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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特殊研究員になる
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その娘、従兄と話す2


結婚するつもりがあるのか、婚約者として正式に発表するのか。など、その他にも細々とした設定を決めると、ドアの向こうからこちらに歩いてくる人の気配を察知した。


魔力量や、波形、時間を考えれば該当する人物は一人である。



「室長がお戻りよ。」


「分かった。では、設定通りに。いいな?」


コクリと頷けばクロヴィスは満足げに笑って見せた。


正直、人の機微を感じ取ることに長けた室長を騙し通す事が出来るとは思えない。それでも、完全に向こうも否定しきれない話しではある。そこを逆手にとってクロヴィスと話しを合わせれば、勝機はある。


何せこちらにはあのクロヴィス・カエサルがついているのだ。無敵の彼に敵うものは少ない。



ガチャリと戸が開けば、サウスライドが中へと入りクロヴィスへ遅れたことへの謝罪を行った。

どうやら研究室の誰かが先に室長に報告していたらしい。


この研究室へ入るための入り口はここの扉を覗いて後3つある。来客時は扉に「来客中」の掛札をし、他の入り口から入るため研究員達も別の扉から仕事場へ向っている。

室長もそちらから来るものだと思っていたルディリアだったが、堂々と正面から来た彼を見て小首を傾げた。


遅れた事を堂々と話す事にも小さな違和感を覚えつつ、ルディリアは席をたつ。未だ出してすらいなかったお茶とお茶菓子を出す為である。


「お待たせ致しました」とお茶を机に置けば、クロヴィスがソファの隣をポンポンと叩く。座れといいたいのだろう。ちらりと室長へと目を向ければ、小さく頷いた。どうやら事情は理解しているらしい。


「さて、お忙しい様ですのでさっさと本題に入りましょうか。」


クロヴィスが嫌味なくらい良い笑顔でそう告げれば、サウスライドもまた笑んで「是非。」と続けた。


確かに今日は国王陛下への謁見のため、仕事は進んでいないが忙しいと言うほどでもないような気がする、と内心零しながらもそれを口にしなかった。



「本日サウスライド・アルンベルン次期公爵にご挨拶に伺ったのはほかでも無い、私のルディが日々お世話になっている件で御礼申し上げたく足を運ばせて頂いた次第です。」


「そうですか、しかし礼には及びません。彼女は私の弟子としてここで働いてくれている。私は師として当然のことを行ったまで。しかし、態々遠い領地からここまでご足労頂きましたことについては、こちらからも感謝致します。一度きちんとお話すべきと思って居りましたので。」


ピリピリとした空気が張り詰め、ルディリアは居心地の悪さを感じながら二人の会話を聞いていた。嫌味の応酬にルディリアは小さくため息をついた。まるで嫁と姑に挟まれた夫のような立場である。


三大公爵家の次期当主同士の会話はやはりと言うべきか、敵意むき出しである。

そうだと分かるのは、ルディリアが多少社交に慣れてきたためだろうか。笑顔の下で彼らが何を考え発言しているのか理解出来るからこそ身が縮こまる思いだ。


ある程度勢いが収まった頃合いを見て、ルディリアはクロヴィスの裾を引く。


「クロゥ。」

窘めるように声をかければ、仕方無いとばかりの顔を向けた。


その何の気ないやり取りに、サウスライドは小さく目を瞠る。聞いていたよりも親しいらしい。そう考えて表情を隠す。


それを横目でしっかり確認していたクロヴィスは口の端が持ち上がらない様に務めるが、上がったとしても向けている相手はルディリアである。基本冷めた表情をしているクロヴィスがルディリアに笑いかけると言うのもまた意表を突かせるのにも良いかと思うが、やはり使い所は他にあるだろうと冷静に対処する。



「分かっている。」


穏やかな声色と表情を向ければ、ルディリアはやっと安堵する事ができた。どうやら漸く本題に入ってくれるらしい。


「実は今月末にある夜会までの間、ルディリアをお借りしたい。夜会までの間、仕事は午前中のみのとして貰えないだろうか。」


「ほう、それはまた何故かな?」


「暫く離れていたとは言え、彼女とは昔から親しくてね。こちらにいる間はできる限り彼女と共に過ごしたいと思っている。夜会までは我が邸に滞在して貰うつもりだ。」


「それは聞いていない!」と非難の目を向けたくとも、少しでもその気配を見せれば室長はここぞとばかりに責めてくるだろう。それを躱す術をルディリアは持ち合わせていない。


仕方無く、微笑んで躱してみせればクロヴィスが満足げに頷いた。



「そうか、構わないよ?そう言えばルディリアは前回の報奨である休暇も今回の休暇もまだ取得していなかったんじゃないかな?まとめてとっても構わないよ?」


確かに、取っていない。休暇明けが怖いことになっていそうだから次期を見てちょこちょこ頂こうと思っていたのだ。それを、まさか室長の方から休んでも良いと言われるとは思わず「いいんですか!?」と少し口調が強くなってしまったのは仕方が無いと思う。


