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第2話 魔神とハーレム


 気が付くと、青々と生い茂る平原に佇んでいた。


 その平原の地面に広がる大きな魔法陣。その中心に俺はいる。


 その魔法陣のそばで、悲壮な顔つきの男女が4人シリアスな表情で、俺の自衛の結晶であるヘリや装甲車の残骸、そして加害者たちの末路を呆然と観察しているのが見えた。


『な、なんだこれは……』


『巨大な鉄の塊と、大量の死体……!?』

 

「おーい、お前らが勇者である俺を呼んだんだろう? 誘拐したからには、早く女を連れてこいよ」


 近寄って行って俺が声をかけると、墜としたヘリの影になっていて俺が見えていなかったのか、驚きながら剣を向けてこちらを見た。


『君……!魔神はどうしたんだ……!』


「はぁ?意味わかんねぇ言葉喋るんじゃねぇ!日本語喋れや! ……というか、いきなり拉致してきてそれはないだろ!」

 

 異世界召喚した加害者のくせして、異世界翻訳も無しに刃物を突き付けてくるし、くっそイケメンでムカついたから、全力で拳を振りかぶる。



 これだけでも風圧で攻撃できるのは便利だよな。




「——■■■■■■」




 後ろにいた魔法使いの美少女が杖を構えて何かを唱えると、透明な何かが男の表面に浮かび上がり守るように俺の拳圧を防ぎ、消えた。


 ……は? 日本で無双した勇者である俺を相手にして、何で拉致誘拐した卑怯者が美少女に守られてやがるんだ?


「ふざけるなふざけるなふざけるな!! 男なら女に守られるなよ! 俺と一対一で戦えよ!卑怯だ! 俺のほうがつよい! 選ばれてるんだぞ!」


 拳で殴ろうとした所で、獣人の美少女が飛びかかってきたため教育するためにぶっ飛ばす。



『んっ……!』


「獣人美少女は普通俺の味方だろうが……!」



『こいつ……、遅かったみたい……! 魔神の魔力をこの男から感じる……!』

『なんだって……? くっ、とてつもない馬鹿力だ……!』

『魔力がなくて、もう魔法が使えない……。』

『やはり休むべきだったわ……、私ももう、転移魔法の魔力供給で力が……せめてこのメイスで……』 


 俺を拉致した上で、美少女たちを侍らせてこちらに対峙するイケメンに腹が立ち、拳で殴る、殴る、殴る!


 横入りしてきた女たちは横払いで一旦ぶっ飛ばした。


『ぐっ……! この男、肉体的な力だけなら魔神以上よ……!』


『完全に継承してる……! 私が判断を誤った……!』

 

 クソ野郎は盾で必死に防いでいるが、見るからにボロボロでいずれ壊れるのは目に見えてる!

 

『話すのは無駄! 殺そう!』 


「うあああ!!チキショョョョ!!!見せつけんじゃねぇ!!!」 


 教育してやったはずの獣人が反抗して立ち上がり、軽鎧のイケメンを殴ろうとする俺を横から襲って邪魔してくる。

「お前は後で教育してやるからあっち行ってろ……!」


 あとでハーレムに入れてやるために叱るように再びぶっ飛ばす。

 その後、残されたクソ野郎と美少女2人見る。



 よく見たら獣っ娘以外、同じ指輪をつけてるじゃねぇか!!

 力を手に入れてから動体視力が上がりまくったことを一番後悔したわ。


 くそ、どうする。

 どうやってこのイケメンをぶっ殺すか……。




 ——よし。




 俺は考えるのをやめた。

 力だ。

 純粋な力になればいい。

 

 ━━そう思った瞬間、突如として身体の中心から謎の力が溢れ出て来た。


 (俺のハーレムたちをクソ野郎から引き離す力を! 勇者としての俺の力を!)


 その溢れ出てきている源に自分の意識を集中して、この悪漢から美少女を取り戻すための力を強く求めていくと、そのエネルギーと自分が一体化していくのがわかった。



 ——我が力を欲する者よ、汝は……



 うるせえええ!! 俺のもん! 俺の力! お前誰だよ!


 俺の力だよ!これは!


『まずい! こいつ、魔神の魔力と同調……いや、自分のものにしてる! こんなもの、魔神以上の我欲がなければ有り得ないというのに!』


『……ブレイド、ノーリィ合同魔法技を使うわよ』


『それしかないか……!』


 突然全員が下がった後、イケメンが剣を構えながらこちらを見る。


 力が増幅した俺は、こちらを睨む軽鎧のイケメンを睨み返した。



 ——俺がその立場なのが普通だろうが! 勝手に奪いやがって! 洗脳野郎!




 すると、シスター服の美少女と魔法使いの美少女が詠唱を始める。


『私の全ては世界のために。大自然の循環を——』


『魔の深淵を覗きしノーリィがここに紡ぎ——』


 そうはさせるかよ……!


「俺が! 俺こそが! 最強! 無敵! ハーレム主人公なんだぁぁぁぁ!!」


 俺がお前の立場だ! 美少女たちが俺に敵意を抱いているのはお前が洗脳してるからだ!


