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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特務隊長補佐になる
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その娘、封印2


「ルディリア嬢、そろそろだ。」


時間いっぱいまで資料を読み込んでいたが、大した成果もなく、テントの外からイクリスの声が聞こえて来た。


ルディリアは返事をすると、必要なものを鞄に詰め込みテントを出る。外に出れば、随分と日が傾き太陽は今にも沈みそうである。


もうすぐ儀式が終わる。魔法石を奉納する為に、ベフィモスに封印の魔法をかけなければならない。ぎゅっと拳を握りしめると、イクリスに目を向けた。彼の表情は至って普通である。ただ、彼の黒い瞳だけが心配そうな色を見せていた。心配はいらないと、ルディリアは頷いてみれば少しだけそれが和らいだような気がした。


「行こう。」


彼がエルムポース島まで案内してくれるらしい。「はい」と返せば、現在の状況を教えてくれた。


クラウストは既にエルムポース島へ行き、祭壇の場所を探しているらしい。しかし、未だその場所が正確に分かっていない。となれば、やはり幻術や認識阻害または、遮断の魔法がかけられている可能性が高い。

やはり満月の光でそれが解けるようになっているのだろうか。それは、どんな仕組みなのだろうか。ルディリアが仮説を話せばイクリスも頷く。どうやらクラウストも同じ事を考えていたらしい。



ルディリアとイクリスがエルムポース島へ付く頃、ちょうど日が落ちた。天候に恵まれ、満月はキラキラと輝きを見せている。


そろそろ儀式も終わるはずだと、足早にクラウストの元へ行く。目的地に着けば、クラウストが何やら難しい顔で騎士達に指示を飛ばしていた。


「どうした?」


イクリスがクラウストに尋ねれば、クラウストはとある場所を指さした。しかし、目を向けても何もない。不思議に思ったイクリスが首を傾げてルディリアを見る。


彼らには感じられなくとも、ルディリアは確かにそこに大きな魔力を感じることが出来ていた。船を下り、エルムポース島に足を踏み入れた時から、胸がざわつく。苦しいような、悲しいような感情が沸き上がり、戸惑うばかりだった。しかし、だからこそ確信した。祭壇はこの島にあるのだと。


「そこに、確かにあります。」


ルディリアが断言すると、クラウストは「やはりそうか」と落ち着いた様子を見せる。しかし、その表情は未だ硬く、余裕があるようには見えない。


「何も見えないが?」


イクリスは足を進めて、辺りを見回すが何も感じることも出来ないらしい。いや、彼だけでなく周りにいる隊員たちも、ユーグやエーバハルト達も感じることが出来ない様だ。


「確かに、その場所から苦しみや悲しみ、それから怒りのような気配…というか波動のようなものが感じられます。」


ルディリアの言葉に、クラウストが顎に手をあて考える。そして、身体に魔力を纏わせた。それは、いつもルディリアが発動し続けている魔法――身体強化魔法である。


騎士であれば、大体の者がその魔法が扱えるように特訓する。しかし、魔力燃費も高く、集中力を必要とするこの魔法を長時間使う者も、敵が目の前に居ない状況で使用する者も少ない。ルディリア以外、この場にいる誰もがそれを使っていなかった。


クラウストは、ルディリアが常時身体強化魔法を会得していると知っていたから、試してみたのだろう。そして、それが正解だった。


「ふむ、確かに微かだが気配があるな。」


クラウストの言葉に、イクリスもまた身体強化魔法を発動させる。驚くほど微かに感じるこの気配を、ルディリアは確かに感じ取り、その感情までをも読んで見せた。感心しつつ、イクリスはそれを発動させたまま辺りを歩いて回る。


その間ルディリアは、その感情に呑まれないように必死に抵抗をしていた。その感情はどんどんルディリアの中に流れ込んでくる。憎悪の感情よりも、悲しみの感情が強い。それを断ち切ることが出来ず、魔法を解除するという方法が取れなかった。


