第9話 子供の介護とこだわりの店
とある美食の街でのこと。
リーシャたちも初めて来るというこの街で、女達の買い物に付き合うのも面倒だった俺は、アイコンタクトで示し合いながら誰かしら一人残ろうとする3人を追い出し、街のベンチで美少女探しをしながら待機していた。
さすがに二度手間で時間がもったいねえからな。
一人残ったら、2人が買い物終わってもその残っていたやつの買い物を待たなきゃいけなくなる。
そんなだるいことをするよりは、三人一緒に行かせてる間に新しいハーレムメンバーを探しながら暇を潰したほうがいい。
新しい女が見つからなくても時間潰しにはなるし、見つかればそのままイチャイチャすればいい。
そう思っていたんだが……。
全然琴線に触れるやつはいないな。
ハーレムメンバーの顔面偏差値が上すぎて、ピンとくるような美少女や美女が全然見つからねぇわ。
さすがに退屈になった所で、甘い物でも食べようと思い立った俺は近くにある食事処に入った。
しかし……。
この街では、どの店も一流と聞いていたのだが、少なくとも従業員の教育がなっていなかった。
食事を終えた俺がいつものように指輪を従業員に見せた後、店を出ようとすると呼び止められたのだ。
「えーと、お客様。とても見事な意匠なのはわかるのですが……。当店では指輪を翳すだけで支払いを免除していただくようなサービスは行っておりません」
「何を言っているんだ? どのお店でも——」
「——神ゴッド様!!! お待たせして本当に申し訳ないのですわ……! それと、このお店は昔ながらの、身分証明サービス実装がされていないお店です……!」
リーシャたちが勢いこんでお店に入場してきた。俺がいないのがそんなに寂しかったのか……。やれやれ、愛される男は辛いぜ。
だがまぁ何も言わずに離れた事は、ハーレムの主として少しばかり反省だな。
それにしても……。
俺は、リーシャの説明を聞いて故郷の飲食店の事を思い返していた。
うまい店ほど、こだわりが強くて最新のサービスを導入しない事は日本でも数多くあったからな。
「(これで足りる……?)」
「(え?……いえ、さすがにチップとしても貰いすぎなような……)」
「(その多めに渡した分、あの男の話に合わせてほしい。そしたら料金以上の差額は貴方のもの)」
「(え……、ありがとうございます!)」
ノーリィが何やら従業員と話をしてこちらに戻ってくる。
「どうやら店長さんと従業員で情報の行き違いがあったみたい。確認したら大丈夫だった」
「あー……はい! 情報の行き違いでお客様にご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした……!」
深々と頭を下げる店員に、俺は溜飲が下がった。
ま、許してやろう。
なにより遠くで俺を見ている美女が気になる。早く話を終わらせて迎えに行かなければ。
「やれやれ……。俺への愛しさからお店に駆け込んてきたハニーたちの愛を感じていなかったら、今頃この店は灰になってたぜ……?」
「お店が灰にならなくてよかったですわ……(この男、殺人への忌避感が無さすぎる)」
今の俺はたくさんの女たちを従える、ハーレムの主だからな。
しっかりと度量を見せて安心させてやらなくては。
「まぁせいぜい励めよ。接客業には俺のような寛容さと慈悲深さ、そして何よりも謙虚さが大事だ。この言葉は子々孫々へと伝える格言にするといい」
従業員の肩をぽんと叩きながら、キメ顔でリーシャやノーリィの方にも顔を向けてサービスしてやる。
「は、はぁ……。」
「……っ!(どの口が慈悲深いとか言ってるの……)」
ノーリィがあまりの感動で近くの椅子に座り込んで俯く。
すまないな。
◇◇◇◇◇
ああああああああああ!!!
