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第8話 都合の良い盗賊と王討伐


「(リーシャ、しずくが次で溜まりそう)」

「(なら、盗賊王は連続強盗殺人のカンダタにしましょう)」

「(ブフッ……。もう、なんで王なんて名前付けちゃったんだろう……。)」

「(諦めなさい。あの男が喜びそうなものなのは確かなのだから)」

 


◇◇◇◇◇



 俺たち救世パーティが次に向かったのは人々を苦しめる悪党が蔓延る暗黒街。

 その中でもスラムみたいな場所を裏から支配して最近急激に勢力を広げているらしい、美少女たちをコレクションする男が目的だ。 


 女をトロフィーのように集める男なんて、許せる訳がねぇよ。


 俺のハーレムメンバーがいるかもしれねぇだろが……!


 カンダタとかいうそいつは、そこそこ豪華な家に住んでいやがった。

 なんてやつだ。

 手下どもが一斉に出てきたからぶちのめしていくと、最後には親分登場でまさに格下ムーブだな。


「おいテメェら、俺が誰だか分かっているのか……?」


 その赤髪隻眼のやたらイキリ倒したおっさんが、いきなり痛いセリフを吐いてくる。


 地味に顔が整ってるのが許せんな。ネットで培った俺の弁舌で分からせてやろう。


「くくく、自分で自分の事を誰何するのは痛すぎるぞお前……!!」

「ブフッ(何あの顔……)」


 俺が煽り顔と共に言葉を吐くのに合わせて、ノーリィまでタイミング良くむせる持病が発症し、意図せず煽りのようになった。


 さすが俺のハーレムメンバーだ。

 俺は持病だと知っているが、敵からしたらただの嘲笑にしか見えんだろうからなぁ……!


「なんだその間抜け面は……?」


 ……は?

  

「貴方は世界中の処女を拉致して集めてはコレクションをする悪辣非道の盗賊王カンダタ……!」

「は?何ふざけたこと——」


 俺への侮り、数多の処女の拉致、そしてなによりコレクション!


 これはもう処刑決定だぜ!


「——うおおぉお! 世界中の美女や美少女は俺のもんだ!!! 必殺のゴッドクエイク!」

「ぐっいきなり何を……!? がはっ…………」

 

 これは俺の裁きの意思を地面に叩きつけ、その反動で地割れを起こす必殺技だ!


 ある時ノーリィが杖を振るって魔法を使っているのを見て思い付いたこの技は、アニメで見た技を再現しようとリーシャの前で試行錯誤していたのだが……。


 ある時中々上手くいかずにこの世界の不条理をリーシャに懇々と説いていたら、タイミング良くノーリィが見に来て、今なら出来るはずだと励ましを受けて実践したらできたという俺の努力の結晶だ。


 さすが俺。魔法なんて勉強しなくても神ならば独自の魔法体系を編み出してしまうというわけだ。


 それを食らったカンダタは、足元がぐらついたあと、その地割れから飛び出してきた土の柱に突き刺され死んだ。


「■■■■■……地操作…………■■■■……土槍(地面を適当に殴るのはやめろ……!私が毎回、地面が割れすぎないように調整するのはめんどくさい……!)」


 地面を殴るだけで世界の意思が応えて土の柱が出てくるという超絶技巧。

 世の魔法使いたちに申し訳ねぇな。

 これが生まれ持った才能だ。


 ノーリィはローブの中で杖を握りしめていたようだが、まぁ仕方ないか。

 自分の常識が俺の才能で上書きされてしまって、感無量なんだろう。


 やれやれ、これからも俺が守ってやらねぇといけねぇな。


 ◇◇◇◇◇ 

  

 盗賊王カンダタをぶちのめした後、俺が助けた運命のハーレムメンバーがいないか探し回っていた所、カンダタが隠していた封神のしずくをリーシャが探してくれていたらしい。


「これが封神のしずくか……」


 禍々しい紫色のクリスタルのようだ。

 どんな女神が封印されているんだろうか。


 是非ともボッキュンボンののじゃロリであってほしい。

 ただまぁ、師匠気取りのロリババァならお断りだがな……。


「リーシャ、ここに封じられている女神はどんな外見なんだ?」

「……え? えーと……。」


 リーシャが口ごもっているのを不審に思っていた所、ノーリィが前に出てきた。


「……そのしずく自体には女神は封じられていない。 しずくを集め終わった後に儀式をすると復活すると言い伝えられている。」


 ああ、なるほどな。

 お約束ってやつだ。


「言い伝えでは……。とてつもなく胸が大きくて背が小さく、従順で包容力があって、ハーレム容認してくれる女神だって聞いたことがある」


 な、なにぃぃぃ!!

