21 エンジンの内側に流れるモノ
今回はオイル交換のお話しです。
オイル交換の後って解りやすいくらい気持ち良くなりますよね。
作業風景を交えて書いてみました。
バイクのメンテナンスは自分でやる。
こういうバイク乗りは多いと思う。
無論、メンテナンスは専門家に任せるというライダーもたくさんいる。
どちらでもいい。
バイクに対する愛情さえあれば、正解なんてものは無いと思う。
…正解は無いのだが、私は出来る範囲のことは自分で整備をしたいと考えている。
勿論、専門家の助けが必要な場合もある……いや、その場合の方が多いかもしれない。
ただ自分で整備をおこなっていれば、万が一のトラブルの時に何がしかの対応や、早い段階での原因の特定が出来るかもしれないと思うのだ。
以前、パンクを経験した時に自分の整備力の未熟さは痛感させられた。
もし私にバイクの整備に関する知識があれば、もっと早い段階で小さな挙動の違和感に気が付けたのではないだろうか? 何らかの対処が出来たのではないだろうか? と考えてしまう。
あくまでも私は素人だ。
整備士の資格を持っている訳でもないし、これから取ろうなどと思っている訳でもない。
定期的にプロの整備士にメンテナンスをお願いすることにはなるだろう。
それでも、メンテナンスは日常のことだ。
洗車から始まり、タイヤの空気圧チェック、各部のグリースアップやワイヤーへの注油、チェーンやエアクリーナーの清掃にエンジンオイルの交換。
日常的に出来るはずの簡単なことから、少しだけ手間のかかりそうなことまで、今の私にでも出来ることは結構ある。
それに、メンテナンスを日常から自分でおこなっていれば、トラブルを未然に防げたり、トラブルが起きてしまってもなんらかの対応ができるかもしれない。
まぁ、自分の相棒のことをよく知っておきたいというのも理由の一つなのだが。
なので、出来る範囲のメンテナンスは自分でやってみようと思った。
まず私が一番最初に手をつけた整備らしい整備は、オイル交換だ。
洗車やグリースアップは、クラッチレバーの交換やナックルガードの取り付けなど、自分で修理をした時に一緒におこなっていたが、乗り始めてから3ヶ月ほどの間エンジンオイルの交換はしていなかった。
距離的にはそこまで乗ってはいないが、もう交換したほうが良い時期になっている。
エンジンオイルの交換は、整備の中では初歩中の初歩だ。
誰にでも出来るし、その効果も解りやすい。
私は整備をするため、バイクを広いスペースのある実家に持っていった。
4サイクルエンジン用の新しいオイルと廃油処理用の箱は既に購入し、持っていってある。
実家に着くとコンクリート敷きの納屋にバイクを入れ、そこで作業に取り掛かった。
まずはアンダーガードを取り外す。
スーパーシェルパは未舗装路を走ることを目的に作られているため、エンジン下部を保護する金属製のガードが付いている。これを外さないと古いエンジンオイルを抜くためのドレンボルトが顔を出さない。
車両自体が軽いとはいえ、センタースタンドの無いスーパーシェルパの整備性はあまりよくなかった。
アンダーガードを取り外し、エンジンがまだ暖かいうちに廃油処理箱を下に置いてドレンボルトを緩めにかかる。
ボルトが少し奥まった位置にあるので、ソケットレンチでないと届かない。
また、ボルトにはそれぞれ規定の締め付けトルクがあるので、締めこむ目安となる位置にマジックで印をつけた。
他の整備でも使えるので、トルクレンチは後で買っておこう。
ドレンボルトはソケットレンチをあてがって動かすと、わりと軽い抵抗の後、簡単に緩んだ。
緩んでからはゴム手袋をはめて、手でボルトを外す。
ゴム手袋を使う理由は、軍手などの布製の作業手袋では、まだ熱いオイルが出てきた時に手にかかるとヤケドをしてしまうからだ。ゴムの手袋ならボルトが滑ってつかめないということもない。
ドレンボルトを抜き取ると、エンジン下部にあいた直径2センチにも満たない小さな穴から、まだ温かい真っ黒なオイルがトーッと出てきた。みるみるうちに廃油処理箱に溜まっていく。
オイル交換は人間でいえば老廃物を抜いてやる行為だと思う。
バイクも人間と同じで、汚れたものを抜いて新しいキレイなものと入れ替えてやれば、元気になるのは当たり前だろう。
しばらくすると落ちてくるオイルの量が少なくなった。
