異形の槌
階段が気になりながらも、物資の回収を優先する。
ひと段落氏し、まとめた物資を置いたその時、、階段の奥。
暗闇の中で、
重い金属音が響いた。
――ゴン。
床がわずかに震える。
黒川が即座に振り向く。
「まったく、待ちきれなかったのかよ」
ゆっくりと姿を現したのは、
さきほどの巨体よりさらに異様な存在だった。
人型。先ほどよりは小さい。
だが片腕が異常に肥大している。
その腕の先に、
鉄塊のようなハンマーが融合していた。
柄は骨のように腕と一体化し、
打撃部はコンクリートを固めたような鈍い灰色。
「……あれはやばいな」
鳴海が小さく言う。
異形は一歩踏み出す。
ゴン。
床にヒビが走る。
「中ボス級だ」
黒川が低く言う。
「正面衝突は避けろ。崩せ」
異形がハンマーを振り上げた。
振り下ろし。
衝撃。
床が陥没し、破片が跳ねる。
ユウは横へ跳び、粉塵の中へ踏み込む。
「鳴海!」
「了解、若いの!」
鳴海が両手を広げる。
風が渦巻き、異形の膝裏を打つ。
体勢がわずかに崩れる。
だが倒れない。
「硬いぞ!」
「知ってる!」
再びハンマーが振られる。
横薙ぎ。
空気が裂ける。
ユウはしゃがみ込み、
ハンマーの軌道の内側へ滑り込んだ。
「腕だ!」
鳴海が叫ぶ。
炎が走る。
肥大した腕の関節部分が、
一瞬だけ赤く浮かび上がる。
そこだ。
ユウが全力で斧を振り抜く。
鈍い衝撃。
刃が食い込み、
骨のような感触を断ち切る。
――断裂。
巨大な腕ごと、ハンマーが床へ落ちた。
異形がバランスを失い、膝をつく。
鳴海が笑う。
「今だ、主役!」
ユウは落ちたハンマーへ駆け寄る。
重い。
だが持てる。
両手で握り、振り上げる。
「……終わりだ」
全力で叩き込む。
一撃。異形の頭部が砕ける。
頭を失ったその体が、崩れ落ち、動かなくなった。
静寂。
鳴海が肩で息をする。
「いやー……あれはちょっとヒヤッとしたな」
「達成感はあるな」
ユウが言う。
黒川が落ちたハンマーを見つめる。
「……これは持ち帰る」
「戦利品ってやつ?」
「ただの武器じゃない」
黒川が手袋越しに触れる。
「エーテルの浸食を受けている。金属組成が変質している可能性が高い」
鳴海が眉を上げる。
「つまり?」
「何らかの特性を持っているかもしれん」
ユウはハンマーを握り直す。
重い。
だが妙な安定感がある。
「俺が使えるか?」
「振り回してただろう。問題ない」
鳴海が笑う。
「お前、ハンマー似合うかもな。殴る専門だし」
「うるさい」
黒川が短く言う。
「撤退する。十分な成果だ」
蛍光灯が一瞬、明滅。
粉塵の中で、
ハンマーの表面がわずかに光を反射した。




