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THE MARIONETTE  作者: イチバ
11/11

最終話 人の選択肢

1946年

イタリア王国

モンテ・カッシーノ近郊


「おとーさん!なにこれー?」


錆びついた鉄の塊は地に埋まりながら、周りに自然を出している。


「これは、戦争の遺産だよ。私もこいつと同じ型を撃ち抜いたことがある」


畑仕事をしつつ、俺は戦争を語る。まだ5歳の息子は俺が北アフリカで戦っている最中に産まれた。空襲を生き延び、戦場から逃げ、家族は再会することができた。俺もイタリアが降伏すると同時に白旗を掲げオーストラリア軍に投降した。


「パパー!あれなにー?」

「ここにあるのは全部遺産だ…待て、動いてるのか?」


タオルで顔を拭い、奥の方から何かが近づいてきている。


「早く逃げろ。パパが教えたことを忘れてないな?」

「うん」

「行け」


俺は桑を捨て全力で倉庫に走る。倉庫内にあるのはセモヴェンテ 90/53。俺が戦争中に使用していた自走砲だ。だが、武装解除に伴い砲身は切り詰められ、本来は機関銃すらない。武器はこの四つ脚だ。今は農業機械として使っていたが、ついにこの時が来た。


「反ファシストめ…ここまでやるか!」


まだこの年はファシズムへの憎悪が残っている。奴らは元枢軸兵士だった俺を殺しにきたのだ。


「どうだ。何が見える?」

<あしがふたつの…いさん!>

「いくつだ?」

<ふたつ!あと、おとこのひとがごにん!>

「何を持ってるか見えるか?」

<うーん…わかんない。でも、ひとりはパパが持ってるやつだよー>

「首をもらうつもりでいるな。よし。お前は逃げろ。あとはパパの役目だ」


倉庫の窓からは敵の戦者がこちらへ歩いて来る姿を確認できた。M13/40(カルロ・アルマート)が2機。ビッグガンはないようだが、クローラーソードと急造の戦鎚が見える。歩兵は鎌と釘バットがほとんどのようだ。銃の代わりにパチンコも持っている。


「地の利はこちらが有利だ。畑荒らしには消えてもらおう」


紐を引っ張りガソリンを当たりにばら撒かせ、マッチで火をつける。たちまち地面は燃え上がり黒煙を生み出した。


<おい黒煙だぞ!>

「歩兵が近づけねぇ。おい!誰かあの火を消せ!」

<来たぁぁぁ!>


倉庫をバラバラに破壊し飛び出てきたセモヴェンテに怯える反ファシスト派は接近戦のために突然する。


「クソッタレ…戦者隊だけで行く!歩兵は消火しろ」

<了解>

「気をつけろ。奴は地味に速い」


数でもスペックでも劣っている俺の手段は接近戦以外無いわけでもない。こういう事態に備え、あらかじめブービートラップを設置している。

カルロ・アルマートの1機が踏み外し転倒する。


「ドラゴンの歯だ!」


四角錐のコンクリート障害物。車両や戦者を止めるためにドイツ軍が使用した。それを土に覆い被せ見えないように設置した。


「ここ一帯要塞化されているっ…!」


俺は戦者から降り、迫撃砲を奴らに向けて発射。照明弾が眩しく光り、カルロ・アルマートの戦者兵たちは操縦を止める。

戦場で一瞬の隙は命取りだ。

俺は一気に距離を詰め、体当たりで1機を再び倒し乗り上げ人質に取る。


「そこから動いてみろ!代わりにこいつが踏み潰されて死ぬぞ」


一瞬、近くの土が動いた。

パンツァーファウストの弾頭が発射され命中するが、そこは砲塔の防楯。弾薬がないおかげで貫通しただけで済んだ。


「三度目は無いぞ」

「わかった!降伏する!」


ついに反ファシスト派は白旗をあげた。ここで、俺の最後の戦争が幕を閉じた。

事情を聞くと、彼らはどうやら元ナチスやイタリア兵を殺害しまくっていた自称反ファシスト派の盗賊だったらしい。大戦で家や財産を失い、金目的で殺していた。現状、恨みでナチスについたイタリア人の惨殺や虐めがあるのは事実。この現状を利用していたそうだ。


「あんたら、家族は?」

「俺ともう1人の戦者兵は家族を全員失っている。他のメンツは娘や親が生き残ってる」

「俺には息子と妻が居る。それなりに生活はできてるし金はある。どうだ。俺らの所で働かないか?といっても、畑仕事やら建築作業やらの肉体労働ばかりだが」

「いいのか…?俺はあんたを殺そうとしたんだぞ」


俺は戦争で散々な目を見た。もう争いたくはないのが本心だ。それに、家族や仲間のためにやっているという精神は見事だ。


「働くか否かは自分たちで決めるんだ。ムショに行くよりマシだと思うがな」


こうして、彼らは俺らの所で働き始めた。今や、かけがえのない親友たちとして過ごすことになる。

俺らは共に生き続けた。だが、世界は変わらず変わり続けた。

人類は脚を与えたことを省みた。だが、性能とその麗しさには勝てなかった。悔やんだり、善と見ても人の心が大きく変化することは一瞬でしかない。人々は再び戦争を始めた。朝鮮に東、中央ヨーロッパ、南米、中東、アフリカと至るところまでだ。街中に突入するIS-3。アフリカに焦げながらも居座り続けるT-34/85。ベトナムの空から参るM551シェリダン。街の道路で隊列を組み進む59式。中東で戦闘を繰り広げるAMX-30。この人類を最も争いの血に騒がせ、犠牲者を出した20世紀。時間が刻まれていくと同時に足跡が残っていく。

だが、それは必ずしも綺麗な足跡ではない。

そう…決して…。

























1947.3/12

トルーマン大統領 トルーマン・ドクトリン発令

冷たい戦争 開戦































THE MARIONETTE

〜完〜

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