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目が覚めたら、そこは異世界だった

チュンチュンと、鳥の鳴き声が耳に入る。まだ眠たいながらも、意識はどんどんと覚醒を果たしていく。


そこでふと気がつく。



……はて。僕の部屋から、鳥の鳴き声なんて聞こえたかしら?と。その考えが頭によぎり、瞬時に起き上がった。


眼前に広がるのは見慣れた部屋ではなく、どことも知れない木々が生い茂る森の中。

葉の隙間からは日が漏れていて、それが気持ちがいい。


「……って、ここどこ!?」


大きな声でそう叫んでみれば、帰ってくるのは静寂のみ。


「確か昨日はうると……」


そこまで言葉を口にして、僕は閉口した。

途端に段々と心が痛くなってきた。



あちらはどう思っているのか分からないが、自身が愛すべき家族であるうるに死ねと、そう言われたことを思い出したためだ。


「持ち物は……なにもないか」


身体中を探って確かめるが、布団に入って寝ていただけの僕は、当然のごとくなにも所持していなかった。


「これ……さっきまでは気づかなかったけど、よく見たら日本どころか地球規模でも見かけない木だな」


外見は普通の木なのに、直接手で触って確認をすれば、それは鋼鉄のように硬かった。


「考えられるのはこれが新種の木か、多分違うけど夢、それとも異世界召喚?ってやつかな」


そうは言ってみるが、さきほども心の中で否定した通りに夢はあり得ない。情報がリアルすぎるのだ。

目に感じる光も、匂いや音、触覚など、全てが鮮明に感じられる。


新種の木の可能性。多分これも違う。確か世界一硬い木が、黒檀とかそんな名前のものだった気がするのだが、それは名前の通りに黒い。

しかし眼前の木は茶色く、かつ硬い。


そしてよく見れば、周りをクワガタの角に、カマキリの鎌、そして象の鼻と、ハエのような羽を持つ奇妙な生物が無数に飛んでいるのだ。


「……うん。これ、異世界だ」


確信を持って言うことができた。こんな生物、現実はおろか創作物ですら見たことがないから。


そうと分かれば、とるべき行動はいくらでもある。

近くの町を目指す。あるかは分からないが、異世界の定番でもある冒険者となり、名を挙げる。ハーレムを築き上げて、ウハウハ人生を過ごす。帰るための方法を探す旅に出る。


現状で最も優先すべきは、町を探すこと。次に帰るための方法を探すこと。

冒険者などの命の危険を感じるような職業はやめておきたい。ハーレムなど築き上げるような甲斐性があるわけもなく、まずは特定の相手を見つけることから始めなければない。


神城悠聖16歳、童貞。職歴、高校生(引きこもり)。


それが僕のステータスであり、自身を社会のゴミたらしめん所以でもあった。


「……とりあえず、町を探すか」


その言葉に返す者は、誰もいなかった。


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