 俺の真の力で、このクソ野郎の呪縛を解いてやる!  美少女たちに本当の愛を教えてやるんだ……!


 ——その瞬間、俺を中心に神々しいオーラが辺りに広がり、イケメンを避けてシスター服の美少女、魔法使い、獣人の美少女に振り注いだ。


 そのオーラに立ち向かおうとしたのか歩みを進めようとしたクソ野郎は、俺の威圧感に恐れ入ったのか進めなくなったようだ。


『なんだこの気持ちの悪い魔力の波動はは……! 体がこれ以上前に進まない……!』


 ふと、美少女たちの方を見ると膝をついて俯いているようだ。


 そうだろうそうだろう。言葉は通じずとも、この力を通して俺の偉大さが伝わったらしい。 


『頭が……割れる……!』


『わたしは、ブレイドの、ブレイドのため、に……』


『これ、は、精神に作用してる! まずい! リーシャ! みんなに解呪を早く!』


『だめ……! あの男の魔力が体に入り込んでから、理性は解呪しようと言葉を紡ごうとするのに……本能が拒否してる……!』


 なんかブツブツと喋っているが、おそらくは反省の念を言葉にしているのだろう。



「まぁ、俺は寛大だからな。きちんと土下座するなら許さんでもないぞ?」


「——■■■■■■■■■■!!!!」


『やばい! クゥが防衛本能で獣狂化してる!』



 うわ!ケモミミ美少女がくっそデカい獣になりやがった!

 

「やめろよ! 俺はケモナーじゃねぇんだよ! 元の美少女に戻れや!」




「■■■■……!■■■■……!!」


 


『ブレイド逃げて……! 私たち、今この魔神によって感情を操られてる!』


『ぐぅっ……、自分の本能に、ブレイドへの嫌悪が植え付けられて、魔神の化身に対して不自然に好意を抱いてきてる……』


『……くそ! みんなをそんなヤツの所に置いていくわけには……!』


 俺はオーラを出し続けて、致し方なく偉大さを誇示し続けていた。


 こういったマウントは、使い方を誤れば傲慢さにつながるが、この場合は必要なことだ。


 やはり、顔を赤らめてきたな。


 俯いていてもわかるぞ。鈍感系主人公ならここで気づかないだろうが、今の俺の肉体性能は爆上がりしてるからな。 


 くくっ、イケメンのやつ顔を歪めて俺を睨み見つけてやがる。ま、しょうがないか。




「ガァァァアアァァア……!」




 デカい獣が俺に向かって猛攻を仕掛けてくるが、ま、所詮は獣。


 軽く頭を抑えてやり——



「——いってえ! そこはおとなしくするところだろうが!」


「ギャウゥゥゥゥゥゥ……」


 

 生意気にも、頭を抑えた俺の腕を引っ掻き回しやがったので、思い切り蹴飛ばしてやった。


 物凄い勢いで吹き飛んでいき、視界から消える。

 ふ、ケモミミ美少女は惜しいが俺にはまだ見ぬハーレム候補が待っているんだ。

ガチ獣になって歯向かうやつならそこまで惜しくない。


 ……さて。

 いよいよメインディッシュだ。そろそろこの忌まわしいイケメンを無に帰すときだな。


 この溢れ出る力を右拳に込めて、物理的な力と共に神々しいオーラをも内包させる。


 そして思いっきり右手を振り絞り—


『……ブレイド、ごめん。もう、これしか! 私を呪ってくれていい……!』


——突然魔法使いが投げつけてきた石ごと、イケメンの肉体は塵と消えた。


 なるほど。実は、魔法使いはクソ野郎に反旗を翻す瞬間を見計らっていた……というわけだな。


 やれやれ、俺でなければ見抜けなかった所だ。まさか一瞬で人間を塵のように霧散させるアイテムを使うとは。


『あ、あ、ああ……』


『ブレイド……』


 ようやくイケメンが滅び、俺のハーレムの邪魔者が消えた所で——近くにいたシスター服の女を見る。


 服はボロボロで汚れているが、そのプラチナブロンドの髪や、サファイアの瞳の価値は落ちない。


 おそらくは王女がお忍びでシスターをやっているとかだろうな。多分夢の中で啓示とかを受けて、俺と出会うために今日この日ここでスタンバっていたんだろう。


 俺のハーレムメンバーになるような女神とかにな……。


 そんな彼女に優しく声をかけた。

 

「なぁ。悪は滅びたぜ。言葉は通じないだろうが、俺についてくれば大丈夫だ!」


 その言葉に、救われたことによる安心感があったのか、肩を下ろした後ゆっくりと立ち上がる。 


 そして、俯いた表情からようやく俺と目を合わせた彼女は——とても満面の笑みをしていた。


 その頬に涙を浮かべながら。



はい。ヒロインたちが涙ながらに洗脳されてしまいました……。

いよいよおじさんのハーレム生活が始まってしまうのか…。


次回、【洗脳解除と神ゴッド】。

ぜひご覧ください!

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