あまりにも嘆き悲しむ様な気配に、ルディリアの瞳から一筋の雫が流れ落ちる。


「苦しいのね。辛くて、悲しいのね…。」


どうしてそんなに悲しんでいるのか、どうしてそんなに苦しんでいるのか。ルディリアには分からない。それでも、今ベフィモスを解放するわけにはいかない。


「ごめんなさい。何も出来なくて、ごめんなさい。」


ポロポロと流れる雫を、甲で拭うと胸の前で祈るように手を組んだ。それを間近で見ていたクラウストは、複雑そうに表情を歪める。なんと声をかけようかと迷っている内に、目の前の地面が輝きだし、目視出来なかった祭壇が薄らと現われる。

空を見上げれば、もう満月は頭上に大きく輝きを見せていた。



ルディリアが瞑っていた瞳を開ければ、そこには大きな祭壇と、大きな岩が祀られていた。


大きな岩には魔法陣が刻まれており、そこに無数のしめ縄が岩に巻き付いている。そこから先程の気配が濃く感じられた。


この中にいる。


ルディリアは確信した。今のうちにベフィモスを封印する為の魔法陣を半分描く。そうでなければ、きっと間に合わないだろう。そう思って岩の近くまで足を進めれば、何処からか微かに声が聞こえたような気がした。


“ま…い”

“わ…な…を”

“だれか…こ…く…”


思わず岩に手を伸ばせば、そこから暖かさを感じた。そして今度はより鮮明にその声が聞こえてくれる。


“すまない…”

“どうか、許してくれ”


これが、ベフィモスの思いなのだと知り、苦しくなった。どうか、心だけでも救われて欲しい。今は何も出来ないけど、言葉を交わすことが出来るならば、こちらの声が聞こえるならば、どうか少しでも心安らかに眠って欲しい。そう思って声をかける。


「誰も恨んでなんかない。大丈夫。…大丈夫だから、どうかそんなに自分を責めないで。」


ぽたりぽたりと涙をこぼしながら、その岩をぎゅっと抱きしめた。そうすると、さらに悲しみや自責の念が直接ルディリアに流れ込み、悲しくなった。


“私は、罪を犯した”


「何かがあったのでしょう?大丈夫。分かっているわ。」


資料には「ある夜突然」と書かれていた。きっと当時の人達も皆分かっていた。それがベフィモスの意志でないことも、この感情に触れた今、理解出来る。


“私は、人を守れなかった”


「私達は生きているわ。あの日、亡くなった人はいなかった。だから、そんなに自分を責めないで。」


“そう…か。よかった…。よかった…!”


泣いているようにも聞こえるその声に、心を痛めながらもルディリアは岩から身を離した。今はこうして意思疎通が取れていても、いつ邪に意識を奪われるか分からない。ベフィモスが悪いわけではないのだと、ルディリアは確信しながらも、ベフィモスを封印する為の魔法陣を描いていく。


これが、今の私にできる精一杯。

誰も傷つけさせない。

誰も、これ以上苦しませたくない。


涙を流しながら半分程、魔法陣を書き切ったルディリアは、今度は岩へ向けて強力な結界の魔法を構築していく。何重にも結界を展開できるように構築して、その強度を上げていく。時間をかけてゆっくりと構築すれば、光が岩を覆った。


「準備出来ました。」


静かに涙を流しながらも感情を押しとどめ、淡々と言い切る。イクリスは戸惑いながらクラウストを横目で見ると、彼もまた眉間に皺を寄せていた。

クラウストがルディリアの側まで行き、結界魔法の維持の仕方を再確認する。それにルディリアも淡々と答える。そんな二人を一歩後ろから眺めていたイクリスは思わず拳を握りしめた。


ルディリアは時間になるまで岩に手をあて、ベフィモスに語りかける。


「大丈夫。きっと助けるわ。」


“私は、構わない。人を、人を助けてくれ。”


