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何か聞かしてくれるのかしら
ハドソン河のほとりに公園が有った。
六十代位で有ろう女性が一人、水鳥に餌をやって居た。
青年が近づいて声をかけた。
「小母さん元気。」
ところが女性は何も気がつかない様子だった。
青年は彼女の正面に向かうと。
「カトリーヌ小母さん元気。」
「ああフレデリックかい。いつ来たんだい。」
「今だよ。」
「まぁ、元気かい。」
「ああ、小母さんも相変わらずだね。」
「小母さん、最近どうかした。」
「ちょっとね。」
フレデリックは叔母の両肩を軽く抱くと心配そうに。
「どうかしたの。」
「耳がね、余り気がつ聞こえないんだよ。」
フレデリックの叔母も若い時はピア
ニストとしてならしたものだ。
「可哀相に…」
叔母は遠い聴覚ながら
「せめて、そう。別れの曲が良いわ。」
「フレデリック・ショパンだね。」
「そうよ。貴方と同じ名前、ご先祖様よ。」
「僕ね叔母さんにプレゼントするよ。」
「あら、何かしら。」
「金曜日の夜8時、お家に居てよ。」
「お前もピアニストだったから、何か聞かしてくれるのかしら。」
「ショパンお
爺さんの、別れの曲。」
「有難う。優しい子だね。でも生憎耳が良く聞こえないんだよ。」
歳老いた叔母
の目頭から光るものが流れた。




