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大魔法使いを目指してHighになる  作者: ぽこん
その娘、特務隊長補佐になる
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その娘、真実


ルディリアは、儀式後の作戦をクラウスト達と共に立てた後、ユーグとエーバハルトには作戦開始まで休むように言いつける。少しでも心と体を休め、万全の体勢で挑んでもらわなければならない。


イクリスとクラウストは、リール村の人達の元へ行くらしい。それを聞いてルディリアも小さく手を上げた。自分もきっと役に立つ。そう思って志願したのだが、イクリスには渋い顔をされた。


「君が要だと分かっているのか?」


そう言われて、ルディリアは言葉が詰まる。それは誰よりもルディリアがよく分かっていたからこそ、眉を下げてクラウストを見上げた。


「…それが終われば、休むこと。いいな?」


クラウストの言葉に、イクリスが眉を寄せる。本当に連れて行くつもりなのかと、不満げだ。しかし、クラウストはルディリアだけをじっと見つめている。返事を寄越せということだろう。これだけ譲歩しているのだから、その位は従えと。


「勿論です。リール村の人と話した後は、休みます。」


「ならばいい。」とクラウストはテントを出て行く。それを見たイクリスはため息をつくと「無理するなよ」と指差して、クラウストの後を追った。

この場を離れる為の引き継ぎや、確認などを行うのだろう。彼らもまた、ルディリア以上に忙しいはずだ。


小さく頷いて見送ると、ほっと胸をなで下ろす。本当は断れるかもしれないと、内心びくびくしていた。しかし、やはり彼はルディリアの気持ちを優先してくれる。それが何よりも嬉しかった。それだけ頼りにされているのだと、信じて貰えているのだと思うと、やる気がでる。


「頑張らなきゃ。」


小さく零すと、ローベルが困った様に眉を下げた。


「頑張りすぎちゃダメだよ?」


「ルディリア様は、既に頑張りすぎです。」


ユーグの言葉に、ローベル以外の全員が頷く。彼らにも、かなり心配をかけているらしい。申し訳無く思いながらも、ルディリアは今自分に出来る事を全てやっておきたかった。後悔が残らないように。


「そんな事はないと思いますが、ご心配ありがとうございます。本当に、話したら休みますから。」


「ルディリアちゃんがそこまで言うってことは、きっと何か大切なことがあるんだろう?」


穏やかに笑むローベルに、ルディリアは頷いた。

確証はない。それでも、幾つか気になっていることがある。もしかしたら、その情報が必要になるかもしれないし、無駄な時間を過ごす事になるかもしれない。それでも、やらないよりは、絶対にやるべきだと確信していた。


「はい。出来る事はやっておかないといけません。」


「そう。なら、頑張って。」


微笑むローベルに、やはり兄の面影を感じた。その態度と、言葉に、しばらく会っていなかった長男の顔を思い浮かべる。あの兄に、こんな穏やかさはない。それでも、どこか雰囲気が似ているように感じて、ルディリアはふっと頬が緩む。しかし、すぐに表情を引き締めなおすと、頭を下げた。


「ありがとうございます。」


ポンポンと撫でられる頭に、小さな違和感を覚えながらも、ルディリアは彼らの後を追った。船まで行くと、既に準備は整っているようだった。早く終わらせて、ルディリアの休む時間を少しでも長く取ろうとの配慮だろう。クラウストの有能さと優しさに、目を細める。


「行くぞ。」


かけられた声に頷くと、ルディリアは彼に願い事をする。


「あの、もし出来れば…でいいのですが。」


もじもじと歯切れ悪く話すルディリアに、クラウストは首を傾げて「なんだ?」と尋ねる。ルディリアはぎゅっと両の拳を握りしめると、彼を見上げた。青く透明なその瞳の奥に暖かさがあり、少しだけ勇気が出せた。


「アルンベルン騎士団の、魔法石を、その…」


いただけませんか?そう言う前に、彼は「あぁ」とつぶやくと、騎士服の内側のポケットに手を突っ込む。言葉が続かず、どうしようかと思っていると、ポケットから取り出した小ぶりの魔法石を差し出された。彼の瞳と同じ色をした魔法石が、彼の掌の上で輝いている。


「ほら、これだろ?」


ニッと口角を釣り上げて、楽しげな表情を見せる彼に、つい先日の事を思い出した。抱きしめられた時の暖かさと、彼の香り。耳元のすぐ近くで聞いた、低くて落ち着いた声色。


じわじわと頬が熱くなり、俯きながらもルディリアは欲望に忠実だった。無意識に彼の魔法石に手を伸ばす。すると、持ち上げる前に手ごと包まれた。びくりと小さく肩を跳ね上げると、瞳が揺れた。


「不安か?」


優しげな声色に、顔を上げるとクラウストは穏やかな表情を見せる。彼にはどうも隠し事が出来ないらしい。問題ないと言いはしたが、本当は怖くて仕方ない。何人もの命を背負い、初めて見た古代魔法を発動させなければならない。本当に魔法陣の式を展開させられるのか。

高難易度の魔法を成功させなければならない圧力。貴族院では大人達に守られていた。その前は家族に守られていた。こんなに責任重大な役割を与えられたのは、あの討伐以来である。重くないわけがない。


「…少し。」


眉を下げ、視線を逸らす。本当は少しではない。でも、それを知られたくなくて、小さく足掻いた。ふっと漏れた声に眉を寄せて、視線を戻す。クラウストは口角を上げると、ルディリアの頭をもう一方の手でかき混ぜた。


「君なら出来る。ダメでも私がいる。だから問題ない。」


そう言い切るクラウストは、真っ直ぐにルディリアを見つめて、その青い瞳を細める。失敗してもいいと彼は言う。それごと彼が背負うと。それでも、彼はルディリアを信じて任せてくれた。思えば、ここへ来てから彼に否定された事なんて一度もなかった。いや、最初から彼は真っ直ぐルディリアの事を信じてくれた。


その言葉が嘘で無いことが分かる。その言葉の暖かさに、ルディリアの闘志に火がついた。


「はい。必ずやり遂げます。」


強く意志を持った瞳で彼を真っ直ぐ見上げれば、クラウストは口元に弧を描いて、穏やかに笑む。いつの間にか見慣れたその表情に、ルディリアは頬が緩んだ。


「それでいい。」


頷いた彼の後ろから騎士の声がかかる。どうやらリール村の者達が待つ、ディース島についたらしい。クラウストから受け取った魔法石をぎゅっと握りしめると、彼と共に船を下りた。


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