「大丈夫よ。今はこんな形でしか救えないけど。きっと貴方も助ける。」


自分を犠牲にして、人を助けようとするこのベフィモスは本当に魔物なのか。こんなにも人を想うベフィモスが何故厄災なんて呼ばれるようになってしまったのか。ルディリアは切ない気持ちでいっぱいになった。


“其方の様な人間を、私はよく知っている。其方の様な人間は邪に好かれやすい。”


「心配してくれて、ありがとう」


今度はルディリアまでをも心配するベフィモスに、ルディリアは心が潰れてしまうような感覚を持った。苦しくて、悲しくて、切なくて。どうにかベフィモスを助けたい。そう想わざるを得ない。


“逃げろ…時間だ。”


苦しそうな声色から、とうとう邪の暴走が始まるのだと、ルディリアは一歩、二歩下がり手を翳す。掌から、構築した魔法陣に魔力を流し込む。


「準備して下さい!」


大きな声で告げれば、両隣にクラウストとイクリスが立った。それを確認して、ルディリアは結界魔法を発動させる。


「大地の女神デメテルーよ、太陽の神、アポーロンと、月の女神、アルテイミスよ、この地にまつわる神々よ、どうか彼の望む平穏の為、我らの平穏の為、この地を守り給え、神護しんご。」



ルディリアが願えば、その魔法陣が光り輝き、天から光が降り注ぐ。キラキラとした輝きはどんどん増していき、ついには岩を丸々覆う程に集まった。その光は優しく、温かく、神秘ささえ感じさせる。


この光の中ならば、もしかしたらベフィモスも心穏やかにいられるかもしれないと思うと、また強く念じた。


暫くそうしていると、光が岩に定着し魔法陣も輝きを安定させた。そうして瞳を開けば、岩からベフィモス本来の姿に変わりはじめる。身体を押さえ込むように、両の手で身を抱きしめ苦しそうに呻くベフィモスは、次第に凶暴さを見せ始める。それが強くなる前にと、クラウストとイクリスも手を翳して魔力を注ぎはじめた。


「イクリス隊長、アルンベルン騎士団長、もう少し魔力量を増やして下さい。そして、彼の周りを覆うように均一に操作して下さい。」


ルディリアは二人の魔力量を見比べながら、量の調節を行うと安定してきた所で声をかけた。


「合図後、離れます。少し負荷が増すかと思いますが、お願いします。」


「分かった。」


「問題ない。」


二人が頷いたのを確認すると、ルディリアは「三、二、一」と数えた次の瞬間、完全に二人に魔法を移行させた。ルディリアが手を引けば、二人にベフィモスの魔力が多くのしかかり、ベフィモスが藻掻く度に魔力が揺れた。安定させる為にと後ろからルディリアが声をかける。


「イクリス隊長、もう少し魔力量を増やして下さい。アルンベルン騎士団長は、出来るだけイクリス隊長の魔力の波形に合うように調節して下さい。」


細かな指示に二人は無言で対応していく。そして息が合ってくれば、先程よりも維持が楽になる。どんどんコツを掴みはじめた二人は少しだけ余裕が戻り、ルディリアも安堵した。

急にやれと言われて出来るものではない。それでも、この二人は難なく熟して見せた。その対応能力の高さは、流石としか言い様がない。



ルディリアは、結界の魔法から目を離して、書きかけの封印の魔法陣に目を向けた。時間の猶予がかなりあったため、半分より少し多く書き上げていたそれに、最後の調整を加えていく。安定式と保護式を組み込んで顔を上げる。


ユーグとエーバハルトは既に準備が整っているらしい。表情は硬くとも、その瞳の奥には力強さを感じた。しかし、肩が張りすぎている事に不安を感じたルディリアが声をかける。


