第3話 洗脳解除と神ゴッド
涙を流しながら笑顔を浮かべる美少女。
洗脳が解除されて、俺に対する歓喜や猛烈な反省が一気に湧き上がってきたんだろうな……。
やはり美少女ともなると、そう言った人として当たり前の内省ということができるようになるのか。
自然な仕草でこちらににじり寄って来て手を握るのはいいんだが、少し臭うな。
なんというか、俺と戦う前から汚かったんだよなー。
流石にちょっときつい。
『魔神さま、どのようなことでも私になんなりとお申し付けくださいませ』
うーん。一発で綺麗になる魔法とかないか?
「おい! 魔法使い! お前も含めて体をキレイにしろ!」
一旦俺に縋り付くシスター服の王女を振り払い、ボディランゲージで魔法使いに服をきれいにしろと命令する。
そう、命令だ。
こいつはハーレムメンバー確定とはいえ、俺をクソ野郎抹殺計画に利用してきたからな。
しっかりとハーレムの主として最初に上下関係を築かなければならない。
ま、しかし……。
とんがり帽子からこぼれ落ちる白い髪、普段からデフォルトでジト目ぎみの青い瞳、魔法使いのローブ。
そして何より、少しばかり豊満な体付き。これだけ俺のハーレムへの資格を持っているならば……。
今のところ2人しかいないから、態度次第では上に戻してやらんでもない。
『……舐め回すように体を見てどうしたの? 魔神さま、翻訳魔法使えないの……? ……使えないんだね。わかった。』
「何言ってるかわからんけど早くキレイになってくれ! 我慢ができねぇよ!」
「■■■■……■■■■■……『翻訳』……どう?これで言葉が伝わった……?」
おお! こいつが異世界での道案内役だったのか!
力があればどうにでもできるが、やっぱ言葉が通じるか否かで、異世界での生活も難易度変わってくるからな〜。
「よくやったぞ魔法使い! 褒めてやろう!」
「んふふ……、それほどでもない。あと、私の名前はノーリィ。ちゃんと今までのように……? 名前で……、呼んで?(あれ、なんで私……)」
ふむ、ノーリィか。
俺のハーレムに相応しい名前だ。
でもあれだな。
俺とこいつは初対面のはずなのに、今までのように呼んでほしいってことは、こいつも夢かなんかで俺が来ることを予見してたのか。
ははーん、だから裏切ったのな。
やれやれ、夢程度で俺の魅力にやられるとは、先が思いやられるぜ……。
「あぁ……魔神さま。私の名はリーシャと申します……。なぜ先程、振り払われてしまわれたのでしょうか……改善したく存じますので、是非お答えくださいますよう……」
ふと気付くとリーシャという名前らしい俺のハーレム要員が、涙目でこちらに問いかけてきていた。
そうだったわ。
「臭いんだよお前。おいノーリィ。お前ら臭すぎるから、なんか浄化の魔法とかを最上位のやつ使って体を清めてくれ」
「そ、そんな……」
「ん……ひどい。そんなデリカシーの無いこと今まで一度も……ってあれ?(ブレイドはそんなこと……ブレイド?え?)」
リーシャもノーリィも自業自得なのにショックを受けてやがる。
そしてなぜか突然ノーリィは頭を抱えたまま、ウンウン唸り始めた。
「魔神さま!! 私が浄化の秘術を使えますわ! 全力で体を清めますので、少々お待ちを!!」
だるいことになってきた事に苛ついてたんだが、リーシャが身綺麗にする術を使えるらしい。
さすが俺のメインヒロインだ。
「お、そうか。隅々まで綺麗になる最上位の浄化魔法で頼むわ」
「はい……! 『私の全ては世界のために。大自然の循環を清浄に戻し、世界の淀みを正したまえ——大いなる静謐』」
次の瞬間、辺り一面が光に満ち溢れ、俺の心の中も暖かくなっていき、更には戦闘で荒れ果てた平原に草原が咲き誇っていた。
そして何より——リーシャとノーリィは、服のボロボロさはそのままだが、汚れが消えて傷も無くなり、その白い肌や艷やかな髪、そして顔も様々な汚れが無くなりくっきりと見違えるように綺麗になっていた。
「私は……!?(こいつ……!)」
「そういうことか……!ノーリィ、こっち来て!(この男、洗脳したことにも、無意識の洗脳が解除されたことにも気づいてない……!)」
ん?なんか急に綺麗になった瞬間、俺に対してものすごい目を細めてこちらを睨んできた気がしたんだが。
まさかさっきの術、ゲームでよくある神聖魔法っぽかったし、神に操られたか……!?