 

「………………(ちょっとノーリィ! 適当に盛りすぎでしょ!)」

「(…………どこまで誤魔化せるか検証)」

「(危なすぎ…………ん?)」


「女神!! ハーレム!!! 豊満!!! うおおおおおおおお……!!!!」


 俺は風になった。


 ただ風が導くままに足を動かし、それでいながらノーリィの言葉を反復した。


 豊満で背が小さく、従順で包容力があって、何よりもハーレム容認。


 おそらくのじゃロリで傲慢系な口調でありながらもデレデレなんだろうな。


 今まで嗜んできた物語では、女神がハーレム入りするとメインヒロインみたいな扱いになる事が多かったからなぁ。

 俺は全員を平等に扱いたいんだ。


 そこにきてハーレム容認女神というのはデカいな。

 立場をわきまえてる。


「ひゃっほーーいっ!」


 街をぐるぐる走り回って俺のハーレム女神について考えていたら、衛兵に呼び止められて足止めを食らったが今日は許してやろう。


 リーシャがすぐに対処してくれたし、なにより今の俺は気分がいい。


「(あー……なんかアホらしくなってきた……)」

「(私もよ……)」


◇◇◇◇◇


 俺は、女神へ思いを馳せながら、世界を魅了するステップで街を走り回った。

 

 その道中、周りの通行人たちが笑っていたり顔を伏せたりしていたが、リーシャが言うには、俺のステップには世界を明るくする効果があったかららしい。


 ただ、不用意にその力を見せるのは良くないかもしれないと真剣な表情で俺を説得するのを見て、さすがに自重することにした。


 世界が平和になるのはいいが、明るくなりすぎるのもよくないからな。

 何より。なにも対価をもらっていないのに、俺が技術を差し出している構図が気に食わない。


「分かっていただけて、感謝いたします……」

「おう。まぁ街のやつらが俺に美女や美少女を献上するならまた考えてやらんこともない」

「あはは……(少し可哀想と思ったけど、そうでもなかったかも)」


 その後、1人目の王討伐記念ということで酒場で祝うことにしたのだが、なぜか女が少ない。


「もっとこう……美少女のグループやベテラン美女の戦闘集団がいたり、酒場の奥に舞台があって、歌姫が歌ったり踊ったりしてるのを想像してたんだが、違うのか?」

「え、えーと……。今は時間が時間ですし、たまたま不在だったのかな……と」


 たしかにそうか。

 まだ夕方だし、酒場が賑わうのは夜からだな。


「(……酒場のオーナーが移転前の店舗を格安で貸してくれて助かった……)」

「(無料でお酒を飲んでいいから、話を合わせてほしいって言ったら、クゥの故郷の獣人の人たちが快諾してくれたのも運を味方したわ)」


 ひとまず俺は、やたら臭そうな犬のおっさんがぶつかってこようとしたから、俺は毅然とした態度でスルーする。


「おっ……と、おめぇいきなりなにすんだ」

「……は?」


 なんかいきなり避けられたんだが、意味がわからないな。

 オレにぶつかってこいや。

 受けて立つってんだよ。


「は……!ほ……!……ふ!」

「な、何がしたいんだ……?」


 何だこいつ……!

 俺に因縁をふっかけて嫉妬する雑魚だろうが……!

 意味もなく避けるなや!


「(なぁ、これはどういう風に話を合わせればいいんだ……?)」

「(えっと……、あ。やってもらいたいことがあって…………これぐらいでどうでしょう?)」

「(うお、いいのか!? わかったぜ!)」


 そいつは困惑しながらリーシャに声をかけた。

 やっぱそうか……!


「お前、リーシャが余りにも美少女だから、俺から奪おうって事だろう……! だから因縁ふっかけてきたんだな!」

「あ、え、お、おう! リーシャちゃん可愛いからな! おめぇから奪ってやるよ!」

「やはりか。ゆるせ——」


 俺が必殺の右ストレートでぶっ飛ばそうとしたら、ノーリィが割って入ってきた。


「神ゴッド様、ここは祝いの席。せっかくならお酒の飲み比べで対決するのがいいかも……」


 ふむ。確かにそうか。祝いの飯がまずくなるのは嫌だし、丁度いいだろう……。

 力を手に入れる前は酒は飲めなかったが、神になった俺には酒は効かない。

 この戦い、俺が無双するのが決まっている……。

 

「そりゃいい! 俺はいくらでも相手になるぜ!」

「おお、それなら俺もだ! リーシャちゃん奪うためにな!」

「俺もさけ……じゃなくてリーシャのために!」


 なんだこいつら、酒で俺と張り合おうなんて百年はえーよ!


「いいぜ、やってやらぁ!」


 ◇◇◇◇◇


「…………」

「…………」

「……うまい、もう一杯」


 あーー、のじゃロリがいっぱいだー。ほほほ、俺のめがみー……。


「こいつ、酒一杯で沈んだぞ……?」

「手応えなさすぎだろ……」

「(クゥ、日頃の鬱憤が溜まりすぎてたのかよく飲んでるわね)」

「(あの男に最初からお酒を適当に飲ませておけば良かった……)」



神ゴッドは、酒場で不当に絡まれるシーンを無意識(というには強引すぎる行動)でやろうとした結果、『たまたま偶然、ただ歩いていただけなのに当たった』という環境にこだわりすぎて、犬獣人さんの身体能力で普通に避けられて意地になって当たり屋になろうとしてました。


全部避けられましたが。

 

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