プロローグ?
雨の降る日だった。
その年は平年より降水量が多く、洪水によって外を出歩くことすらままならないほどだった。
その日、母は心臓発作により命を落とした。
救急車を呼ぶも、橋は落ちて、通ることが困難なほどに水で溢れた道々。
彼らが来た時には、すでに手遅れだった。
通報から約1時間半。体は冷たく、死後硬直も始まっていた。
その日から家族はバラバラになった。
父は母の死を忘れるかのように仕事にのめり込み。妹は髪を染め、毎日を遊んで暮らすようになった。
そして僕……神城悠聖は、家に引きこもった。のだが、なぜか異世界へと召喚されることとなった。
***
僕は平凡だ。どこにでもいるような、特徴のない顔つき。日本人高校生の平均身長である170。体重は60ほど。
髪は母譲りで、色素の抜けた薄い黒。
特筆すべきことはなく、成績も悪くもないが、決して良くはない。それは運動能力にも言えたことで、中学時代の部活動ではレギュラーにはなれたが、エースにはなれなかった。
どこに行っても平凡のままだと。僕はそう思っていた。
あの日までは。
パソコンの電源を切って、僕はベッドに身を投げた。時計を見れば、針は4時を指していた。これは昼の、ではない。現に外はまだ暗く、日はまだ出ていない。
そろそろ寝ようかと。そう考えるが、胃袋が思い出したかのように空腹を訴えかけてきた。
僕はため息を吐いて、布団から抜け出した。
今は12月だ。当然寝間着だけを纏った状態の僕には肌寒い季節で、足早に冷蔵庫を目指した。
ガチャリとドアを開け、ダイニングルームに足を入れた。
そこは電気が点いていて、テーブルでは1人の少女が箸を動かしていた。
妹だった。
元は黒色だった髪を金色に染め、派手に化粧などをしている。顔は身贔屓なしで見ても、かなり可愛い方だと思う。
彼女はこちらを向くことなく、咀嚼を続けていた。
ため息を吐いた。昔は僕によく懐いていて、お兄ちゃんとひまわりのような笑顔を向けられるだけで幸せな気分になれていたのに。
しかし今では引きこもり、兄貴など情の欠片も見られない呼び方ばかり。
「うる。いつまでも起きてないで、はやく寝ろよ」
「うるさい。引きこもりの兄貴だけには言われたくない。毎日毎日、ゲームばかりしてて。はやく死んで」
そしてこう言われる始末。
「……寝よ」
妹からの心痛な言葉によって精神が削られた僕は、来た道を引き返して布団に入った。
枕に顔を埋めれば、微かに香る汗の臭い。
布団にはしっかりと自身の体臭が染みついているために、正直鼻にきた。
それでも一度目を閉じれば、すぐに意識は暗くなるのだった。