ハンドルとタンデムグリップを掴んでバイクを引き起こし、エンジンを水平にしてやる。
するとまたトトッとオイルが出てきた。
サイドスタンドしかないシェルパでは、放っておくだけだと全てのオイルが抜けないのだ。
何度か車体を傾けたり水平にしたりを繰り返して、古いオイルを全て抜いてやる。
ドレンパッキンを新しいものに代え、ドレンボルトを元の位置に合わせて手で締めこむ。
斜めになっていればボルトは入っていかないので、真っ直ぐにしてきれいに入るように締めていく。
キチンと入って手で回せなくなったら、マジックでつけた目印までレンチで締める。
これで概ね以前と同じトルクでの締め付けになる筈だ。
ウェスで周りをきれいに拭いた。
後は新しいオイルを入れてやるだけなのだが、サイドスタンドしかないシェルパはエンジンオイルのチェック窓をそのまま見てもどのくらい入ったか確認できない。
そこで、サイドスタンドの足に踏み台となるコンクリートブロックをかませ、倒れない程度に水平に近づける。
これで良い。
私はここでようやく新しい4サイクルオイルの缶を開け、オイルジョッキに規定量の1.5Lを注いだ。
オイルの色が廃油処理箱に溜まったモノとまったく違う。
箱の中の廃油が濃厚なエスプレッソのような色なのに、新品は縁日の屋台で売っているべっ甲飴みたいな色だ。
注油口のキャップを外し、オイルジョッキに移した新しいオイルを泡立たないようにゆっくりと流し込んでいく。
ある程度の量が入ったところでチェック窓に目をやり、一度オイルを入れるのを止め、バイクを水平にした。
FULLのラインまであと少しだ。
一度注油口のキャップを閉め、その場でエンジンをかける。
1、2分ほどエンジンを動かしてやって、新しいオイルをエンジン内に行き渡らせた。
エンジンを止め、5分ほど待つ。
もう一度バイクを水平にし、オイルのチェック窓を覗き込んだ。
エンジン内にオイルが行き渡った分だけオイルのレベルが下がっている。
キャップを開けて、チェック窓の真ん中くらいになるまでオイルを足してやった。
キャップを締め、サイドスタンドの下のブロックをどかし、外していたアンダーガードを取り付ける。
作業終了だ。
工具や廃油を片付け、汚れた手を洗う。
ジャッケットを羽織り、バイクを表に出してセルボタンを押す。
キュキュッ、バババババ!と即座にエンジンが目を覚ました。
ヘルメットを被り、グローブをはめ、相棒の背に跨る。
腰の下から聞こえてくるエンジンの機械音がいつもより静かだ。
クラッチレバーを握り、ギアを1速に踏み込む。
コッと返す声も穏やかになっている。
ゆっくりとクラッチレバーを離しながら、エンジンの音を聞く。
やはりいつもより大人しい、いや、スムーズなのか?
アクセルを徐々に開ける。
滑らかに鼓動音が高まり、加速が始まる。
クラッチを切って爪先でチェンジペダルを蹴り上げ、シフトアップ。
ギアがすんなりと入る。
そしてまた加速。
エンジンの吹け上がりがスムーズで気持ちが良い。
リフレッシュという言葉がピッタリだった。
3速、4速、5速、6速。
加速はまだ続いている。
特別なことをした訳でもないし、パワーが上がった訳でもない。
ただ一つ一つの動きが滑らかになっただけなのだが、驚くほど気持ちがいい。
ショップでオイル交換をしてもらっても同じように滑らかな操作フィールを感じられると思うが、ここまで気持ち良く感じるだろうか?
多分、この気持ちの大半は私の気のせいだと思う。
理論的に考えて、素人の私がおこなった作業がプロのおこなった作業に勝る訳がない。
ただ、この気持ちは、あのべっ甲色の液体を入れている時に一緒に入ったモノだ。
今エンジンの内側には、私の相棒に対する気持ちが、新品のオイルと一緒に流れている。
転んだり、パンクさせてしまったり、オマエには迷惑をかけてばっかりなのに、オマエはいつも俺を救ってくれる。
ありがとう。
私が入れたのは、10W-40の4サイクルエンジンオイルと、感謝。
気持ち良く回るエンジン音で応えてくれる相棒にまた感謝をしながら、私はさらにアクセルを開ける。
世界が、私達が、滑らかに加速していく。
自分で整備をしたり、パーツを代えたりすると、妙に気持ち良いですよね。
基本的にプロがやった作業にかなうはずはないんですが、自分で手をかけた分、気持ち良さが倍増します。
間違いなく気のせいなんですけどね(;^_^A




