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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特殊研究員になる
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その娘、友人

続きます。(明日投稿予定。)


翌朝、ルディリアが目を覚ますとまだ外は薄暗く、普段より早く目が覚めてしまった事に気がつく。

島での生活の最後が忙しなかった為か、魔力過小で休みすぎたせいかは分からないが、どうせならば部屋の片付けや湯浴みをしてしまおうと、早い内から動き出した。


圧縮魔法がかけられた二つの袋の内、一方を手元に引っ張ると中を漁る。この袋の中にはルディリアが島で生活しているときに使用していた服やタオルなどの生活必需品が入っている。清潔に保てるように工夫をしていたが、やはり城に戻ったのだから全て洗濯してしまいたい。


ルディリアは、洗濯物を持って部屋を出ると洗濯室へと足を運んだ。基本、洗濯室にいる侍女へ託せばその日中に部屋に戻してくれる。しかし、朝早すぎた為か一人も見当たらず、仕方が無いとルディリアは桶に水を汲み、洗濯用の液を入れてゴシゴシと摺り合わせる。


何枚もの衣類を全て行うのも面倒だと、少し悩んだルディリアが閃いたのは、丸ごと洗う魔法である。


一つの魔法ではなく、水魔法を球体状に空中に持ち上げると、その中に衣類を入れていく。そこへ液を漬け置きしていた衣類を投入すると、ぐるぐると掻き回しはじめた。


器用に魔法を操作している為か、水も液も辺りに散らばることなく水球の中に収まっている。一方への回転では上手くすり合わない衣類を見て、色んな角度にぐるぐるかき混ぜれば、水が濁りはじめた。


満足げに頷いたルディリアが一度水を捨てて、衣類を桶の中に戻す。そしてまた綺麗な水を円形状に形成すると、液が衣類から綺麗に除けるまでそれを続けた。


ピカピカになった衣類を見て口元を緩めると、今度は風と火の魔法を駆使して衣類を乾かす。

器用に操作すれば、持ってきたときよりも随分と心地よい白さが戻った。それを抱えて部屋へ戻りクローゼットにしまい込む。


ぐっと背伸びをして、腕と腰を大きく逸らせば心地よい風が窓から吹き込み、大きく息を吸い込んだ。


「凄くいい朝。」


気分のいい内に湯浴みをしてしまおうと部屋を出て、マリアナの魔道具の事を思い出した。いつもの実験場へと足を運び、カラカラと軽快な音を立てて中を覗く。人の姿はない。どうやら使えそうだと、扉の前に「使用中」の掛札を付けて中へ進むと綺麗に整備された状態の木箱が目に入った。


満足げに頷いたルディリアが手を合わせて「お借りします」と口角を上げれば、自らの魔法でそこへお湯を流し込む。


魔道具と違って湯を満たしている間に身体を洗うことが出来ない点は不便だが、服を着たまま行っている為寒さは感じない。


島にいる間、ただの湯浴みだけでは身体が凍えてしまい寝付くことも出来なかった。マリアナに新しい湯浴みの方法を教えてもらっていて良かったと何度も思った程だ。しかし、やはり外にある泉の隣で湯に浸かるよりも、こうして室内に完備されている場所で過ごすほうが何倍も気楽だ。帰ったらまずここで湯に浸かろうと考えていたため、入る前からワクワクしていた。


湯を張った所に光魔法で浄化の効果を加え脱衣所へ戻ると、外から聞き覚えのある声が聞こえてきた。戸を開けその人物を確認すればやはりキャサリンである。


「ルディリア…戻っていたのね!」


「昨日の夜にね。キャサリンも湯浴み?」


「えぇ、お邪魔してもいいかしら?」


「勿論」と歓迎して中へ招き入れる。彼女はマリアナから魔道具を借りてきているのだろうか。不思議に思い尋ねれば、そんなこともないらしい。困った様に笑う彼女は一か八かでここへきたのだと言う。


「ルディリアがいてくれて良かった。あ、でもこっちは持ってきているわよ」


可愛らしく笑うキャサリンの手元にはローズオイルと書かれた小瓶。久しぶりのその香りにルディリアが目を細めれば、二人はいそいそと準備をしてゆっくり湯に浸かった。


「ほんと気持ちいいわ。この季節にぴったりよね。」


「島生活でも簡易のお風呂を作って入っていたけど、この組み合わせには敵わないかな。」


ルディリアの言葉にキャサリンは羨ましそうにこちらを見る。首を傾げれば困った様に笑って湯に目を戻した。


「ルディリアは魔法で作れちゃうからいいわよね。マリアナ、早く魔道具完成させてくれないかしら。…試作品でいいから欲しいわ。」


恨めしそうにそう呟くキャサリンをみて、ルディリアは頬が緩みそうになる。平和な日常に返ってきたのだという安堵感と、気さくな彼女との会話に心が温まる気がした。


「ねぇ、島ではどんな風に過ごしていたの?あのイクリス・ニュクス様と一緒だったのでしょう?」


貴族令嬢らしく、そういう話題に目を輝かせるキャサリンに呆れた様に小さく息をついて、否定する。


「イクリス隊長と何かあるわけないでしょう?」


「後からクラウスト・アルンベルン様もそっちに向ったって聞いたけどー?」


どこから聞いたのか、と問いたくなる情報に苦笑を零しそうになる。流石貴族令嬢。そういったことには敏感らしい。注目される側にとっては迷惑極まりない話しだろうが、どこからか漏れるらしい。呆れた目を向けつつ、冷静に答える。


