表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
8/18

地下に連れて帰った


地下へ戻る搬送路は、行きよりも騒がしかった。


理由はひとつ。


「いやほんと助かったわ〜文明!」


後ろでずっと喋っている男だ。


「静かにしろ」

黒川が振り向きもせず言う。


「だってさ! 人間の声聞くの何ヶ月ぶりだと思う? あっちずっと『キィキィ』だぞ?」


「順応しすぎだろ」


ユウがぼそっと言うと、男は笑う。


「環境適応力だけは昔から高いんだよ。ほら、俺、実家金持ちでさ」


「そのボンボン情報いま必要?」


「いやなんか説明しとかないと無職感だけ残るじゃん」


「無職なのは事実だろ」


「元だよ元!」


「今は無職じゃないつもりかよ!身も心もゴブリンか?」


「違うわ! 相談役!」


「肩書きがふわっとしてんだよ!」


後ろで佐山が肩を震わせている。

塩見は半分呆れていた。


搬送路のカーブを曲がると、地下の照明が連続して灯る。

空気が一気に“人の世界”の匂いに変わった。


鳴海はきょろきょろと周囲を見回す。


「うわ、すげぇ……普通に街じゃん」


「普通ではない」


黒川が短く返す。

そのまま無線を入れた。


「接触対象を連行。検査区画を準備」


鳴海がぴたりと止まる。


「え、検査?」


ユウが即答する。


「当たり前だろ。火出す奴を素通りさせるわけないだろ」


「いやでもほら、危険じゃないって! ちゃんと出力調整できるし!」


「出力って言葉を自然に使うな」


「あと風も出る」


「増えたな」


「小さいけどな? 飛び降りた時のやつ」


「なんでそんな軽い説明なんだよ」


鳴海は得意げに指を立てる。


「あと他にもある。いろいろ試してたんだ」


「試すな」


「え〜」


搬送路の終点に着くと、待機していた警備と研究員が数人。

女性研究員が一歩前に出る。


「この人が例の?」


黒川が頷く。


「外部で長期間活動。能力複数。自称制御可能」


「自称言うな」


鳴海が抗議するが、すでに周囲を囲まれていた。


ユウが横目で見る。


「観念しろ。どうせ逃げられねぇ」


鳴海は少しだけ肩をすくめ、すぐに笑った。


「まぁいいか。飯出る?」


研究員が即答する。


「検査が終わったら」


「よし受ける」


「即決だな」


担架ではなく、普通に歩かされる。

だが両側にはしっかり人がついた。


歩きながら鳴海が小声で言う。


「なぁ」


「なんだ」


「ここさ、結構ちゃんとしてるよな」


「一応な」


少しだけ間が空く。


「……よかったわ」


その一言だけ、

さっきまでの軽さが少し抜けていた。


ユウは前を向いたまま答える。


「まだ安心すんな。検査で爆発するかもしれねぇぞ」


「縁起でもねぇこと言うな!」


研究区画の扉が開く。

白い光が廊下に広がった。


鳴海は一度だけ振り返る。


「じゃ、また後でな。ツッコミ役」


「誰がだ」


「楽しかったよ。ほんとに。安心した」


「さっさと行け」


笑いながら手をひらひら振り、

鳴海は検査室の中へ消えていった。


扉が閉まる。


静けさが戻ると、

さっきまでの騒がしさが嘘みたいだった。


佐山がぽつりと言う。


「嵐みたいな人だな」


ユウは小さく息を吐く。


地下の灯りが、

いつもより少しだけ明るく感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