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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第4章 若き総司令

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【4-18】裸踊り ④

【第4章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/32/

挿絵(By みてみん)



 雲が流れ、太陽が姿をさらした。


 アルベルト=ミーミル大将は、からからとした笑いを止め、飲料水用の樽から手を離す。


 うつむくアルヴァ=オーズ中将の肩や背中を、やや重い陽光が照らした。ついこの間まで雪雲で空が閉ざされていたとは思えない日差しである。


 両目を細めたミーミルは、つくづく思う。人間の争いなど構わず、季節は確実に移ろいゆくのだ。


「首都ノーアトゥーンまでの最後の砦となるトリルハイム城前面はもちろん、その両翼には、二重三重、いや、四重五重の防御線を敷き終えた。帝国がいかに大軍をもってしても、この壁を突破することは簡単ではないはずだ」


 ミーミルは、()()を指さして言葉を継ぐ。


「帝国の大軍が、トリルハイム城を避け、背後の王都をこうとする場合、この山の足元を通らねばならない」


 ここで、猛将が地形を認識するのを待つかのように、ミーミルは間を置いた。



 この地は、実に複雑な形状をしている。


 南側から広がってきたイエロヴェリル平原は、ここで突如、小高い山々に遮られる。それはまるで、北上してくる帝国軍の前に立ちはだかる壁のようであった。


 それら山々の中腹、オーズ中将の司令部あたりまでは、人馬の往来が可能な傾斜であるが、そこから先は頂にかけて険しい地形となっていた。


 さらに、多くの山間やまあいを縫うようにして、急峻な川がいくつも流れている。これらの浸食によって形成された峡谷きょうこく群が、山々をふちどっていた。


 住民たちは支流の川の名前から、この地をケルムト渓谷と呼んでいる。


 ケルムト渓谷は、左右に――東西に――入り組んだ複雑な崖になっており、ミーミルやオーズたちのいる山の中腹からは、()()を流れる川の音が響いてくるものの、その全貌をうかがうことはできない。


 山々の合間を流れる複数の川は、南に下るにつれて少しずつ合流をはじめていき、トリルハイム城塞近くで1本の河となり、ヴィムル河として平原に続いている。



 すなわち、山々に降りそそぎ、流れ出た雨水・雪解け水によって生み出された巨大な扇状地――それが、南方に広がるイエロヴェリル平原なのだ。


 平原を北上してきた帝国軍が、トリルハイム城を迂回し、ノーアトゥーンを目指すには、山(すそ)を通ることになる。


「つまり、ここを通過するには、帝国の大軍も谷間に沿って細い線にならざるをえないだろう。少ない兵力の我々でも()()を押さえれば、充分に防ぐことができる。それに……」


 ミーミルは視線を渓谷から猛将に移し、説明を続ける。


 これほど複雑な渓谷である。「天然の塹壕ざんごう」と称しても差し支えあるまい。そこへ敵がいくら砲弾撃ち込んできたとしても、大した効果は上げられないだろう。


 何より、()()にはあのとおり川も流れていて、水の確保も容易だ。



「……」

 オーズは、その気性こそ荒いものの、根は純粋な男である。総司令官による地理の講義を、黙然と聞き入っていた。


 ミーミルは、再び視線を南方の戦場に戻した。

「分かってくれたなら、ダリアン准将の兵をすぐに引き揚げさせ、皆で()()を固めてくれ」


「……」

 猛将は、すっかり下を向いてしまった。そして、総司令官からの命令に従うような素振りを見せたときだった。


 オーズの脇に立つフィリップ=ブリリオート少将が、即座にはがえんじない旨の発言を始めたのである。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


オーズを言い負かしたら、今度はブリリオートかよと、げんなりされた方は、


是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「裸踊り ⑤」お楽しみに。

宴会芸のようなタイトルも次回が最後になるとともに、この第4章も終幕を迎えます。


「オーズ中将、ダリアン准将へ向けて撤退命令を出したまえ」


狂奔する馬、勢いよく馬上から地面へ投げ出される兵、急停止しようとして馬から落ち、後方からきた味方騎兵に踏みつぶされる下士官――。

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