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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第6章 囮作戦

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【6-8】慰安所 上

【第6章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/78/

挿絵(By みてみん)


 帝国暦383年5月下旬、帝国東征軍はヴァナヘイム国王都・ノーアトゥーンへ指呼しこの間まで迫っていた。


 ひと月前、ヴィムル河流域会戦で、ヴァ軍を総司令官ごと粉砕した彼らは、東都・ダンダアク主導の人事刷新(さっしん)を経るや、周辺諸城を吞み込みつつ、200キロをゆるゆると北上した。


 ヴァ軍は、敗残兵を糾合きゅうごうして、トリルハイム城を中心とした防衛線を構築しようとしていた。


 しかし、たかだか5万数千の兵力で、東西60キロにもわたる長陣など敷けるはずもない。無理に兵馬を並べたところで、紙のように薄い幕が出来上がるだけだろう。


 それらの防衛線の一部と帝国軍の先鋒が、わずかに銃火を交わした程度で、ヴィムル河での会戦以降、両軍の間には大きな衝突は生じていない。


 だが、帝国軍が大規模攻勢をかけた場合、紙の防衛線はもろくも破れ落ちるものと見られていた。


 そのため、帝国兵たちは、夏までにヴァ国の首都を落とし、()()()()()した上で帰国できると喜びあっていた。




 6月に入ると、東征軍各隊では交代で非番が定められた。


 帝国将兵は久しぶりに羽を伸ばすことができたのである。


「明日は、少佐もお休みになってください」


「……休めと言われても、こんな何もないところじゃあな」


 アシイン=ゴウラが休暇取得を勧めつつ、れたてのコーヒーを差し出すと、セラ=レイスは気乗りしない返事とともに、それを受け取った。


 直属の上長・エリウ=アトロン大佐が、父総司令宛の上申書を、所属先たる第1師団長・ゲイル=ミレド少将へ、再三提出している。


 だが、総司令部はおろか右翼を束ねる第1軍すら動く気配はない。


 帝国軍がまごついている間に、ヴァナヘイム軍は数字だけでは読めぬ、実利ある防衛体制を着々と整えているはずだった。


 ――ここで遊んでいる間も、敵は着実に守りを固めている。

 そう思うと、レイスはのんびり休もうという気分になれなかった。


 レイスは、湯気の上る軍支給のカップを脇に置くと、肩を回し凝りをほぐす。


 この紅毛の少佐の本質は、怠惰である。彼は総司令部にいた頃から、暇がなくともサボることばかりを考えていた。


 昼寝を決め込んでいたところを、副官・キイルタ=トラフに見つかり、耳を引っ張られて連れ戻されること度々であった。


 そうした様子を数え切れぬほど見てきた部下たちの眼には、難しい顔をして1日中考え込んでいる上官は、異様に映ったことだろう。


 それゆえに、休養を勧めてきたのかもしれない。



 ゴウラは周囲を見回し、アレン=カムハル少尉等後輩たちに何やら確認してからひとつうなずいた。


 そして、こちらに1歩近づくと、力強く耳打ちしてくる。

「ここから少し下ったところに、慰安所が設けられたようですよ」



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


慰安所!気になる方、是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「慰安所 下」お楽しみに。


「そうですか。でも、なぁ……」

「ええ、少佐を差し置いて……」


上官よりも先に休暇を取得することに、ゴウラのみならず、カムハルほか部下たちは、罪悪感を抱いているようだ。


――可愛いヤツらめ、たまには殊勝なことを言ってくれるではないか。

レイスは口角を少しだけ上げた。

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