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THE MARIONETTE  作者: イチバ
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第10話 黒いシャーマン

「頼む…仲間だろ!」

「放て!」


レコンが所属している部隊の中隊長の命令でトリガーが引かれた。銃声が鳴り、岩に血が張り付く。


「逃亡兵は容赦するな。家族のために死ぬのは怖くない。むしろ誇らしいのだからな!」


この当時、戦場で狂ってしまう者も多かった。連合国軍も15歳や17歳といった未成年、つまり青年兵と呼ばれる兵士たちで溢れていることもあった。訓練を受けているとはいえ、戦争を経験したことのない世代にとって、この戦場は地獄そのものだったのだ。


「見ろよ。新しい戦車隊だとさ」

「先の奴が全滅したのか?」

「1人の戦車兵は救出されたが、結局おっ死(ち)んだらしいぜ」

「まるで安全な棺桶だな」



奥地たどり着いた先には爆撃で破壊された前哨基地があった。白骨化した死体と黒く焦げた残骸が広がっている。

突如、崩れた倉庫からシャーマンが現れた。


「…味方…?」


照準を合わせ発射。75ミリがレコンのすぐ横を過ぎ通る。


「敵!鹵獲したシャー…マン…?」


機体には鉄十字と"Scheiße Jankee von Erzfeind(クソッタレなアメ公の天敵)"が書かれていた。あれは前に搭乗していた僕の機体にあった文字とほぼ同じ意味であった。間違いなく、あの機体は僕のを鹵獲し運用していたのだ。

僕には、殺意を通り越した何かを感じた。


「このクソ野朗…」


コクピットは故障で閉まらない。武装はクローラーソードだけだ。だが、ここで破壊しなければもう二度とチャンスは到来しないだろう。

近接に出るしかないと思った僕はクローラーソードを機動すると、ドイツシャーマンもクローラーソードを抜いた。奴はビッグガンと副武装を所有していないということは、飛び道具が火砲のみ。見たところクローラーの刃を連れて付けた追加装甲がある。そう簡単には刃を通せないだろう。


「…なんだ…」


頭痛が激しくなるうちに、周りには黄土色の砂埃と他のシャーマンが現れていた。


「レコン。大丈夫か?」

「はっはい…」


ここは…北アフリカ戦線…。


「全員聞こえるか?」

「こっちもだ」

「俺も」

「同じく」


アレックス隊長に、イーサンに、ウィリアムとサム…?


「敵機だ!正面に3機!」

「よりによって戦者の偵察隊か!即座に片付けるぞ」


砂漠を歩くドイツ軍の戦者。1機には無線パックを背負い、虫の触覚のようにアンテナを生やしている奴もいる。僕は…何を…?


「Ⅲ号戦者だ。側面に入れば副武装でもやれる」

「白兵戦用意」

「レコン。お前がやれ。お前がやるんだ」


そうだ…やらなきゃ…じゃなきゃ、みんな死ぬんだ。


「かかってこい!殺してやる!」


正義とは勝った者のことだ。正義のために死んでいった仲間たちの弔いは今、ここでこいつを殺して必ず祓う!その血と金属に穢れた死は勝たなくては意味がない!

その黒いシャーマンも、もうかつての自分じゃない。薄汚いナチスの鉄塊へと変貌した。


「お前らが俺の隊長を殺したように、お前も殺す!」


滑り込み主砲の攻撃を避け、回転する刃で砲身を切断。もう奴の飛び道具はない。残るは接近戦だけだ。


「どうしたナチス…かかってこい」


奴はクローラーソードを投げ、俺の脚の関節に刺さした。火花が散るが、まだノックアウトはしていない。ドイツシャーマンは飛びかかり、ついに双方は倒れながらの殴り合いとなった。金属同時がぶつかり合うのだ。


「っ…このナチ野朗め!」


ドイツシャーマンの片腕を持ち足で力任せに蹴り飛ばす。敵のシャーマンの片腕はもがれ、倉庫の残骸に叩きつけられる。

起き上がり、レコンは自分とドイツシャーマンのクローラーソードを持ち、足を引きずりつつトドメに向かう。


「…ここまでだ…ナチ野朗!」


奴の隅に見えたのは黒い物体。奴はこの瞬間を待っていた!


「Fick dich, Jankee」(クソ喰らえ、アメ公)


片腕が触れ、その黒い物体は巨大な爆発を引き起こした。不発弾だったのだ。

レコンは吹き飛ばされ、地面に横たわる。

雨が降り始め、一粒一粒が当たってくる。

レコンのシャーマンは下半身がなく、レコン自体には金属の破片があちらこちらに刺さり、急所を貫通し大量に血を流していた。


「隊長…もう……疲れましたよ…」



連合国軍

前哨基地

同 テント


「えーっと、ジョーンズ中尉でありますか?傷病除隊が下されました。本国に帰還するから、今すぐトラックに乗れと」

「…傷痍軍人は要らねぇと…?」

「片腕失ってますし…本国で適切な治療を受けるべきですよ」

「お前、階級と年は?」

「デイブ一等兵であります。まだ18ですが、来年の1月で19です」

「…戦争は益々激しくなっている。お前が生き残れることを願おう」


トラックに乗車したジョーンズ中尉は、両脚を失った他の傷痍軍人からとあることを話された。


「戦争に飲み込まれた結果がコレだ。俺よ、戦場に居続けた間、味方のこととか、アメリカのこととか、親のこととか忘れていった。ナチスを殺すんだっていう感情にしかならなくなった。お前はどうだ?」

「俺は…どうだったんだろうな…。戦争を鵜呑みにした時が、死神の鎌が向き始めるのかもしれないな…」


なぁ、レコン。お前は行けたのか?

あの場所へ。


翌年の1945年5月8日、ソ連によってベルリンが占拠され、ドイツは降伏した。

第二次世界大戦が終戦するのは、その約3ヶ月後の8月15日。二度の原爆投下を経験し、日本が降伏。ついに戦争は幕を閉じた。

俺はこの戦争で、本当は何をしたかったのだろうか…?

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