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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第6章 囮作戦

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【6-2】レディ・アトロン 中

【第6章 登場人物】

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 帝国軍は、ヴァナヘイム国王都ノーアトゥーンに、あと一歩まで迫っていた。


 戦況がいかに帝国側有利になろうと、エリウ=アトロン麾下の第3連隊は、敵の情報収集から、自軍への武器弾薬の調達、そして兵馬の調練まで、部隊としての活動を一切怠っていない。


 参謀部を解任されたあと、しばらく怠惰を決め込もうとしていたセラ=レイスは、その甘い目論見を突き崩された。


 レディ・アトロンは、レイスの識見を認めるや、自らの連隊における参謀役就任を申し付けたのである。


 それだけでなく、砲撃訓練指南役を命じたほか、斥候隊の差配も任せるまでになっている。


「これじゃあ、総司令部勤めの方が、いくぶんか楽だったんじゃないか」


「……」


 女王様の横暴だ、などと()()()上官のデスクに、副官キイルタ=トラフは無言で敵情報告書の束を積み上げた。




 5月初旬に、ヴァナヘイム軍において新総司令官が選任されたことは、王都に潜ませている密偵はもちろんのこと、新聞各社の報道により帝国東征軍も知ることになった。


 しかしその頃、東征軍においては、ヴィムル河流域会戦における事情聴取を皮切りとした、ターン=ブリクリウ大将による懲罰人事が始まりつつあった。


 ここにいたって帝国軍の勝利は疑いようもなく、3度目だか4度目の敵司令官交代など、東征軍総司令部では取るに足らぬ情報として聞き流されるだけだった。



 ヴァ軍の総司令官交代について、当初はセラ=レイスもその情報を重視したわけではなかった。


 新任司令官が、30代半ばという若すぎる年齢であることを知り、この長身の青年将校は、紅い首をひねった程度である。


 ところが、しばらくして、ヴァナヘイム国側の布陣が劇的に改善されつつあることに、最初に気がついたのも、この紅毛の青年将校であった。


 レイス一党に斥候隊を任せた、レディ・アトロンの先見の明と言えよう。



***



 5月24日、ヴァ軍の一部を見渡すことのできる丘陵の頂きに登り、その布陣を遠望したレイスと彼の部下たちは、思わずうなった。


 目の前では、敵兵力の再配置がなされようとしている。地形を最大限利用して――。


「見事なものだ。各部隊の構えがみな理にかなっている」


「あのように守られては、さしもの帝国軍も、これまでのような『鎧袖一触がいしゅういっしょく』というわけにはいかなくなるでしょうか」


 レイスは馬上のまま望遠鏡をトラフに投げ返すと、急ぎ丘を駆け下った。


 一行は、自陣には戻らず、さらに馬を走らせると、隣の丘上に翻る「黒コガネ」の旗印を目指した。


 レディ・アトロンの愛称で将兵から親しまれているエリウ=アトロンの陣営である。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


レイスはレディ・アトロンに気に入られて大変だな、と思われた方、

ヴァナヘイム軍の新総司令官のことは知っているよ、と思われた方、


是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「レディ・アトロン 下」お楽しみに。


この時、レディ・アトロンは椅子にどかりと腰を下ろしたまま、鞘に収まったサーベルを膝間の地面に突き立てていた。


紅毛の部下が馬を疾駆させ飛び込んできても、振り返らずに力強い声だけを発した。

「演習中だ。後にしろ」


配下の部隊が気を緩めぬよう、今日もはげしい訓練を課していたのだろうか――。

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