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第2話 聖剣ラリアット

数日後、宿屋の裏庭でバイパーが、ただ、すくっと立っていた。



「剣を振る前に、まず自分の身体と相談する日が来るとはな。」



そう思いつつ、ゆっくりとからだを動かし始めた。



「若い頃は、筋肉痛など二日もあれば治っていたが・・・。」



「やはりまだ少し腰に違和感があるな。」



からだの様子を確認し、じっーと、その場で立ちすくむバイパー。すると、誰かが自分の名を呼ぶ声が聞こえた。



その声のする方向へ顔を向けると、以前、何度かパーティーを組んだことのある若い剣士・ワッツだ。バイパーと違って軽快な足取りで近づいてくる。



「バイパーさん、お久しぶりです。腰を痛めたって聞いたので、ちょっと顔を出しに来ました。」



「そうか。わざわざありがとう。ん?どうした。何やら顔がにやけているようだが・・・」



「あっ、わかります?さすがバイパーさん。」



「よし、では部屋へ戻ろう。どうやら話たいことがある様子だしな。」



「はい!」



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若い剣士は、自慢げに大事そうに持ってきた紙包みから剣を取り出した。



「見てください。伝説の聖剣ウエスタン・ラリアットです!」そう言って、剣をバイパーへ渡した。



剣を受け取り、じっと剣を見つめた。柄は魔石が散りばめられた見事な装飾。鞘から剣をそろりと抜くと、手からまるで数々の栄光を刻み込んだ重みが伝わってくるかのようだ。窓から差し込む陽の光に照らされ魔性の光を放っている。



そしてバイパーは言った



「うむ、見事な剣だ・・・。この剣、買ったのか?」



「はい、お店で剣を見ていると、店員さんに声を掛けられました。そして、買いました。」



これだけの剣、当然、値段も高いはずだ。



バイパーは剣を若者へ返しながら、「うむ、しかし高かったろう・・・。」と確認するため尋ねてみた。



「はい、でも分割で買いましたから、毎月の支払はぐっと安いので。あと、それからメンテナンスなどオプションにも入っています。なに、これくらいなら魔物退治を続けていけば払っていけます」



「んー、そうか。まあ、それならよいが・・・。」と、少し歯切れの悪い返事をしつつ、若い頃、この青年と同じように金と名声を追いかけ無理をしたため、生活が苦しくなったことを、バイパーは、ふと、思い出していた。



「しかし、怪我をして戦えなくなることもあるぞ。」



これだけの剣となると何年も支払いが続くだろう。



「計画的に買い物をしなくてはならん。魔物を倒すことだけ考えていればよい、というような、普段の生活を無視した生き方をしてはならんぞ。」



バイパーは続けた。



「剣士であれ何であれ、身の丈にあった生活を心得なくてはならん。」



「はい、大丈夫です」若い剣士は、聖剣を手に入れた嬉しさのため、話は聞こえているが、理解できていない。



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それからしばらくしたある日、若い剣士・ワッツは怪我をしてしまい、買った剣の支払いが滞る事態になってしまったのだ。予感が的中したか・・・。この話を聞いて、バイパーは、唇を噛み締めた。そして、今度はバイパーが若者の家を訪れた。



トントン。部屋をノックして「入るぞ」と声をかけると、部屋の中から「どうぞ」と若者の声が聞こえて来た。



薄暗く感じる部屋には、乾かしているのか、何枚かのシャツが窓際に吊り下げられ、そしてパンの匂いがした。



「怪我は大丈夫か?」と、ワッツに尋ねると、「バイパーさんの言う通りになってしまいました」と、ワッツは自分の未熟さを恥じて答えた。



反省している様子であることを確かめると、起きてしまったことは仕方ない。これを教訓にすればよい。バイパーはそう思い、若者に声をかけた。



「それでいったい何年間、支払うことになっている?」



「・・・10年間・・・です。」



「10年間か・・・。」若者にとっては、この上なく大切な時間。



バイパーは、これは甘やかしではないと、自分に言い聞かせて、コインの入った袋を開けて数枚取り出した。そして汗と努力で稼いだそのコインは、見た目以上に重みを醸し出すかのごとく、鈍く輝いていた。



「んー、ここは一旦、俺が立て替えておく。よいか!行き当たりばったりの生活は、以後、改めろ!」



「はい!」



今度こそ分かってくれたはずとバイパーは天井を見上げた。

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