「大丈夫です。ゆっくり、慎重にやっていきましょう。隊長と団長がいくらでも時間を稼いでくれます。」


小さく口角を上げてみせれば、ユーグとエーバハルトはお互いの顔を見合い、苦笑した。まるで鏡のように思えたのかもしれない。二人が大きく深呼吸を数回繰り返すと、大分力が抜けた様だ。


「ありがとうございます。」


そういう二人に、ルディリアは首を振る。感謝したいのはルディリアのほうだった。


一人では決して成すことの出来ない事を、二人に力を借りて強行突破しようとしているのだ。本来ならもっと多く魔法使いを呼んで執り行うべきものを、たった三人でやり遂げようというのだから無茶と言われても仕方無い。

それでも、ルディリアは彼らとならば出来ると確信していた。いや、彼らであれば信じる事ができる。そう思ったからこそ、いたずらに人数を増やすのではなく、少数精鋭で挑むことにしたのだ。



二人がルディリアの両脇に座ると、手を翳す。目の前にはベフィモスの姿と、それを抑えるクラウストとイクリスの姿。ルディリアの合図を待ちながら大きく呼吸を繰り返す。


「邪を封印すべく神々の力を今ここへ。対価は我らが力。力を注ぎ、意を示さん。我らが意に答え給え。地を覆う邪は何処から、邪の源を絶つ為の力は何処から。天より借りしその力、邪を封ずる為に扱わん。天地界断てんちかいだん。」



長い詠唱後、光が天から降り注ぐ。その光は先程の結界よりも眩く、膨大である。まるで光の滝が降り注いでいるかの様な光景に、ユーグとエーバハルトがたじろぐ。それでも、ルディリアは集中を切らすことなく魔力を注ぎ続ける。出来るだけ安定してから二人に合図を出したくて、必死に魔力を注いでいく。


どのくらいそうしていたか、注げば注ぐほど、その魔法陣は応える様に光を増していく。密度が濃くなるに連れ、ルディリアの魔力は尽きそうになる。片手を首飾りの魔法石へ伸ばすと、補給しながら魔力を流す。そうして漸く安定しはじめた所で声をかけた。


「ユーグさん、エーバハルトさん、お願いします。」


ルディリアの表情がどんどん険しくなる様子を、拳を握りしめながら見ていた二人は、漸くかかった合図にすぐさま魔力を注ぎはじめる。注いでみれば、どんどん吸収される、その速度に驚いた。今は三人体制で行っているというのに、それでも引っ張られる。一人で行っていたルディリアの魔力量はどうなっているのか。引きずられまいと、立て直す精神力の高さに今更ながら感心する。


「ユーグさん、もっと流して下さい。エーバハルトさんは、もう少し耐えて下さい。落ち着いて、波形を合わせて。」


流すというより、もはや吸われているに近い状態で、それをコントロールしろと言い出すルディリアに、二人は内心苦笑する。それでも、ルディリアの言う通りゆっくりと調節を試みれば、不思議なことに少しだけ楽になる。少しだけ余裕を取り戻せた二人が、いつの間にか止めていた息を大きく吸う。


「そうです。ゆっくりと呼吸をして下さい。そうすれば安定してきます。」


ルディリアの言葉に二人が小さく頷くと、どんどん魔力の流れが安定してくる。最初はばらばらだった波形も次第に合うようになり、魔法陣が輝きを取り戻す。どうやら、発動に関しては問題なさそうだ。あとは、ルディリアがこの魔法を上手く操作できるかが問題である。



魔法を発動させた後、式を展開させて、操作しなくてはいけない。彼らは発動させる為の魔力を注ぐので精一杯の状態だ。それをまとめ上げ、展開させるのは容易なことではない。ルディリアの魔法石も既に半分使い切っている。大きく深呼吸を数回繰り返したあと、ルディリアが口を開く。


「展開を開始します。そのまま維持して下さい。」


三人で注ぎ込んだ魔力を練り上げて、形にしていく。魔法陣の式に合うように、封印するベフィモスの体格に合うようにゆっくりと形作り、それを慎重にベフィモスの元へ近づける。

