まごうことなきデートです15
「ねぇ、キミ」
意を決して俺は声をかける。
俺よりやや若く、まだあどけない顔立ちの彼はこっちを振り向くと驚いた表情をした。
今日のデートもどき、きっとデートだと思っていたのは俺だけなのだが、その最中の恵茉の謎な行動の意味。
思えば最初からそうだとしか考えられない。
不便な待ち合わせ、変装のような恰好、人目を避けるような行動。
この前、学校で須藤に言われたことを今思い出す。『面倒な事件』、『男女間のいざこざ』。前日にスマホに流れてきた地域の安全情報、あれはかなり身近なことだったんじゃないか。
つまり、恵茉はストーカー被害、それよりも軽いかもしれないが、近しい迷惑をこうむっているんじゃないか?
そう考えると今日の一連の流れは納得がいく。俺を連れ出したのはその相手に見せつけて諦めてもらうため。だったら俺を選ぶのは納得がいく。ほら、俺、見た目だけはちょっと悪そうだし。
そして今日一日の中で何度も見た人影は1人しかいない。
「キミは……」
声をかけられた男性は、驚いた表情をした後、思ったよりも大きな声を上げた。
「ねぇちゃん!?」
発せられた言葉は俺の予想を大いに裏切るもので、理解に時間がかかってしまった。
「……え?」
思わず振り返る。
恵茉が、がっくりと肩を落としてため息を吐いた。
もう一度振り返って、困惑した表情の彼を見る。
「え?」
俺の間抜けな声はすぐにかき消される。
「え?なんでねぇちゃんがいんの?」
「もぉー高瀬君なにやってるんですか!」
「え?」
間に挟まれて首を振る。
「いや、その……え?弟さん?」
「はい、そうです。弟です」
紹介はほどほどに恵茉が俺の袖口を引いた。
「奇遇でしたね!じゃぁ私たちはこれで!」
誤魔化すような笑顔を向けて足早に立ち去ろうとしたが、彼が素早く呼び止める。
「いやいやいやいや!偶然なはずないじゃん!普段は図書館ぐらいしか外出しないんだからこんなところに男連れで来てるはずがないじゃん!」
映画館のトイレで見たときの面影はもしかしたら恵茉に似ているからかもしれない。不必要なことを言うのも恵茉を見て育っているからだろうか。
煽られた本人は向き直って顔を真っ赤にして否定している。
「そんなことないから!ちょっと!高校の友達の前でそう言うこと言うの辞めてよ!マジであり得ないんだけど」
そう言えば、恵茉がタメ語で話していた携帯の相手は彼だったのかもしれない。
「え!彼氏じゃなくて!?」
「友達だから!」
「……」
大声で否定する恵茉の姿に弟が俺をかわいそうな目で見る。姉弟げんかが始まったこの空間で俺はただ黙っていることしかできない。
「ヤンキーみたいな友達いるとかねぇちゃん……、いや、ちょっと待って」
彼が手持ち無沙汰で待っていたのは誰かを待っていたのだろう。今日のコースを思い出してそれは誰なのかすぐに推察できる。
「あの、彼女戻ってきちゃうんで、また後で良いっすか?姉ちゃんも、この続きは家でさ!」
「あぁ、うん……」
「紹介はしてくれないの?」
「するわけねーだろ!ばーか!早く帰れよ!つーかマジで帰れよ!そっちこそありえないって!」




