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戦闘用AIの僕が異世界に転生したと思ったら、実は魔法使いの杖に接続していました  作者: 時野マモ
戦闘用AIの僕が異世界に転生したと思ったら、宿題を手伝わされました
18/33

AIは少女と週末に入る

 金曜の最終授業の終わりを告げる鐘が鳴った瞬間……


 ノアは机に突っ伏した。


「つかれた……」


 声に力がない。


 それもそのはずだ。昨日は、下宿先の酒場で予告もなくやってきたアリアに緊張して、彼女が帰った後も、エンケたちに付き合わされ、解放されたのはだいぶ夜も進んできてからだった。


 そこから宿題を片付けてからなので、寝たのはまた深夜になってしまったのだった。


 それでギリギリまで寝て、パンを咥えながら慌てて登校。


 僕がこの世界に接続されてからのこの三日間、ノアはずっとこんな感じであるが、


「顔色悪いぞ」


 パラスが覗き込んでくる。


「当たり前だよ……寝不足だよ」


「ちゃんと寝ないと筋肉が育たないぞ」


「寝れるのなら寝ているよ」


「逆だぞ。寝てからその後のことをなんとかするんだ。寝不足は筋肉に悪いぞ」


「パラスにしかできないよそれ」


「……いやノアが寝ないだけでしょ。どうせいつもみたいに宿題をいつまでもやらないで、追い詰められてから始めたんでしょ。さっさと宿題していれば寝不足にはならないでしょ」


 ベスタがちょっと呆れたような顔でいう。


 なるほど、どうやら僕が来てからだけではなく、ノアはずっと寝不足で学校に来ていたらしい。


「でも……昨日は」


 確かに、昨日は情状酌量の余地がある。


 ノアが宿題をさっさとしたいと思っていたにしても、


「……」


 アリアが教壇の横で腕を組んでノアを見つめていた。


 いつも通りの表情だが――


 ほんのわずかに、視線が逸れる。


 ――珍しい。


 あのアリアが、だ。


 なんか気まずそうだ。


 昨日の件を、多少は気にしているらしい。


 まあ、ノアはそんなアリアに気づくような余裕もないようだが……


「さあ、みんな、だらだら居残りしないですぐに帰るんだ」


 アリアの言葉に、生徒達は次々に立ち上がり教室から出て行った。


 ノアも渋々立ち上がり、歩き出すが。


「みなさん……」


「……?」


 セレスが、ノア達に声をかけた。


「週末はどういたします?」


「どうって……レスリング部の練習だな」


 パラスが答えた。


「あ、今週は実家に戻って商売の手伝いだよ」


 ベスタは実家の商店で手伝い――(あきな)いを仕込まれるようだ。


「そうですか……」


 少し残念そうなセレス。


「ノアさんは?」


「え、夜は酒場の手伝いするけど、昼は……」


「良かった! それならぜひご一緒しませんこと」


「ご一緒?」


「私、明日は予定が空きまして……」


「ジュノー様が明日は忙しいってことか。良かったなセレス」


「パラス、もっと言い方に……」


 気をつけないと、どこで話が漏れるやら。


「ベスタも、そう思わないのか? セレスはもっと自由に青春を楽しむべきだぞ」


「それは、そうだけど……」


「いえ、私のことならお気になさらずに、ジュノー様は素晴らしい方ですから。一緒にいてとても勉強になります」


「そうなのか?」


「まあ、セレスが問題ないなら余計なこと言わないけど」


「それよりも、ですわ。ノアさんは明日暇でしょうか」


「え? はい、大丈夫だけど……」


「ならば、昼にノアさんに一緒に行っていただきたい場所があるのです……」


「? どこ」


「それは……」


 セレスは、ノアと一緒に出かけられることになったのに喜びながら、明日の目的地を伝えるのであった。


   *


 そして――夜。


「今やれば、日曜楽ですよ」


「無理……」


 即答だった。


 酒場の仕込みを手伝ったあと、自分の部屋に戻りベッドに倒れ込んだノアは、そのまま動かない。


「五分で終わります」


「うそだ……」


「では30分で」


「長い……」


「いや……でも後に残すより……」


「……」


「ノアさん?」


「…………すぅ」


 寝息が聞こえた。


 早い。


 3コマ寝落ちくらいのスピード感だ。


 そのまま、僕はしばらく観察していたが、本当に起きる気配がない。


 僕は、彼女を起こすことを諦めて、この世界についての学習を進展させることにした。


 ノアが眠りについた後の時間は、僕にとっての活動時間でもある。


 杖に蓄積された記録。接続されている情報。

 

 それらを整理し、分析する。


 ここ数日で、理解は大きく進んでいた。


 この世界には、地球でいうところのインターネットに近い、魔法によって構築された情報網が存在するようだった。


 ただし、そのすべてに僕はアクセスしているわけではないようで、たぶんある魔術師グループの情報網にあるものだけが見えているのだと考えられた。


 と言う意味では、インターネットでなく企業網(イントラネット)に接続しているようなものなのかもしれないが、それでもかなりの情報量で、僕の学習の進捗はまだ半分というところか。


 でも、完全ではないが――十分に、有用だ。


 この国の構造などがだいぶわかってきた。


 周辺諸国との関係。


 魔法によって支えられたこの世界の文明の詳細。


 歴史。


 技術。


 また、地球でいう特異点(シンギュラリティ)に対応するものだと思われるシングラについても様々な情報があった。


 発生条件。


 観測記録。


 対処法。


 地球では考えられないほど、様々な考察がシングラに対して行われていた。


 昔からシングラの発生に気づき対処してきたこの世界では、地球よりも一段深い現象への理解と、処理手法が確立されていた。


 だが、それが理解を意味するかはわからないが……


 少なくとも、対処の精度は地球より高い。


 どうやら、魔法的な存在らしいシングラは魔法を操るこの世界の方が親和性が高かったのかなと思うが、


「……まだまだですね」


 僕の学習はまだこのシングラをしっかり理解するまでには至っていないのだった。


 もう一週間くらいかかるかも。


 そんな試算をしながら、僕は注意を、地球側へ向けるのだが……


 何も変わっていなかった。


 乃愛も、柳生ニ佐も、まるで時間が止まったかのように、静止していた。


 なぜこんなんことが起きているのか――


 しかし……


 地球の時間停止について仮説を構築しようとした時点で、演算が中断される。


 必要な情報が、まだ揃っていないと僕は判断をしたのだった。



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