「確かにお見えになったけど、大忙しで本当に大変だった。古代魔法の研究とか解析とかだけならとても楽しかったのでしょうけど、それだけじゃなかったから気が休まることなく日夜働き続けていたんだから。」


遠い目で空を見つめるルディリアに、キャサリンは苦笑を零す。自分ではできそうもない事でも、ルディリアならばやってのけると知っているからこそ、肩を叩いて労いの言葉をかけた。


「お疲れ様。未開発の地でルディリアがそう零すくらい大変な事態になっているのであれば、クラウスト・アルンベルン様が向われるのにも頷けるわね。」


そう言われて、ふと思い出した。こちらが要請したとはいえ、騎士団長自ら来る事になった理由について明確に聞いていなかった。

クラウストは二小隊を連れて島へ来たらしい。しかし、それくらいの人数の派遣であれば隊長位か、副隊長位の人でも良かった筈なのに、何故彼が?


「キャサリンは、なんでアルンベルン騎士団長が派遣されることになったのか知っている?」


「んー、何故かは知らないけど自ら志願されたらしいという事は聞いたわよ。何でもご友人である王太子殿下の元に赴き、話しをされたのだとか。…まぁ事実かどうかは分からないけどね。」


クラウストが自ら志願したというよりは、エルスベルトがこちらに向わせたという説の方が濃厚そうではある。しかし、真相は分からない。ただ、クラウストの話しでは、エルスベルトは不満げだったらしいから、やはりその節が濃厚かもしれない。


「そう、そう言えばキャサリンは年の瀬にある夜会、どうするの?」


「あら?ルディリアが夜会のことを気にするなんて珍しいわね。」


長い睫毛を瞬かせ、クリーム色の瞳を輝かせながらこちらに視線を送る。


普段からそういったものに参加しないルディリアから夜会の話しが出たことが珍しく、気になっているのだろう。とはいえ、年の瀬の夜会はほぼ全ての貴族が集まる。強制参加と言っても良いほどの行事である。面倒に思うルディリアが話題に出してもそれほど驚かれることでもないと思うのだが、何処が彼女の興味を引いたのだろうか。内心そう考えながらも、努めて冷静に話を進めた。


「私、ドレスの事とか流行ものとか、疎いから…。」


加えて言えば派閥間の構図といったものも、さっぱり頭に入っていない。こういう機会でもなければ気になることもない為、一生知らずに終えてしまうだろう。しかし、こういう立場になった以上、知りませんでは通らない。後で講師や兄達に聞いておかなければとは思いつつ仕事で後回しにしてしまっている現状、実はとてもいい機会なのかもしれない。


「あぁ、そうね。流行ね。それは後でちゃんと教えてあげるわ。それよりも、気になるのは王太子殿下の妃候補選定の話しじゃなくって?」


にこりと綺麗な笑みを浮かべながら話すキャサリンに、今度はルディリアが長い睫毛を瞬かせる事となった。そんな様子を見て、キャサリンは呆れた視線を投げた。まさかそんな話しになっているとは思いもしなかったルディリアはそっと目を逸らすと、天を仰ぐ。


「まさか、知らなかったの?」


「逆に言えば、私が知っていると思った?」


ここ数日は仕事で島に行っていたのだ、そしてその前はガーデンパーティから逃げる事に頭がいっぱいで正直他のことには感心がなかった。そうでなくとも、そういったことには疎いというのに。


「そういえば、そうよね。それじゃ本当にドレスや、流行のことで悩んでいたのね。」


実際は、確かに王太子殿下の動向や、貴族間のあれやこれやの話しが聞きたかったのだが、そういうことにしておいた方がいいだろうと、小さく頷いて見せた。すると、隠すこともなく大きなため息をついたキャサリンは、ルディリアの顔に指を近づける。


「いい?貴女は出席できなかったけど、ガーデンパーティで発表があったのよ。来年の春までに王太子妃を正式に決めると。となれば、年の瀬の夜会で目星を付けて、年始のパーティで選定を行うのは当然の流れでしょう?」


「それを発表したのは、もしかしなくても国王陛下だったり…?」


ルディリアの発言に驚いた様子を見せたキャサリンは、くい気味にこちらに顔を近づけた。そして「えぇ、そうよ。」と小さく零すと首を傾げる。


王太子殿下主催のガーデンパーティで陛下が王太子妃選定の話しをなされたと言うことは、やはりそういうことだ。陛下は自身を王太子妃として支持する気はないらしい。となると、現状何もしないことが一番良さそうだ。しかし、このまま彼が何もしないとも思えない。二、三、手を打っておくべきだろう。


「どうして分かったのかしら?」


キャサリンの疑問に、ルディリアの言葉が詰まる。正直話せる内容がない。しかし、彼女も数ヶ月の前のパーティで王太子殿下がルディリアに話しかけている所を目撃しているはずだ。内容を聞かれてはいないだろうが、それも相まって興味心を掻き立てているのかもしれない。


「ラーディウスお兄様のご友人だから。」


ある意味間違いではない回答をすれば、キャサリンも納得せざるを得ない。そこからルディリアが王太子妃候補の筆頭として名が上がっていたと推測される恐れはあるが、ガーデンパーティに出席しなかった件や、先程の選定の話しを知らなかった事が幸いして、言い逃れることは可能だ。


「あぁ、貴族院時代からのご友人なのね。」


やはりそうなのかとキラキラした瞳を向けてくるが、それをルディリアに伝えたのは兄、ラーディウスではなく王太子殿下の方である。間違いではないらしいから、問題は無いだろうが冷や汗が流れそうになった。


いつもありがとうございます!

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