【第3話】お気に入りの一枚と飛騨牛の夜―岐阜編―
京山桜、二十歳。愛知県内の大学に通う、ごく普通の大学生。
少し控えめな性格だけど、旅行と美味しいものが大好き。
休日になると、リュックを背負って気ままな一人旅に出かけている。
旅の楽しみは、知らない街を歩くこと、その土地ならではの美味しいものを食べること。そして、全国各地で配布されている「ぴよぴよカード」を集めること。
訪れたことのない街、初めて出会う景色、思わず笑顔になるご当地グルメ。
時には予定を変更して寄り道したり、思いがけない発見をしたり…
これは、京山桜が全国各地を巡りながら、美味しいものと素敵な思い出、そしてぴよぴよカードを集めていく、のんびり気ままな週末ひとり旅の物語である…
スマホの地図を確認しながら歩いていた桜は、目的の場所に辿り着いた。
高山市の観光案内も行っている所で、
今回のお目当ての高山限定ぴよぴよカード
が配布されている。
「あった、ここだ。」
建物の中に入ると、観光パンフレットや
周辺マップが並んでいる。
サービスカウンターの近くには、
地域の観光情報を紹介する掲示物もある。
桜は少し周囲を見回してから、
受付のスタッフに声をかけた。
「あの、ぴよぴよカードを頂きたいんですけ
ど…」
「はい。ぴよぴよカードですね。
はい、どうぞ!」
スタッフがカウンターの下からカードを
取り出してくれた。
「ありがとうございます。」
受け取ったカードを、
桜はさっそく手元で確認する。
そこには、
黄色いひよこが大きく描かれている。
ひよこは赤い布で作られた小さな人形のような衣装を身につけている。
丸い体にちょこんとした手足、
頭には小さな飾りが付いていて、
なんとも愛らしい姿だ。
そして背景には高山の古い町並みが広がり、木造の建物が並ぶ通りの上には、
淡いピンク色の桜の花びらが舞っている。
カードの下部には、
筆で書いたような達筆な文字で
「飛騨高山」と書かれている。
「凄く綺麗…そして可愛いな。」
桜は思わずカードを少し傾け、
色々な角度から眺めた。
地域の特徴を取り入れながらも、
ぴよぴよらしさもしっかり残っている。
高山らしい衣装も背景もとても合っている。
「ちょっと歩いたけどこれて良かったわ…」
大切にカードケースへしまう。
これで今回の旅の目的の一つは達成だ。
桜は満足そうに受付のスタッフへお礼を伝え、施設を後にした。
その後、
桜は古い町並みを改めてゆっくりと見ることにした。
気になるお店を覗いたり、
通りの写真を撮ったり…
観光客で賑わう通りを眺めているだけでも
楽しい。
店先には飛騨の伝統工芸品やお菓子など、
様々な商品が並んでいる。
「そうだ、お土産でも見ようかな…」
いくつかのお店を回り、
家族へのお土産を探す。
両親には飛騨で昔からある駄菓子を買うことにした。
自分用には小さなキーホルダーを一つ。
買い物を終えた頃には、
時刻も夕方に近づいていた…
「さてと、そろそろホテルに戻ろうかな。」
桜は駅の方へ向かって歩き始めた。
ホテルに戻った桜は、
フロントで預けていた荷物を受け取り、
部屋へと向かった。
シングルルームの扉を開けると、
パジャマや歯ブラシなど必要なものが
コンパクトにまとまった落ち着いた空間が広がっている。
リュックを置き、ベッドに腰掛ける。
「ふぅ、疲れた…」
スマートフォンで撮った写真を見返す。
古い町並みの写真に、高山ラーメンの写真。そして、今日手に入れたぴよぴよカード…
桜はカードファイルから一度カードを取り出し、もう一度眺めた。
「やっぱり色が映えると良いなぁ…」
お気に入りの一枚が増えたことに、
自然と頬が緩む。
しかし、今日の楽しみはまだ残っている。
「さて、そろそろ夜ご飯行こ!」
お昼は高山ラーメンを食べたが、
夜は今回の旅行のもう一つのお目当て、
飛騨牛だ。
桜は少し休憩してから、
事前に調べておいたお店へ向かった。
夕食に選んだのは飛騨牛を思う存分味わうことが出来る、所謂名店と言われている店だ。
店内に入ると、
落ち着いた雰囲気が広がっている…
「うーん……どれも美味しそう…」
メニューを広げるとステーキに焼肉など
飛騨牛を全面に押し出しており
どれも魅力的で、しばらく悩んでしまう…
その中から桜が選んだのは、
飛騨牛のステーキだ。
注文を済ませ、
料理が運ばれてくるのを待つ。
しばらくすると、
熱々の鉄板に乗ったステーキが目の前に置かれた。
「わぁ!良い匂い…」
香ばしい匂いとともに、
焼き目のついたお肉が目に入る。
桜は写真を撮り、
ナイフとフォークを手に取った。
「さてと、では頂きます。」
一口大に切り分け、口へ運ぶ。
「……!」
噛むほどに広がる肉の旨味。
そして、柔らかな食感と脂の甘みが、
口いっぱいに広がっていく…
「美味しい…!」
思わず笑みがこぼれた。
昼に食べた高山ラーメンも美味しかったが、こちらも負けていない。
わさびも一緒に付けて食べれば
味わいがさっぱりとし更に箸が進んでいく…
桜は一口一口をしっかり味わいながら、
ゆっくりと食事を楽しんだ。
食べ終わる頃にはすっかり満足していた…
「ふぅ、ご馳走様でした…」
店を出ると、
外はすっかり夜になっていた。
ホテルへ戻る道を歩きながら、
桜は今日あった事を振り返ってみた…
高山ラーメンを食べ、古い町並みを歩き、
お目当てのカードもゲットできた。
そして夜には楽しみにしていた飛騨牛
も味わえた。
「今日は楽しかったなぁ…」
明日は二日目。
まだ行ってみたい場所もあるし、
食べてみたいものもある。
桜は明日の予定を考えながら、
ホテルへと戻っていったのであった…
読んでくださりありがとうございました。
日本には沢山の牛の種類ありますが、
特に飛騨牛は芳醇なコクと香りがあるのが特徴で、赤身の旨味も比較的しっかり感じられる牛さんだそうです。
おいしそう…ですよね…
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