「この!この!この!この!この!」
「あ、あの神ゴッド様。このような事は、もうおやめになられたほうが……」
「いいや、まだだ……! こいつのこと許せんよ……!」
俺史上、最も俺を辱めたガラクタを何度も足で踏み潰していた。
なんと先程の飲食店の中から見えた、影から俺を覗く豊満な女性とその影の実体は、このガラクタの集合体で出来ていたものだった。
俺はせっかくシチュエーションを考え、ハーレムに加わりやすいように温和に言葉をかけて迎え入れようとしたというのに、まさかのガラクタの山だったとは。
リーシャたち相手にとんだ恥を見せてしまった。
「くそっ! くそっ! こいつ置いたの誰だよ! ゴミを放置するなよ……!」
「…………(日頃自分の食べた残骸を投げ捨ててる人が何を言ってるんだか)」
最初に俺を制止していたリーシャも、やがて俺の尊厳がこのガラクタに汚されたことに怒りを覚えたのか、何も言わなくなった。
そうだよなぁ! ありえんよなぁ!!!
「神ゴッド様ー、貴方のハーレムに入りたいと、熱望する女性が現れましたー」
……ん?
ノーリィの声が聞こえた方に顔を向けると、そこには——
——夢のビッグマウンテンがあった。
「わたしぃー、どうしても神ゴッド様のハーレムに入りたくてぇ……。でも、世界を救う旅についていくことはできないから、この街でだけでも一緒にいたくてぇ……」
体が豊満で、少し背が小さく、なにより胸部がとてもでかい。
その豊満さが素晴らしいのだが、腹まで豊満なのはちと問題だな……。
ま、もういいや。
なんかごちゃごちゃ言っていたが、要するに俺のハーレムへと入りたいってことだろ。
「おっぱい(よし分かった。受け入れてやろう)」
「ブフッ(なに!?)」
「……え?」
俺が決め顔で受け入れの言葉をかけてやった所、リーシャが咳払いをして、話に割り込んでくる。
「えっと、お名前は何というのでしょうか……」
その豊満は、俺にどんどん近づきながら声を発した。しゃべるのか。
「テパニー……です。(この人、大丈夫ですか?)」
「(はい。基本的に、自己卑下と称賛をする言葉をかけてあげれば、勝手に自己完結したままトントン拍子に終わりますので……)」
テパニーちゃんね。
「それで、おっぱい(俺たちはそろそろ、宿で休む必要があるんじゃないだろうか……?)」
「ブフッ(真面目な顔で言うな)」
ん?
なぜか全員がフリーズしている。
俺の言葉を無視するなど、普段なら断じて許されることではないが、今は気分が高揚しているからな。
仕方がないので俺は、もう一度声をかけた。
「そろそろ、おっぱいで休む必要があるだろう?」
「は?」
「え、っと、………………少々おまちください」
なんだ?
なぜ宿に行こうという単純な話がわからないんだ。
「(えっと多分、話してる言葉とあの男が話してるつもりの言葉が乖離してると思う)」
「(私の胸ばかり見て、すごいですね彼……)」
「(何かあれば私たちもフォローしますので、気軽に声をかけてくださいね)」
「(あいつ気持ち悪い)」
そして俺は、ハーレム入りをするためかは分からないが、テパニーが使用しているであろう魅了魔法にあえて引っかかっているふりをする。
そして恥を忍んで彼女が魔法を使用しながらアピールしている胸部を見つめ続けながら宿に入り、ようやく休むことができたのだった。
ノーリィの持病、今日は一段と酷かったな……。エリクサーとか探す必要があるか……?
テパニー登場は、あまりにも執拗かつ長時間、幼稚にガラクタ粉砕して子供のようにキレてる神ゴッドを見かねて(というか恥ずかしくて)、リーシャが相手をしている間に裏でノーリィに手配しに行かせた形です。
クゥはこの件からしばらくの間、神ゴッドへの距離を取り、単独で狩りに出かけています。
不在の間ノーリィが魔法でクゥゴーレムと幻覚を併用していました。




