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028もっと高く

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 俺の作戦を聞いた女騎士は、面白い、と一言。

 そして他の兵士に呼びかけ、どこからか鎖を持って来させた。

 

 それをぶん回しながら、城壁外のワイバーンに躍り掛かった。

 

 □

 

「ワイバーン騎兵? 東の方にはあるらしいが、この国には無いぞ」

「有利そうなのに?」

「我が国はモンスターが多い。その分ステータスが高い者も多い。空を飛ばずとも高く跳べるし、走ればワイバーンより早い者も多い。いちいちワイバーンを飼育するより、ステータスを上げた方が良い」

 そういう事らしい。

 しかし今必要なのは、ワイバーンの『空を飛ぶ』能力なのだ。

 

「あそこにいるワイバーンに乗れますかね?」

 俺は城壁外でまだ残っている屍肉を漁るワイバーンの群れを指差した。

「あれは野生だぞ? 東のワイバーン部隊も飼育しているものを使っている」


 ワイバーンは多分賢い。

 人間への攻撃衝動を抑える程度には脳が発達しているみたいだ。

 いや、そういう習性なのかもわからんが。

 ともかく、賢い動物というのは、使えるのだ。

 ワイバーン部隊があるという話を聞いて、俺は思いついた作戦を女騎士に話した。

 

 女騎士は、

「面白い」

 と一言。

 そしてどこからか探して来た鎖を持ってワイバーンの一体に躍り掛かり、鎖を噛ませてあっさり首根っこに飛び乗ってしまった。

 

 ワイバーンは暴れたが、よっぽど脚の力が強いらしく、女騎士は全くブレない。

 鎖を手綱の様に操作して、ワイバーンの頭をシェイクしている。

 酷いな。

 体格差こそ鷲と雀程もあるが、腕力は真逆に女騎士が圧倒的に強い。

 

 ワイバーンが抵抗を諦めるのは早かった。

「ははははは。なかなか可愛いやつじゃ無いか」

 という女騎士の笑い声が聞こえて来た。

 雨の中でもよく響く。結構な大声で喜んでらっしゃいますね。

 

 前々から思っていたけど、あの人多分ドSだよな。

 

 都合の良い展開は俺がチート転生主だからだろう。

 だったら、もう少し都合の良い展開になってくれ。

 こっちの神を知らない俺は、とりあえず猫神様に祈りながら、兵士に抱えられてワイバーンの元へと飛んだ。

 

 □

 

 俺がしっかり女騎士の背中に抱きついたのを確認してから、兵士は、

「御武運を」

 と言って去った。

 

「ところで、これどうすれば飛ぶんだ?」

「知りませんよ」

 ぐったりしたワイバーンはまだ地上にいる。

 

 女騎士はグイグイとワイバーンの頭を上げた。

 そして、ワイバーンの足に鞘入りの剣を投げつけた。

 足に衝撃を受けたワイバーンは、ギャン、とひと鳴きして、翼をばたつかせた。

 剣はドロドロの地面を転がっている。騎士は剣が大事とかそういう事ないんだな。

 

 何で足に衝撃を与えれば飛ぶとわかったのか聞いたが、

「勘。空を飛べるんだから、足に痛みがあれば飛ぶだろ」

 との事。

 

 ともかく、ワイバーンは飛び立った。

 

 □

 

 空中にいた他のワイバーンは、明らかに異物が乗っているこのワイバーンを避けていた。

 襲われないのは助かるが、ちょっと申し訳ない。

 

 遥か下には、ドラゴンゾンビの姿が見える。

 もう足が生え始めている。

 早くしなければ。

 

「馬と変わらんな」

 と女騎士。

 頭を向ける方向に曲がる。

 自転車も顔が向いている方向に曲がってしまうし、生物はそういうもんなんだろうか。

 空を飛べるワイバーンは『上を向かせる』という選択肢がある。

 女騎士はそれ一択でどんどんワイバーンを上昇させた。

 

 雨雲に突っ込んだり出たりしているワイバーンがいる辺りから、雲に突っ込んだ。

 

 □

 

 時折チカチカと光が視界を覆う。

 あまり静電気を蓄積していない様だが、それでも時折響く雷鳴で耳がバカになる。

 雷対策について女騎士と話をしたが、それは大丈夫らしい。

 薄く雷魔法を周りに散らしていると、相手の雷魔法が滑って別の所に落ちるとかなんとか。

 落雷で試した事は無いそうだ。

 大丈夫かよ。

 

 しかし、ワイバーンもなぜか雲に入ったり出たりしている。

 もしかするとこいつらは静電気を寄せ付けない何かがあるのかもしれない。

 と希望的観測をしながら気をそらした。

 

 □

 

 視界は悪い。

 暗い灰色に覆われて、俺にはどっちが上だか分からない。

 完全に女騎士任せだ。

 女騎士はかなり楽しいらしく、雷鳴でいかれた俺の鼓膜にも僅かに笑い声が聞こえた。

 いや、もしかすると笑っていないと怖いからなんだろうか。

 だとしたら可愛げがあるんだけど。

 

 ぱっと、辺りが赤く染まった。

 

「抜けた!」

 女騎士の声が聞こえた。


 □

 

 雲の上は晴れていた。

 

 ワイバーンの群れが近くを飛んでいる。

 渡り鳥みたいだな。

 ワイバーンの様な巨体がどうして飛んでいるのかわからん。だが、大雨や積乱雲をものともしない様子から、何か魔法的、スキル的な補助があるんだろうか。

 

 

 夕暮れの真っ赤な色が空の半分を染め上げ、もう半分からは夜がやってきている。

 夜の空には星が煌めいていた。


「壮観だな……」

 女騎士の小さな声が、なぜかよく聞こえた。

 

 積乱雲の高度は1500mから2000m程。

 厚みは成層圏に届く場合もあるらしいが、これはそこまでじゃ無かった様だ。

 しかし、地平が丸く見えるこの高さ、そしてやたらと寒い。

 積乱雲は最低でも5km前後の厚みがあるのだから、ここはもう地上から6、7km以上の高さ。

 


 そんな俺の説明を耳元で受けた女騎士は、

「まったく。御子は数字が好きだな。見ろ、この光景を。女心がわからんやつめ」

 と、俺をジト目で振り返った。

 ご褒美ではあるけど、今作戦中ですからね。

 

「じゃあ、いきます」

「ああ、頼んだぞ」


 俺はワイバーンの背から飛び降りた。

 

 

 ◯

 

 

 


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