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018夜に話をした

018夜に話をした


 俺は未だに地球にいた頃の癖が抜けず、暗くなってからもしばらく起きている。

 燃料、というか魔光石は燃料なのかわからんが、灯り代を余裕で払えるからというのもある。

 この魔光石は石がダメになるまで3年程だが、その間は魔力を充填すれば何度も使える。

 ただし高い。

 便利な道具だが、一般家庭は普通暗くなったら寝るし、冒険者もコスパを考えて松明を使っている。その辺で拾った枝に火魔法で火を点けたらタダだしね。

 俺は魔力量もお金も潤沢にあるので余裕の大人買いである。

 

 そんな魔光石の灯りの中、一階ではなくわざわざ二階の俺の寝室で、俺と女騎士は対峙していた。

 俺は寝台に腰掛け、女騎士は椅子。中央にはテーブル。

 寝室だが、色よい雰囲気ではない。

 なるべく外に話が漏れないための二階の部屋なんだろう。

 

「単刀直入に聞く。お前、どうやって黄金を運んでいる」

 女騎士の言葉使いまで変わっていた。

 何度も会っているうちに、どうやらこの女騎士がかなり高位の貴族である事は察していた。

 高貴な雰囲気漂う美女からこう言葉を浴びせられるとなんだかゾクゾクする。

 娼館では俺ちやほやプレイばかっかりだからね。金払いがいい上客だからね。こういうのにドキドキしてしまうんですよ申し訳ない。

 

「えっと…… それはどういう……」

「…………」

 女騎士の瞳は魔光石の暖かな電光色に照らされながらも零下の冷たさを保ってる。

 

 しばらくの間を置いて、

「私が間者である事はお前も気付いているだろう。私はこの街に来てから、お前の内偵を進めていた」

 ぎし、と、女騎士が少し体をひねる。

 俺は剣術はからっきしだが、なんとなく分かった。これは俺が逃げようとしたらすぐに飛び掛かってくる。

 わざと逃げて美女に取り押さえられるのも良いかもと思ったが、組み伏せてくれず普通に斬りつけられたら嫌なのでやめた。

 ストレスのせいか、脳が妄想力で逃亡しようとしている。

 

「お前の所に黄金を運んでいる者は居ない。だが、どの家にもたいした黄金は無かった。だとすれば、この街の何処かに、お前の持ち家10軒の内どれかか、あるいは全部か。黄金はどこにあるのだろうか」

 ブワッと冷や汗が吹き出てきた。

 このゴールドフィンガー、危険であると分かってはいた。

 しかし、分かっていながらも使い過ぎてしまった。

 だって、美女が全裸でメッチャ奉仕してくれるんだもの。

「何で10軒も家を持っている。隠し倉庫か…… それとも地下通路…… これだけ分散しているともしもの時には押さえるのが難しいだろうな……」

 地下通路なんてあったら確かに危険だ。

 モンスターなり敵なり侵入できてしまう。

 いや、無いんだけど。

 

 女騎士の冷たい視線はむしろご褒美だが、今後どうなるかを考えると手が震えてくる。

 捕まって拷問とか、ホントやめてください。

 

 だが、よく考えると俺を攫って拷問するなんて簡単なはずだ。

 つまり、俺の素性を未だに測りかねているのか。

 これだけの黄金を用意できる立場なのだから、下手な事をすれば外交問題になるかもしれないとか、そういう……

「ところで、お前が街に入る時賄賂をもらったという商人からも話を聞いたぞ。お前、何も持たずにあの妙な服で現れたそうじゃないか。荷物も無いとは、街の近くに拠点でもあるのか?」

 結構バレてた。

 あの妙な服ってのはジャージだろう。

 俺はジャージで散歩中に死んだ。

 服は再現してくれたみたいだけど、ポケットの中の物は全部無かった。

 元々手に持っていた物も無いし。

 

 確かに、我ながら怪し過ぎる。

 

「こっちも困っているんだよ。他国の工作員にしては間抜け過ぎるし、ハッキリ言ってお前は得体が知れん。大人しく全部話してくれるなら悪いようにはしない」

 今度は眉をひそめて悩んでいますアピールをしてきた。

 1人怖い警官優しい警官スタイル。

 もう俺のガッタガタのビビリっぷりがバレているのだろう。ここで優しくしてコロッと落とす気だ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして俺はコロッと落ちた。

 

 

 

 □


 

 

「お…… おぉ……」

 女騎士は俺の黄金化能力を見て頭を抱えてしまった。

 美女が頭をしゃがみ込んで頭を抱えて唸ってるなんて物凄く珍しい光景だ。




 □



 

「これは…… どう報告すればいいんだ…… これはスキルの一種なのか?」

 と逆に悩んでしまった様子。

 世の中には知らない方が良い事もある。



 

 □



 

 さて、もう明け方である。

 女騎士はウンウン唸った結果、


「よし、10軒の家全てに地下室を作れ」


 隠蔽する事にしたらしい。

 

 

 ◯

 


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