張り詰めた緊張感の中、ルディリアはただひたすらに封印魔法の事だけを考えて、操作する。



どのくらいそうしていたのか。

ぽたぽたと額から流れる汗を邪魔に思いながらも、ルディリアは繊細な操作を行っていた。自分一人分の操作だって覚束無い者は多くいる。それを三人分、いや、ルディリアの魔法石が尽きかけているところ見れば、数十人分の魔力を操作している。

精神力と集中力を研ぎ澄ませて、漸くベフィモスの周りを覆うことが出来た。


あとは、縛り上げるだけ。


もう一踏ん張り、と言うところでクラウストとイクリスの様子が一変した。少し前から、辛そうに顔を歪めていた二人だったが、この土壇場へ来てベフィモスが暴れはじめたのだ。


その力を押さえ込む力がもう殆ど残っていなかった二人は、魔力で押されじりじりと下がる。それでもなんとか押さえ込もうと食らいつけば、砂利で足が滑った。

舌打ちすることも出来ない程切羽詰まった状況の上司の姿を見て、ユーグとエーバハルトの魔力が乱れ、その負荷が直接ルディリアに降りかかる。


ぐっと声を堪えて、全力で押さえ込む。操作を後回しにして、魔法を安定させる為に力を使う。

ユーグとエーバハルトも慌てて体勢を立て直そうとするが、一度揺らいだ波形は中々戻らない。心の中で何度も「焦るな、慌てるな」と復唱するも、思えば思うほど波形が乱れる。


これでは不味いと思った、ルディリアが叫ぶように声をかけた。


「一度、魔力を切って!」


ルディリアの言葉に同様して、意識せずとも魔力が切れた。そしてその負荷を、堪えるルディリアの姿を見て慌てるが、そうしてまた魔力を注いでも二の舞になるだけだと、一度大きく深呼吸する。誰に言われるでもなく、二人は同じような行動を行うと顔を見合わせた。


(年上の私達がこれでどうする。彼女にここまで負担をかけてどうする。)


言葉にせずとも表情でお互いを鼓舞し、再度魔力を流す。ゆっくりと、徐々に流す量を増やせば安定した形を保たせることが出来た。ルディリアにかかっていた負荷も減り、余裕が出来た隙に大きく息を吸い込んだ。


今は誰かに言葉をかける余裕もない。この魔法が霧散してしまわぬように、堪えなければならない。しかし、いくらルディリアの保有魔力量が多いとはいえ、限界は来る。


上手く力が出ないことに戸惑ったルディリアが首飾りの魔法石を見れば、そこに輝きはなく色あせた石に戻っていた。


不味い、と顔を上げた視界にクラウストが映り、思い出したように胸ポケットを漁る。青く透明な輝きに満ちた魔法石を見て、小さく目を細めればぎゅっと握り込んだ。


自分の魔法石と違い、他人の魔力を込めた石には相性がある。それでも構わずそこから魔力を吸収すれば、驚くほど身体に馴染んだ。小さく口角を引き上げると、ルディリアは封印魔法を絞り上げる。


「天地界断、発動!」


荒げた声に、光が呼応するかのようにベフィモスの全体を覆う。ぎゅっと小さな光に圧縮されると、ベフィモスの身体は大きな岩に変わっていた。


額から汗を流し、肩で息をしながら、その光景を見つめるとルディリアの身体が力なく地面に倒れた。辺りは平穏ではなく、歓声に包まれ、その声に安堵したルディリアは意識を手放す。



夢の中、ベフィモスがルディリアに何かを伝えようとしていた。

しかし、その声はルディリアには届かず、口が動いている様子をただ眺める。そこに悲しみの感情はあれど、苦しみは感じなかった。

己を許せない思いはきっとまだ残っているだろう。それでも、少しはベフィモスの心を救うことが出来たのかもしれないと思うと、嬉しかった。



そして、必ずベフィモスを助けると心に強く誓う。


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