017彼を知らず己を知るなら一勝一敗
017彼を知らず己を知るなら一勝一敗
俺は黄金化の実験に勤しんでいた。
きっかけは指輪だ。
粘土にドーナツを沈めた様な形の溝を掘って、水を注ぎ、黄金化した。
すると、質量比で縮小されて成形されるため凹ドーナツ型の中央の盛り上がりが出来たばかりの黄金の指輪でちぎれたのだ。
こう……チ凸コだったら千切れてたとか、そんな事を想像してしまって股間がファッってなった。
黄金化の際、水面に手を触れる様にしているのだが、手のひらの感覚からすると自分の体は押し出されている様だ。
手を突っ込んで試したいけど、それで手が潰れたら大惨事なので怖くてできない。
それから指輪をいくつも作った。
粘土の成形の方が面倒だった。
やはり、輪っか状の水を黄金化したら締まる。
そこでふと、水魔法の事を思い出した。
俺の水魔法適性は『優』だ。
実際、飲み水ぐらいは自分で作れる様になった。
と言っても、今はまだ全力でやってコップ一杯分ぐらいだが。
魔法は魔力の消費もあるが、使っているとだるくなってくる。
「死にはしないけど、魔力量よりもどれだけ意識を保てるかが良い魔法使いの証。戦闘中に失神したらモンスターの餌食」
と、俺のお師匠様である女魔法士が言っていた。
この水魔法はどこから水を作り出しているのかはっきりとは分からないが、乾いた土地では効きが悪く、霧の中や水場では効きが良い事から、どうやら空気中の水分を使っているらしいというのがわかった。
風も何も吹かんのに、どうやって集めているんだろうか。
しかし、そんな事を言い出したら火魔法なんて燃料が無いのにどうして火が出てるのか知らんし。
不思議パワーという事で納得した。
ふと思い立って、鍋に水を入れて火に掛け、熱湯から立ち上る水蒸気に手をかざして黄金化してみた。
沸騰している水面から掌が火傷しそうなぐらい近い距離なら黄金化できたのだが、ちょっと面白い現象が起きた。
黄金がどんどん大きくなっていくのだ。
多分まず小さな黄金ができて、そこに水滴が付いてそれも黄金化していくという事なんだろうけど、能力を使い続ける限りはどんどん大きくなって、そして熱湯に落ちて鍋がひっくり返った。
あわや大火傷するところである。もうこの実験はやらん。かなりびびった。
霧の中でもやってみたいが、自分の周りの霧ごと黄金化して自分が潰れたら嫌だな……。
よし、やめとこう。
この水魔法で水を形成して、それに触れて黄金化すれば何かに使えるのではないだろうか?
ウォーターボールを黄金の弾丸に変えても多分飛ばせないが、手元に水の柱を生み出せれば、魔力と集中力が持つ限りどんどん武器を生み出せる事になる。
飛び道具の方がカッコイイけど、高い水の柱を黄金に変えて敵に倒すだけでもかなりの威力になる。質量武器怖い。
ゴールドフィンガーは相変わらず何も消費しないしダルさも無い。集中力は多少いるけど、変化が早いので別に問題ない。
本当にチート能力なんだな。
水魔法を鍛えよう。
と、なぜか転生する前の事を思い出した。
「あの猫神様…… 自分が管理していない異世界に行かせるって…… それにやっぱ、最初は右に曲がって、って言ったよな……」
何でそんな事を思い出したのか。
□
とうとう水魔法で空中に水を成形する事が可能になった。
3週間程掛かったけど、
「水魔法の才能があるのは確かですが、これほどイメージがハッキリしているとは」
とお師匠様に言われた。実際はもっと掛かるものらしい。
だってさ、アニメとか漫画とかでスーパーパワーの戦いとかよくあったし。
水魔法の才能も黄金化とセットで猫神様が付けてくれたのかもしれない。
俺は自宅で早速水の棒を空中に作り出し、それに触れた。
ぶっとい水の棒が野球バットみたいな感じに縮んだ途端、コントロールを失って床に落ちた。
「っお! あぶね!」
手が届く範囲なので、結構体に近い所で変化し、俺のつま先が潰される所だった。
20リットル分ぐらいだったのだが、ダルくなってしまい、少し休憩。
ちょうど女騎士にあげた鍛錬用のバットと同じぐらいの大きさだ。
今はこれぐらいの水と黄金を作り出すとダルくなる。ちゃんと覚えておこう。
休憩の後、今度は500mlペットボトルぐらいの水を成形し、黄金化させた。
手のひらに黄金棒クナイが落ちてきた。
「これで持ち運びしなくて良くなるな」
咄嗟の時のために手斧(最近野営作業でしか使ってない)2本と黄金棒クナイ4本ぐらいは装備しておきたいが、後は水魔法の集中力が続く限り作り出せる。
質量武器で物量攻撃とかロマンだな。
俺がニヤニヤしていると、戸を叩く音が響いた。
多分あの女騎士だ。
某料金徴収と同じく、仕事(レベルアップと娼館)から帰ってきて暗くなってからでも来ていたというのに、ここ1週間か10日ぐらい来てなかった。
面倒だなと思っていたけど、しばらく会えないとちょっと寂しかった。
女騎士美人だし。
「はいはーい」
と俺は玄関に向かい、ドアを開けた。
女騎士はいつにも増して冷たい目で俺を見ていた。
なんかあったんですかね……
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