「おい!リーシャ!ノーリィ!お前ら、その魔法を司る神に操られてるんじゃないのか!?」
なにか話し合っていたリーシャとノーリィは、こちらの声に反応してその話し合いをやめた。
「い、いえ!実は……」
◇◇◇◇◇
そこから聞いた話は驚きの新事実だった。
実は先程俺を睨みつけたように見えたリーシャとノーリィの視線は、俺ではなく俺の中に潜む邪悪な存在が見えたのだという。
そのため、身綺麗にすると言って俺のなかに潜んでいた存在を油断させて魔法を使ったんだど。
そこで気付いた。俺の無意識が邪悪な存在の臭さを感じ取っていたんだと。それでリーシャに俺は最上位浄化魔法を使わせたんだな。
そしてその無意識な言動で邪悪な存在を油断させるとか、まさに救世主すぎるな。
そしてリーシャは、先程の神聖魔法の際にその邪悪な存在を勢い余って綺麗に浄化させすぎてしまって、苦々しく思っていたからということらしい。
浄化して昇天させるのではなく完全消滅させたかったとか……。
ふーむ。俺のハーレムにしては血の気が多すぎるな……。
まぁ、その外見の美しさと、俺に対するリーシャの献身を思えば、多少の血の気の多さなんかはお釣りが来るか。
……話を戻すと邪悪の存在とかいうのは、さっき勇者の力を引き出そうとした時、俺に『我の力を求める者よ……』とか、語りかけてきたあいつのことだろうな。
やつはまだ俺の力を奪おうとしていたのか。
まぁ、俺の機転とリーシャのおかげで何か企む前に終わったみたいだが、これも俺の日頃の行いがいいからだろう。
そして、先程の相談内容はどっちが俺にこの世界のことを説明する案内役をするかどうかのマウントの取り合いだったらしい。
やれやれ、人気者はつらいぜ。
「……わー、神ゴッドさまの案内役なれなくてー……ざんねんだなー……(死ね)」
めちゃくちゃ棒読みしてるように見えるが、これがノーリィの普段の喋り方らしいな。
「ふふふ、ノーリィには悪いですが、私が神ゴッド様にこの世界について歩きながら教えて差し上げますわ!」
そう。伊喜利太郎という名前を捨てた俺は、今日から神ゴッドだ。
神が苗字でゴッドが名前。
そう言った瞬間、ノーリィはあまりの威厳に恐れを出したのかうつむき、リーシャは声を引きつらせながら恐れおののいたように「さ、さすがですわ……」と声をあげていたな。
ふふ、これが神である俺の神センスだ。
……あ、そういえばこれも言っておかないとな。
「お前たち、その指輪は外しておけよ。あの最悪な男がお前たちをアクセサリーにするために付けさせたものだろうからな」
そう言うとリーシャとノーリィが二人で顔を見合わせたあと、こちらに向き直った。
「この指輪は、この世界における私たちの身分証明のようなものなのです」
「うん。外したらいろいろと困る」
あー……。なるほど、異世界の保険証とか免許証みたいなものか。
だから全員つけていたんだな。
「なら、俺も身に着けないといけねぇな……。」
「…………では、少々お待ちください」
◇◇◇◇◇◇
彼女は近くにあったテントの残骸のような場所からバッグを掘り起こすと、装飾が施された布袋からひとつの指輪を取り出した。
「神ゴッド様……。こちらを是非、ご着用くださいませ」
リーシャが渡してきたのは綺麗な装飾が施された白色の指輪だった。
「ん? お前たちとデザイン違わないか……?」
疑問を口に出すと、ノーリィが横から声を発したのでチラリと見る。彼女はこちらを見据えながら話しだした。
「その指輪は、私たちの使うものよりも更に上位の指輪。一つしかなかったから誰も着けていなかったの」
……!!!! これは俺が付けるために運命が用意していた品だったのか!
リーシャたちは気付いていないようだが、これはさすがに露骨すぎるぜ運命さんよ……!
「(あの男にあげてよかったの? お気に入りの指輪じゃなかった?)」
「(ええ……。一番私たちの指輪のデザインに近いのは、あれしかなかったし)」
神ゴッドに渡した指輪には特殊効果などはありません。太郎の指には少し小さいです。




