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とてもかたい武器

「――すっごい頑丈なハンマーです」


リノリウムの床の検査室には独特のにおいが漂っている。

天井の光は強いが、四隅には光が届いていない。


無機質な机の上に、あの異形のハンマーが置かれていた。


説明しているのは榊。

俺を監禁していた研究員の女だ。

エーテル関連の検査・解析担当だったらしい。


榊は端末から視線を上げる。


「物理的強度が異常値。通常の鋼材の数倍。表面のエーテル浸食層が衝撃を分散している可能性があります」


鳴海が口笛を吹く。


「へぇ。つまり壊れない?」


「少なくとも、あなたの馬鹿力で振り回す程度でも」


「言い方」


ユウはハンマーを持ち上げる。


重い。

だが、吸い付くようにしっくりくる。


「侵食って、危なくないのか」


榊は淡々と答える。


「通常なら危険です。ですが——」


視線がユウと鳴海に向く。


「あなたたちは耐性持ちです」


黒川が腕を組む。


「実戦投入は可能か」


「可能。ただし変化の可能性がありますので、経過観察付き」


鳴海がにやりと笑う。


「ほらな。お前、似合うって言ったろ」


「うるさい」


ユウは小さく呟くが、悪い気はしなかった。


その日の夕方。


地下街の通路は相変わらず蛍光灯の白で満ちている。

古い自販機の光がやけに眩しい。


黒川が歩きながら言った。


「今日の成果は大きい。中ボス級討伐、変質装備確保」


「そういう言い方するとゲームっぽいな」


「お前たちの評価は高い。今後の扱いも変わるだろう」


少し間があいて、黒川が続ける。


「それとだ。紹介したい人がいる」


ユウが眉を上げる。


「新人ですか」


「そうだ。ただし——」


黒川が振り返る。


「お前たちの同類だ」


空気がわずかに変わる。


鳴海が口を開く。


「耐性持ち?」


「ああ。能力もある」


「どんな?」


黒川は少しだけ考え、言った。


「有用だ。だから地下に留められていた」


「……留められていた?」


「本人は帰還希望だ。家に帰りたいらしい」


鳴海が小さく笑う。


「健全だな」


ユウは無言のまま歩く。


家に帰りたい。


その言葉が、胸のどこかを掠める。


黒川が止まる。


「探索者志望だ。条件は、実戦適性の確認」


蛍光灯が一瞬ちらつく。


通路の奥、研究区画の扉の前。


黒川がノックする。


「入るぞ」


扉が開く。


白い光の向こうに、誰かが立っている。


「——紹介する」


黒川の声が響く。


「次の班員候補だ」


その人物が、ゆっくりとこちらを向いた。


次回、ヒロイン?登場。

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