「勿論だよ?」とニコリといつもの笑顔をくれる室長を見て、暫し考える。


夜会までとなれば今日からとしても十五日といったところである。その位であれば少し仕事を休んでも研究室の仕事は回るだろうか?いや、しかし年末に近づいて確かに仕事の量は増えているし来期分の予算案なども出さなければならない。


「ですが、お仕事大丈夫でしょうか…。」


困った様にそう言えば、室長は「問題ない」と断言する。本当に問題ないのだろうか。そう思いつつ、去年までは自分がいなくともこの研究室は回っていたのだと思えば、信じるほかない。


「分かりました。では、夜会までの間よろしくお願い致します。」


頭を下げれば、「ゆっくり休みなさい」と穏やかな声が帰ってきた。安堵してクロヴィスを見上げれば、ちょっとばかり面白くなさそうな表情でこちらを見ている。


「クロゥ」


窘めるつもりで呼べば、むすりとした表情で「分かってる」と低い声が返ってきた。室長が拒否すれば色々と難癖を付ける準備でもしていたのだろう。しかし、それを上回る提案で返されれば文句も付けられない。それが面白くないのだろう。


全く、大人なのか子供なのか分からない。と、クロヴィスを見上げれば「随分仲が良いようだな?」とふて腐れた声が降ってくる。

どうやら室長との関係性が深いことが気に入らなかったらしい。


「いつもお世話になってるからね。」


「そうか。」


笑んで答えれば、穏やかな表情が返ってきた。クロヴィスもこの場がルディリアにとって良い居場所なのだと理解したらしい。


「さて、それでは明日から休むとして。ルディ、今日から我が邸にくるだろう?」


「…クロゥ、貴方がここに来ていること、勿論お父様もお兄様達も承知なのよね?」


「さてな。アルが上手いことやっているんじゃないか?ルディ、カエサル家の邸にいるからと慌てるようなことではないだろう?」


どうやら何もしていないらしい。アルフォンスだけに伝えて自由奔放にここへ来たのだろう事はすぐに理解出来た。はぁっと思いため息をつき、もうどうでもいいとばかりに目をそらした。


「おや、それは問題あるんじゃないかい?」


そう味方してくれたのは室長である。

騙そうとしている人に味方されて申し訳無く思いながらも、その言葉に感謝する。


室長の言葉に、クロヴィスが面倒そうに「何故か。」と言葉を投げた。


「未婚の女性を邸に留めると言うことがどういうことか分からない事もないだろう?」


「そうではない。君が、何故私的なことに口を出す?師とはそこまでお節介なものだったか?」


からかう様な口ぶりで室長に嘲笑を送るクロヴィスの袖をグイッと引っ張ると、笑顔で黙殺する。もう面倒事はよしてくれ。と言わんばかりの笑みに、クロヴィスも「分かった、分かった」とルディリアの頭を撫でる。


「室長、申し訳ありません。彼も悪い人ではないのです。」


しゅんと眉を下げれば、室長は苦笑して「構わないよ?」と笑みを返した。大人な対応にほっと息をつけば、クロヴィスを見上げる。


「取敢えず、アル兄様に全て任せるのは止めて。アル兄様が倒れてしまうわ。お父様とお兄様には私から話しをしておくから。」


「いや、その必要はない。今日俺がここにいることはもう知っているだろうからな。そうなればあいつらはまず何をすると思う?」


クロヴィスが城にいると知って、お父様とお兄様達が最初にする行動。まずは、家族に連絡する。その後、クロヴィスが何をしでかしたか、何の用で敵地に赴いたのか考えて…。


「あ…、私?」


「それ以外にあるか?」


今回このタイミングと言うことは完全に理由はルディリアに違いないと見当を付けた我が家族はルディリアに接触していると考えるだろう。となると、もしかして。


「え、お兄様たちここへ乗り込んで来ない…よね?」


「来るだろう。当然。」


しれっと返して紅茶に口を付けるクロヴィス目がけて風魔法を放てば、また片手で止められる。「その癖なおらないよな」と暢気な事を言うものだからルディリアは小さく頭を抱えた。


「室長、大変申し訳ないのですが本日はもうこの辺りで上がらせて貰えますか。このままここにいては続々とヒースロッド家の者が現われて仕事にならなくなると思いますので。」


「そうか、分かった。構わないよ?君は夜会までの間にゆっくりと身体と心を休めなさい。そしてじっくり自分の事を考える時間に充てたら良い。」


「室長…。有り難う存じます。」


座ったまま正式に頭を下げれば、室長の穏やかな声が続く。


「言ったろう?弟子には甘いと。君にもあの子にも、同じように幸せになって欲しいと、私は心から思っているよ。君が何処へ行きたいのかは知っている。そこへ行く手段としてどんな方法をとろうとも出来うる限りで応援するつもりさ。しかし、善し悪しに限度はある。弁えた行動を取りなさい。いいね?」


「はい。」


穏やかに諭され、胸に込み上げた暖かなものを胸にしまいルディリアはサウスライドに微笑んだ。



次話、28日に投稿予定です。

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