできたのは、隠れていたⅢ号。火花が散り右腕を持って行かれた。
「この野朗!」
ゼロ距離射撃でAP弾を発射。追加装甲を貫通し誘爆した。その爆風にビッグガンは壊され、倒れるⅢ号に連合国軍兵士が潰されてしまった。
しかし、ここで安堵した俺は、これが命取りになりかねないものになってしまう。
「Arrivederci」(さようなら)
イタリア戦者兵が放ったセモヴェンテの90ミリ砲が俺のシャーマンを貫いた。砲塔が貫かれ、俺は誘爆を予感した。コクピットハッチのハンドルを回し脱出。数メートルある高さから飛び降りた。
「あぐっ…」
「アレックスがやられた!後方に居るぞ!」
脚に激痛が走る。骨が折れたのだろう…。
衛生兵が駆けつけ支え木を付ける。
「我慢しろ。出血はしていない。軽傷な方だぞ」
「なら…良かった…っ!」
「隊長!シャーマンを安全な場所に移動させました。ご命令を」
「レコンに…指揮権を移行せよ。ここを突破するんだ」
「了解です」
シャーマン隊を率いるのはアレックスからレコンに。他の戦者隊が既に先行を切り、それに続いた。
「伏兵に気をつけろ。どこから来るかわからない」
噂をすれば四方八方から大量の弾丸が飛んできた。しかしビッグガンではない。それよりも小さな弾だ。マズルフラッシュと弾丸は見えても敵本体は姿を見せない。
<どこだ!?>
<焦ったい!>
味方はM2を周辺に撃ちまくるが当たる気配はない。少しずつだが、ついには脚の関節に損傷が出始めていた。僕らにとっては小さな傷とはいえ、歩兵は跡形もなく消えてしまうほど強力だ。
犬のように素早く動く敵戦者は俺たちを苛立たせた。
「落ち着こう。音を聞くんだ」
<発砲やめ。発砲やめ>
必ず撃たれるのは側面か後方。砲身をどちらかに向け、敵を迎え撃とうとする。
「見えた!」
坂下から姿を現したのはかなり小型の四足。バババババと機関銃を浴びせればすぐに去ってしまう。
<セモヴェンテの次はカルロ・ベローチェかよ!>
「でもあれは関節部分しか狙ってこない。数機いるけど1機だけなら弱い」
<散れ散れ!分散して追いかけろ!>
全員が一斉に分散。カルロ・ベローチェは撤退し始めたが、ビッグガンの餌食になってゆく。
スパァンと、味方のシャーマンの膝の関節が貫かれ倒れかけた。光った場所であろう草むらに向かってM2を発射し仕留める。
「隠れてた。対戦者砲を搭載したタイプだ」
奥からビッグガンの弾丸が飛んできていた。先遣隊がやられたのか、Ⅲ号が向かって来ている。数は8機。いくらシャーマンとはいえこれだけの数は相手にできない。
<隊長指示を!>
<このままではやられるぞ!>
<伏せろ伏せろ!砲撃だ!>
加えて敵砲兵隊からの攻撃。僕は完全に混乱し指示が出せなくなってしまっていた。
<…見ろ。頼もしい奴らが来るぞ…!>
ヒューと風を切る音と共に黒い塊が降ってきた。それは地面に刺さり爆発を生み出す。
「空軍だ…」
青、白、赤の円が描かれたハリケーン戦闘機隊が爆弾の雨を降らした。
僕ら、今日、生き延びることができた。
「このバカ者!」
「げふっ」
僕は随伴歩兵の隊長であるジョーンズ中尉に殴られた。
「指揮権を移行されたにも関わらず、指示を出さないとは…我々を殺すつもりか!あそこでイギリス軍が来ていなければ、皆死んでいたんだぞ!」
「すみません…」
「すみませんて済むか!」
「もうやめろ2人とも」
シャーマン隊のイーサンに制止され、拳は収まる。
「今はローマに行くのが先だ。燃料と弾薬補給後に出発する。それで良いな、レコン隊長」
「…はい」
「よし。グズグズするな!こんな戦争、早く終わらせるぞ」
解散し、僕らはハッチを開けシャーマンに入る。
<レコン、気にするな。初めてにしてはよくできた方だ>
「すみません…私のせいです。もっと上手くなれるよう努力します」
<そうするんだな>
…そうだよね…みんな、家族が居るんだ。僕も同じだ。
隊長の偉大さが分かった気がした。こんなにも多い命を背負っているだなんて、思ってもいなかった。
僕らは再び進む。ローマに向かって。




