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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特殊研究員になる
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その娘、友人2

次話、6日に投稿予定。


「王太子妃の筆頭って誰になるの?」


こちらへの興味をはずそうとキャサリンに問えば、少し悩みながら指を一本ずつ立てていく。


「そうねぇ。まずは、エリーナ様でしょうね。」


エリーナ・カエサル。

カエサル公爵家のご息女であり、真に王家の血を引く令嬢だ。カエサル家は、初代国王チャールズの二番目の王子カール王女ジゼルの血を引いている。


カール王子の孫がジゼル王女の孫と縁を結び、現カエサル家当主――ソウドルフが生まれた。そしてその夫人であるイーダはジゼル王女の玄孫である。エリーナはその二人の子供だ。正当な血筋である彼女が候補に挙がるのは妥当である。


しかし、現カエサル家当主は王族と折り合いが悪い。それどころか、王の首を取らんとする程の野心家である。その息子であるクロヴィスは真っ当な人物なのだが、現当主がその席に居座っている現状をみるに、かなり厳しいだろう。


「血筋で言えば確かに、彼女以上の人はいないでしょうね。でも私としては、エリーナ様の従姉妹であるオーダ様が筆頭だと思っているわ。」


オーダ・ザクセン。

ザクセン辺境伯家のご息女。現当主であるブルーノ辺境伯は国王陛下とも幼い頃から仲が良いと聞く。その息子であるソウドルフも人柄が良く、民を思う心を持つ武人だと聞いたことがある。オーダ令嬢も心優しく、温厚な方だ。そう考えれば彼女が筆頭と言割れるのも頷ける。


「オーダ令嬢には何度かお会いしたことがある。とても優しい方だった。民の為に身を削ることが出来る女性なの。」


「同じ辺境伯令嬢として、ルディリアも一目置いているってわけね?」


ふふっと笑われて、苦笑を零す。そういう意味で言ったわけではなかったが、確かに自分とは正反対の女性らしい方だった。穏やかに笑む姿は儚げに見えて、茶会をそつなく熟すその手腕に感心した記憶もある。


「そうね。他には誰がいるの?」


ルディリアはこれ以上の深掘りを避けるようにキャサリンへ話しの続きを促す。掘り下げられて困るような話しがある訳ではないが、これ以上話せる内容もない。


「あとはやっぱりあの方ではない?現宰相の娘であるガブリエラ様。」


ルディリアは「あぁ…。」と、小さく零せば嫌な記憶が蘇る。


幼い頃に何度か足を運んだ王宮の茶会で目にした彼女は、いつも自信満々で、他の者を下に見る所があった。高飛車で勝ち気な性格だ。


公爵令嬢である彼女に睨まれるのを恐れて、茶会へ参加する人数は次第に減っていった。ルディリアはそれに便乗して茶会に行くのを止めたのだったなと思い出す。ルディリアにとっては、逃げるきっかけを与えてくれた人物ではあるのだが、当時はそう考えることが出来ないくらい酷い状況だった。


「性格からしてなさそう。」


この数年であの性格が変わっているか怪しい。今でもたまに彼女の噂を耳にすることがあるが、いい話が回ってこない辺り、その性格が矯正されることなく自由に過ごして来たのだろう。


「そうね。権力でどうこうなるものであれば或は…。というところかもね。」


キャサリンもまた何か思うところがあるのだろう、笑んだその表情からは苦いものが窺える。恐らく、あの令嬢と関わってきた者は同じ様な意見を口にするのではないだろうか。そう思えて仕方のないルディリアは他に候補がいないか考える。


「あとは、副長のご息女とか?一応公爵令嬢だし。」


「年が離れすぎているわ。長いこと決めてこなかったことだから、殿下と歳が近い女性が選ばれるはずよ。副長のご息女はまだ八歳よ?」


「確かに」と零しながら、数本上げた指を戻していく。他にも何名か上げようとしていたのだが、キャサリンの指摘を受ければ数人が外れてしまう。そんな様子を隣で見ていたキャサリンが呆れた様に指差す。


「筆頭とは言わずとも、かなりいい位置にいる事忘れてないわよね?」


クリーム色の瞳を細めじっとルディリアを見つめる彼女に、眉を下げる。それを回避する為に聞いているというのに、そう言われても困ってしまう。


「嫌…。」


「嫌って、貴女ね。今一番の注目株が何言っているのよ。」


嫌なものは嫌なのだから仕方無いじゃないか。そう思いながら、唇を尖らせる。


自由に魔法の研究をしていたい。そう思ってここまで生きてきた。今更国母になれと言われて、教養の勉強をしたいとも思わないし、そもそも自分に向いていないことは理解している。


だからきっと国王陛下も諦めて下さったのだ。と、自分本位な考えをするが、きっと実際はそうでないとも理解していた。


現状、古代魔法について触れることが許されている人物が少なく、研究に当たれる者は更に限られる。研究をする為には王都から離れ、現場に赴ける者でならなければいけない。そう考えると、王太子妃との両立は難しいだろう。


アルンベルン公爵家の兄弟とヒースロッド家はルディリアを王太子妃に望まない。その姿勢が崩れることのない現状、陛下は殿下を諦めさせたいに違いない。


「大魔法使いになるのが、昔からの夢なの。」


小さく零した願望に、キャサリンは口を噤む。


ルディリアの実力や努力を近くで見てきたからこそ、応援したい気持ちは高い。それでも、男性社会であるこの世界で、本当に女性が大魔法使いになれるのか。なれたとして、そこに伴う苦行は計り知れない。そう考えれば安易に応援することも出来なくて、黙る選択を選ばざるを得なかった。


「その為に、出来る事全部するつもりなの。諦め切れそうにないから…。」


「…そう。それなら、王太子妃になっている場合ではないわね。」


じっとルディを見ていたキャサリンは優しく微笑む。まさか応援してくれるとは思わずルディリアは目を瞠った。しかしすぐに笑みを向け直す。


応援の意を示す彼女に素顔を隠すなんてことが出来なくて、ありのままを見せることにした。どうせ今ここには彼女しかしないのだから。それに、マリアナやキャサリンと共にいるときは割と頬が緩むことが多い。無表情である自分にここまで笑いかけてくれる女性も珍しく、本心で友達になりたいと思った。


「貴女の夢を応援するわ。友達だもの。」


嬉しげな声色と共に、屈託ない笑みを向けられ、じわりと涙腺が緩む。それでも、表情は歪まず、頬が緩み口角が上がる。不思議な感覚に戸惑いはすれど、嫌ではない。心温かく、どこかスッキリした感覚は初めての事だった。


「ありがとう。」


笑顔を向ければ、キャサリンもまた嬉しそうに笑みを返してくれる。父や兄達に禁じられてから律してきた心は、緩めばどんどん感情が溢れてきて止めようがない。本当は家族以外にもこうして素顔を見せたかったのかもしれないと、ようやく気がついた。


「何言っているの、当たり前のことでしょう。さて、ここまで話したのだから、きっちり対策を立てなくちゃね?」


お茶目に片目を閉じたキャサリンは、どこか心強く見えた。



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