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探偵志望ワトソンさんと  作者: 北乃コウ
イロコイ文化祭
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交じって混ざってまざりたくて<中編3>


 段ボールを切ったり迷路の図を考えたりと色々やることはあるようで、文化祭までのスケジュールはきれいに決まっていく。


 高校の中の文化祭の占める立ち位置はやっぱり強いから、徐々に学校全体が盛り上がっていくのを肌で感じていた。目まぐるしく、って程ではないけれど、それなりに忙しい人はいるようで大変だなとか思っていたのも事実だ。

 

授業終わりの放課後に手の空いてる人で組み立てていく。そんな絵にかいたようなものはダイジェストさながらに一瞬で通り過ぎて行ってしまう。


 もうすぐ、というか気づいたら文化祭の開催はあと数日にまで迫っていた。クラス展のみならず、部活の方も頻繁に力が入っているのも多いようで旧校舎も頻繁に大声が飛び交っている。


 今までBGMの代わりだった運動部の掛け声よりも文化部の方が威勢がいいかもしれない。


 俺は読みきった本を閉じて、パイプ椅子にぐったりと沈み込んだ。


 「……あれ?どうしてこうなってんだ?」


 「どうもこうも逃げ出したからに決まってるからじゃないですか。良くないですよ、そういうの」


 やれやれ、といった表情で俺を眺める恵茉。なんだ、文化祭なんてもしかして一切なかったのかしらん。つまり今までのは全部夢で、なんて。


 「そんなわけないじゃないですか」


 恵茉の目つきがもっと鋭くなる。久々です、なんて呟きながらパイプ椅子をいつものところに引き出した。


 「最初は高瀬君も悪くなかったんですけどね、段々人が増えるうちにやることやり終わって。その後ですよ、みんなと一緒にやればいいのに終わったら帰っちゃうんですもん。進歩がないですよ、まったく」



 「いや、それなりにやってた方だって。結構手伝ってたぜ」


 「そうですけど。この時間を機に一気に友達増やす差作戦だったじゃないですか、どうですか結果は?」


 見てわかるだろ、と思ったけど口には出さない。少しにらみを利かせながら両手を広げて見せた。やっぱり無理だよ、と。


 「恵茉も難しかったんですよ。女子の皆さんと仲良くやってるつもりなんですけど、踏み込みが甘いというかなんというか……」


 「だせぇな」


 「高瀬君に言われたくありませんけど」


 「でもまだやってるんじゃないの?」


 「どうなんでしょう。でも結構また人数減ってもいるんですよ。みんないろいろ忙しいですから。ホントはこういう時にこそ帰宅部が手伝わなきゃいけないんですけどね」


 見に行きますか?と恵茉が問いかけた。


 言いたくないけど恵茉と一緒だったら行ってもいいけどな、と思って俺は外に出た。


 といっても俺はそこまでサボってないけどね!




 クラスに着くともう人はほとんどいなくなっていた。委員長と副委員長それと俺がかなり前に引っ張った眼鏡男子グループ。あと女子が数人。


 もうほとんど完成しているので、あとは前日に組み立てるぐらいまでになっていた。委員長もなんだかんだやり切れただろうから、初日のような感情は消えているかもしれない。


 「あれ?」


 恵茉がふと立ち止まる。


 「どうしたんでしょうか、ほら」


 恵茉にならって教室を除くと委員長と副委員長が何やら話し込んでいる。込み入った話なのだろうか、少しだけピリッとしている気がした。


 「どうしたんですか?」


 こういう時の恵茉の切り込めるキャラは偉大だな、なんて思った。どうしようか迷ったけどそのまま恵茉についていく。


 委員長たちは、別に何ももめてたわけじゃないのだろう。初日に買ったペンキ缶を持ちながら会話をしていた。


 「あぁ家入さん、戻って来てくれたんだ。ありがたいけど、ちょっと今日はこれ以上どうしようもないかな」


 副委員長がペンキ缶を叩く。カランと金属の音が鳴った。


 「ちょっと使いすぎちゃったみたいで赤色だけ無くなっちゃってて。買い足しに行く必要があるんだ」


 委員長が困ったように笑った。


 「来年まで持つかと思ってたんだけど、すぐなくなっちゃったね……別に予算とかそんな大事じゃないから大丈夫なんだけれどね……」


 「あ、そうなんですか」


 じゃぁしょうがないな、と思い直す。手持ち無沙汰になった俺は、何ともなしに男子グループに話しかける。


 「なんか手伝うことあります?」


 びっくりしたようにテンパりを見せて眼鏡君たちは答えてくれる。


 「あ、いや、そんなにないですけど」

 「あ、じゃぁこれやってもらえます?」


 といって箒を渡される。あぁ、確かにこういう地味な仕事が一番必須だもんな、と俺は思った。

 段ボールや紐のゴミといった散らかったものを片付けていると副委員長の話し声も聞こえる。


 「ちょっと買い足しに行かなきゃだから、家入さんも一緒についてきてくれる?どうせだったら、ほら、ついでに」


 いいですよ、と恵茉。


 俺をわざわざ引っ張って来たくせにいきなり別行動ですかい。委員長がクラス分の費用を渡し、買い出しの準備中に恵茉が近寄ってくる。


 「ごめんなさい、恵茉買い出し班に変わっちゃいました。高瀬君も頑張って話しかけてましたし、その調子で頑張ってくださいね」


 「……おぅ」


 「あとちょっとこれは秘密ですけど」


 恵茉が俺の耳元で囁く。部室で待っててくださいね、と。


 「ごめんね、来てもらったのに買い出しに付き合わせて」


 「あ、行けますか?恵茉は全然大丈夫ですよ」


 パっと俺から離れて副委員長と買い出しルートへ入って行ってしまった。


 「じゃぁ今日もありがとうございました。最後まで残っててくれて。解散で大丈夫です……」


 委員長は残りのペンキ缶やら備品を確認している。俺は男子生徒たちと教室を片付けて、終えることにした。終始無言だったけれど。


 暗くなる前に恵茉が戻って来てくれるといいな、なんて思っていた。


 積み上げられた段ボールを見ながら、少々の間違いはあれど、クオリティの高さに唸ってしまう。高校の文化祭を少し舐めすぎてたのかもしれない。


 「すげぇな」


 ボソッと呟いた俺の言葉に反応するように委員長が笑ってくれた。


 「ありがとうございました……なんか、高瀬君にいろいろ言ってたのが恥ずかしくなってきました……それなりにちゃんとできました」


 「あぁえっと。というか、途中から抜け出したりしてたんだけど、俺……」


 ふふっと委員長が微笑んだ。みんなそんなかんじですよ、と。


 「でも、少しだけ計算違いでした。誰かこぼしちゃったんですかね。ペンキ。余ると思ってたんですけど」


 「それ……」


 「でも別にそんなの大したことじゃないですもんね……」


 そう言って委員長も教室を出ていく。


 「高瀬君は……その、電車通学ですよね?駅まで一緒に行きます?」


 是非ご一緒したいな、なんて思ったけれど。


 「あぁ、わりぃ。ちょっとまだ用事があって」


 「あ、そうですか……じゃぁまた明日です……」



 大したことないって委員長は言ったけれど、その大したことないのをわざわざ大声で喚くやつが俺の知り合いにいるんですよ、と笑ってしまった。


眼鏡グループが自分ですね、自己投影です。恥ずかしいですね。

あと推理要素はどこに行ったんでしょうか。きっとペンキ云々って言うつもりですね、浅すぎてこっちも恥ずかしいです。

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