欲情したわけじゃ、ないんだからね!?
世界の最果て。そこにその森はあった。
終焉の森。そこに住む魔物は、どれもが脅威度Sランクの化け物ばかり。
最弱のものであってもAランク。森の主に至っては、最大脅威度のSSSランク。
古代文献にて、数多の国家を滅ぼした魔物たち。それは白鯨然り、炎獅子しかり、白虎然り。他にも数種のSSSランクは存在するが、最も特筆すべきはこの3匹だろう。
白鯨はかつて最大の国家と呼ばれたライデン帝国を。炎獅子は亜人種族最強の吸血鬼の国を。白虎は魔法を使うことにおいては右に出る者はいないのが謳い文句のエルフの国を。
それぞれをたったの一晩で滅ぼしたその力は、SSSランクの中でも抜きん出ているだろう。
それらの国家は、どれもがその時代においては最強と呼ばれていたのだ。
そしてこの森の最奥に潜むのは、白虎。
「と、ここまでで質問はあるかの?」
「はい、先生!なんでそんな化け物がいる森に、あなたは単独で潜り込んでいるのですか!?」
眷属。もといえさとなった僕は、主人である彼女から説明を受けていた。
この森のことを。ここに潜む魔物の危険度。そしてSSSランク魔物のことを。
眷属についての説明を受けたかったのが本音ではある。しかし眷属は眷属だと、そう返されて終わったのだから仕方がない。
「決まっている。妾は強い。だからだ」
「全く意味が分かりませんが!?」
胸を張って威張る彼女は、その容姿も相まってとても愛らしく見える。しかし彼女は吸血鬼族の数少ない生き残りで、その身には膨大な力が隠されている。
「それと妾は先生ではなく、リリナだ。間違えるでない」
「あ、はい」
リセルは人差し指をピンと伸ばし、注意するように言った。
今、初めて名前を聞いたのですが?とは言わない。言ったところで聞く耳を持たずに、へそを曲げることは目に見えていたから。
「それよりその、はやく家に帰りたいのですが……?」
僕は恐る恐る、リリナにそう言ってみた。彼女の性格上、素直に帰してもらえるとは思わないのだが、言わないことにはなにも始まらない。
「ふむ。汝、どうやってここまで来た?」
「布団に入って」
「は?」
「ひっ!?」
こうやって馬鹿正直に答えてみれば、声を低くして睨まれる始末。
あやうく小のお粗末をするところであったが、すんでのところで我慢ができたのだ。代わりに大が漏れたことは、誰にも言えないが。
しかしまあ、こうしてジト目で睨む姿も随分と可愛らしいものだ。
「む、なんだ。妾の顔に、ゴミでもついているのか?」
いつまでもジロジロと彼女の顔を見ていれば、不思議そうにそう問われた。しかしここで馬鹿正直に答えてしまえば、僕の社会的地位がドン底まで下がることになる。
いや。元々底辺ではあったけど、ロから始まりンで終わる、幼女趣味の紳士にはなりたくない。
「……まさか、妾の美貌に見惚れた、とは言うまいな?」
ニヤリと口元をいやらしく歪めてそう言われてしまった。
それに一瞬、ドキリと心臓の鼓動がはやまるが、気づかれてはいないと思う。多分。
「ほう。しかしまあ、汝は年の差恋愛が好みなのか?」
ブンブンと千切れるほどの勢いで首を横に振れば、リリナはため息を吐いた。
「まあいい。とりあえず、汝を最寄りの村へと連れて行く。それでいいな?」
急に話は変わったものの、それ自体は僕の望んだこと。こんな危険極まりない森の中で話すくらいなら、安全な所でのほほーんとシコりたい。
そう思う僕だった。
……別にリリナに欲情したわけじゃ、ないんだからね!?




